77 / 201
北都市編 前編
11(ウィルソン視点)
しおりを挟む「いくぜ? 思いっきり暴れさせてくれよ……?」
レギオーラは不敵に笑い、虚空から大剣を生みだす――と同時に地を蹴った。
「退屈凌ぎにお相手して差し上げてよ?」
キャンヴェルも、うふふ、と深い笑みを浮かべて鞭を振るう。放たれた鞭はレギオーラの体を捉えようと、生き物のごとくうねった。
けれどレギオーラは数ミリ単位で体を翻して避ける。避けても駆けるスピードは落ちなかった。
ぐんぐんキャンヴェルに接近してゆく。
切りつけるのではなく、手前でレギオーラは地面を抉りながら斬り上げた。
ゴウ、と刀身から生み出された衝撃波が奔る。
殺傷力の高い攻撃はキャンヴェルを狙うが、キャンヴェルは表情を変えずに鞭で衝撃波を強打した。
スパアアン、と勢いよく衝撃波が弾け飛び、攻撃は相殺。キャンヴェルの髪の毛が揺れる。
「残念ねえ」
「余裕だな」
にやりと意味深に笑ったレギオーラは手をす、と上から下へ下す。直後、弾けた衝撃波が水の矢に変わってキャンヴェルへと降り注いだ。
「こんな攻撃、あたくしをナメないでくれるかしら?」
ぶん、と振るった鞭が幾度となく降り注ぐ矢を猛スピードで弾き落とす。
水しぶきが割れた鏡のように、キャンヴェルの美しい姿を映しては消えた。
けれど頭上の矢に気を取られていたキャンヴェルは、懐へ接近していたレギオーラに気づくのが遅れ。
「死ねよ」
「しまっ」
鋭い一閃がキャンヴェルへ打ち込まれた。
しかし、がああん、とレギオーラの手に強い衝撃がきた。
切れ味にしては硬いな、とレギオーラが刃先を見れば、キャンヴェルを守るように何か見えないものがレギオーラの剣を阻んでいるではないか。
「なんだこれ」
その隙をついて、キャンヴェルは後方へ跳躍し、レギオーラから距離を取った。
「……本当にうざい」
命の木を闇染めしていたヴォルクセンが、いつの間にかこちらへ手の平を向けている。
すう、と横へスライドさせると、カン、と剣が弾かれた。
レギオーラが前へ進もうと思っても、何か見えない壁があるようで、前へは進めない。
「結界か……? いいぜ」
レギオーラは後方へステップ、剣を構え足に爆発的な力を入れて踏み込んだ。
めこ、と地面が抉れて、レギオーラが飛翔した。すると剣は真っ直ぐな軌跡を描いて結界へ激突。
衝撃を受けた結界はピシ、とひび割れたかと思えば、瞬く間に爆砕した。
「……ちっ」
ヴォルクセンは命の木を取り囲むように何層も結界を張る。
その中へキャンヴェルと共に身を隠し、さらにレギオーラを確保するように四方を結界で閉じ込めた。
「……大きな結界よりも、小さい結界の方が壊れにくいから……お前はそこから出られない」
「ふーん」
レギオーラはそっと手を伸ばしてみた。確かに壁がある。硬そうだ。この結界の先にも、もしかしたら結界を作られているかもしれない。視線の先には何もないけれど。
「面倒くせえな……」
結界を壊して前へ進むということに楽しみを感じず、その行動に飽きたレギオーラは首を鳴らす。
「……チマチマすんのは、もうやめだ」
レギオーラはすう、と息を吸った。
「潰す」
するとグオオオオ、と音を鳴らしてレギオーラの周りを激流が包み込む。水量はどんどん増えて、レギオーラを捕らえていた結界が膨張した。
「俺の水圧に耐えられるワケ、ねーだろ?」
にや、と笑った瞬間。
ドン、と結界が破裂した。
その風圧で倒れていた騎士たちが吹き飛ばされる。
水は留まることを知らないかのように、レギオーラの周りを増幅して吹き飛ばされた騎士たちを呑み込んだ。
ごぼごぼと溺れてゆく騎士など気にする素振りもなく、レギオーラはゆっくりと歩き始め、命の木を取り囲んでいる結界に近づいた。
結界を呑み込んだ激流が、それを押しつぶすように水圧をかけてゆく。
「こんなの、肩慣らしにもなんねえ……! もっと暴れさせてくれよ!」
心から震えるほどの戦闘がしたい。
汗水垂らし、命を削るような、究極の遊び。
誰か、俺にもっと刺激をくれ!!
レギオーラは遊び道具を乱暴に扱うように、自身の力を振りかざす。
ガン、と一気に結界に圧がかかった。ミシミシと結界が悲鳴を上げ始める。
その水圧に耐えられるかどうかはまるで我慢比べだ。
「……ちっ」
ヴォルクセンは命の木と結界に力を分散させて考える。
とんだ邪魔が入っているが、命の木の闇染めはもう少しで完了する。
どちらが早いかはわからない。もはや時間の問題だ。ならば、早々に命の木を闇に染めるべきか。
そうすれば邪魔者へはもっと強力な力で対抗できる。
そう思ったヴォルクセンが命の木へ少しだけ闇エネルギーを増やした直後。
バアアアアアアン、と限界を迎えた結界が爆裂してしまった。
「な……」
途端にキャンヴェルとヴォルクセンを水が呑み込む。
「ぐ……」
「く、くるし……」
命の木も巻き込まれ、ギシギシと悲鳴を上げた。
「死ね……!」
レギオーラが水圧に一層力を込めた瞬間。
全てを呑み込んでいた激流が四方へ弾けとんだ。
「!?」
キャンヴェルとヴォルクセンは地面に放り出されて、肩で息を繰り返す。彼らを守るようにして姿を見せたのは。
「私の部下は返してもらうよ」
冷たい視線をレギオーラに向けた、ノヴァだった。
強大な闇エネルギーを感じたレギオーラの肌がピリッと痺れる。
「三対一、上等だぜ!」
「邪魔だ」
ノヴァが手を払うような仕草をした直後、レギオーラの体に高エネルギーの波動弾が激突した。
水で防壁を築いたが、防ぎきれず爆砕。レギオーラはその衝撃で後方へ吹っ飛んだ。
もう終わった、とでも言うようにノヴァが翻す。
「闇染めはもういい。帰るぞ」
「ノヴァ様……! もう少しで完全に――」
「もういいと言っている。堕せなくても力をそげればそれでいい」
「は、はい……!」
命の木を一瞥し、視線を戻したノヴァは歩き出す。黒いもやに包まれてノヴァ、キャンヴェル、ヴォルクセンは姿を消した。
「待てよ、おい!」
態勢を立て直して地を蹴ったレギオーラは彼らに接近し剣を振るったが、もうそこには敵の姿は見当たらなかった。
0
あなたにおすすめの小説
娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る
ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。
異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。
一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。
娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。
そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。
異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。
娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。
そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。
3人と1匹の冒険が、今始まる。
※小説家になろうでも投稿しています
※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!
よろしくお願いします!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ
双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。
彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。
そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。
洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。
さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。
持ち前のサバイバル能力で見敵必殺!
赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。
そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。
人々との出会い。
そして貴族や平民との格差社会。
ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。
牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。
うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい!
そんな人のための物語。
5/6_18:00完結!
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ペットになった
ノーウェザー
ファンタジー
ペットになってしまった『クロ』。
言葉も常識も通用しない世界。
それでも、特に不便は感じない。
あの場所に戻るくらいなら、別にどんな場所でも良かったから。
「クロ」
笑いながらオレの名前を呼ぶこの人がいる限り、オレは・・・ーーーー・・・。
※視点コロコロ
※更新ノロノロ
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
異世界で大往生した私、現代日本に帰還して中学生からやり直す。~最強の補助魔法で、冴えないおっさんと最強美女を操って大金持ちになります~
タカノ
ファンタジー
異世界へ転移し、聖女として崇められ、愛する家族に囲まれて88歳で大往生した……はずだった。 目が覚めると、そこは現代日本。 孤児の中学2年生、小金沢ヒナ(14)に戻っていた。
時間は1秒も進んでおらず、待っていたのは明日のご飯にも困る極貧生活。 けれど、ヒナの中身は酸いも甘いも噛み分けたおばあちゃん(88歳)のまま!
「もう一度、あの豊かで安らかな老後(スローライフ)を手に入れてみせる!」
ヒナは決意する。異世界で極めた国宝級の【補助魔法】と【回復魔法】をフル活用して、現代社会で大金を稼ぐことを。 ただし、魔法は自分自身には使えないし、中学生が目立つと色々面倒くさい。 そこでヒナがビジネスパートナー(手駒)に選んだのは――
公園で絶望していた「リストラされた冴えないおっさん」と、 借金取りに追われる「ワケあり最強美女」!?
おっさんを裏から魔法で強化して『カリスマ社長』に仕立て上げ、 美女をフルバフで『人間兵器』に変えてトラブルを物理的に粉砕。 表向きはニコニコ笑う美少女中学生、裏では彼らを操るフィクサー。
「さあ善さん、リオちゃん。稼ぎますよ。すべては私の平穏な老後のために!」
精神年齢おばあちゃんの少女が、金と魔法と年の功で無双する、痛快マネー・コメディ開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる