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北都市編 前編
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しおりを挟む騎士たちが苛烈極まる戦闘を繰り広げている中。
キャンヴェルがゆっくりと命の木の下から出て来た。
うふふ、とほほ笑みながらパチン、と指を鳴らした直後、スカルが一斉に消滅した。
「何……?」
みな戸惑いを浮かべるが。
「今だ! かかれ!」
グリゼルダの号令にみなが一斉にキャンヴェルへ向かってゆく。
けれどキャンヴェルは優雅に立ってほほ笑んでいるだけ。
グリゼルダが大剣で薙ぎ払おうとした瞬間。
キャンヴェルのぽってりとした唇が動いた。
するとグリゼルダの体は力が抜けたかのように地面に倒れこんだ。まるで操り人形の糸が切れたかのようで、倒れたグリゼルダは起き上がってこない。
そして、後を追うように次々とキャンヴェルへ向かっていった騎士たちが倒れてゆくではないか。
「……これは一体」
「……近づくことで何かあるのかも」
冷静にコーネリアが呟く。
「少し距離を取るべきだな」とリオが頷く。
近くで倒れていた北都市部の騎士をリリナは観察する。体に深い傷はない。どうやら意識を失っているようだ。
「意識がないみたい」
「もしかして、近づいたら意識を失うのかもしれないっすね」
「……なるほど。向こうからこちらへ近いてくる気配はない…。遠距離で狙ってみるか…」
「わかったわ」
リオの言葉に、リリナが距離を取りつつ走り出す。銃を構えて、一発。木々に隠れて二発。
けれど、なぜかキャンヴェルには当たらない。
不思議に思ったリリナは様子を伺うように木々の間から覗く。
自身へ近づこうとしない四人に視線を這わせたキャンヴェルが、にんまりとほほ笑んだ、その瞬間。
「あ……」
ぐらり、と皆の視界が暗くなった。
濁流のように押し寄せて、自身の意識を引っ張ってゆく。
これは……。
知っている。
そう、これは抗えない睡魔だ。
どうして、こんな時に。
体を動かそうとしても誰も動けなかった。
意識がどんどん現実から引き離されて。
みな、どさり、とその場に倒れ込んだ。
✯✯✯
キャンヴェルは倒れた騎士たちを眺めて、うふふ、とほほ笑む。
「これで静かになったわ」
騎士たちの光の力もしばらくは抑えられる。
キャンヴェルはリリナの方へ歩みよった。
「この色の髪の毛で服を編んだら、とっても素敵よね」
さらり、と触れるが。
キャンヴェルの手がじんわり痛んだ。
「あら痛い。あたくしの美しい手が。これでは駄目だわ……早いとこスカルにしなきゃ」
でも命の木に相当な闇の力を使ってしまったため、暫くはスカルにすることができない。
まあいいわ。
少しだけ、眺めてましょう。
キャンヴェルはにんまりと笑う。
「うふふふ。さあ、あたくしを楽しませて頂戴」
もう。あなたたちは逃げられない。
甘い、甘い、目覚められない夢の果てへ。
堕ちてしまったものね。
一体、どんな夢を見るのかしらね。
「永遠におやすみなさいな」
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