光の騎士

ななこ

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北都市編 前編

11(ウィルソン視点)

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「いくぜ? 思いっきり暴れさせてくれよ……?」

 レギオーラは不敵に笑い、虚空から大剣を生みだす――と同時に地を蹴った。

「退屈凌ぎにお相手して差し上げてよ?」

 キャンヴェルも、うふふ、と深い笑みを浮かべて鞭を振るう。放たれた鞭はレギオーラの体を捉えようと、生き物のごとくうねった。

 けれどレギオーラは数ミリ単位で体を翻して避ける。避けても駆けるスピードは落ちなかった。

 ぐんぐんキャンヴェルに接近してゆく。

 切りつけるのではなく、手前でレギオーラは地面を抉りながら斬り上げた。

 ゴウ、と刀身から生み出された衝撃波が奔る。

 殺傷力の高い攻撃はキャンヴェルを狙うが、キャンヴェルは表情を変えずに鞭で衝撃波を強打した。

 スパアアン、と勢いよく衝撃波が弾け飛び、攻撃は相殺。キャンヴェルの髪の毛が揺れる。

「残念ねえ」

「余裕だな」

 にやりと意味深に笑ったレギオーラは手をす、と上から下へ下す。直後、弾けた衝撃波が水の矢に変わってキャンヴェルへと降り注いだ。

「こんな攻撃、あたくしをナメないでくれるかしら?」

 ぶん、と振るった鞭が幾度となく降り注ぐ矢を猛スピードで弾き落とす。

 水しぶきが割れた鏡のように、キャンヴェルの美しい姿を映しては消えた。

 けれど頭上の矢に気を取られていたキャンヴェルは、懐へ接近していたレギオーラに気づくのが遅れ。

「死ねよ」

「しまっ」

 鋭い一閃がキャンヴェルへ打ち込まれた。

 しかし、がああん、とレギオーラの手に強い衝撃がきた。

 切れ味にしては硬いな、とレギオーラが刃先を見れば、キャンヴェルを守るように何か見えないものがレギオーラの剣を阻んでいるではないか。

「なんだこれ」

 その隙をついて、キャンヴェルは後方へ跳躍し、レギオーラから距離を取った。

「……本当にうざい」

 命の木を闇染めしていたヴォルクセンが、いつの間にかこちらへ手の平を向けている。

 すう、と横へスライドさせると、カン、と剣が弾かれた。

 レギオーラが前へ進もうと思っても、何か見えない壁があるようで、前へは進めない。

「結界か……? いいぜ」

 レギオーラは後方へステップ、剣を構え足に爆発的な力を入れて踏み込んだ。

 めこ、と地面が抉れて、レギオーラが飛翔した。すると剣は真っ直ぐな軌跡を描いて結界へ激突。

 衝撃を受けた結界はピシ、とひび割れたかと思えば、瞬く間に爆砕した。

「……ちっ」

 ヴォルクセンは命の木を取り囲むように何層も結界を張る。

 その中へキャンヴェルと共に身を隠し、さらにレギオーラを確保するように四方を結界で閉じ込めた。

「……大きな結界よりも、小さい結界の方が壊れにくいから……お前はそこから出られない」

「ふーん」

 レギオーラはそっと手を伸ばしてみた。確かに壁がある。硬そうだ。この結界の先にも、もしかしたら結界を作られているかもしれない。視線の先には何もないけれど。

「面倒くせえな……」

 結界を壊して前へ進むということに楽しみを感じず、その行動に飽きたレギオーラは首を鳴らす。

「……チマチマすんのは、もうやめだ」

 レギオーラはすう、と息を吸った。

「潰す」

 するとグオオオオ、と音を鳴らしてレギオーラの周りを激流が包み込む。水量はどんどん増えて、レギオーラを捕らえていた結界が膨張した。

「俺の水圧に耐えられるワケ、ねーだろ?」

 にや、と笑った瞬間。

 ドン、と結界が破裂した。

 その風圧で倒れていた騎士たちが吹き飛ばされる。

 水は留まることを知らないかのように、レギオーラの周りを増幅して吹き飛ばされた騎士たちを呑み込んだ。

 ごぼごぼと溺れてゆく騎士など気にする素振りもなく、レギオーラはゆっくりと歩き始め、命の木を取り囲んでいる結界に近づいた。

 結界を呑み込んだ激流が、それを押しつぶすように水圧をかけてゆく。

「こんなの、肩慣らしにもなんねえ……! もっと暴れさせてくれよ!」

 心から震えるほどの戦闘がしたい。

 汗水垂らし、命を削るような、究極の遊び。

 誰か、俺にもっと刺激をくれ!!
 
 レギオーラは遊び道具を乱暴に扱うように、自身の力を振りかざす。

 ガン、と一気に結界に圧がかかった。ミシミシと結界が悲鳴を上げ始める。

 その水圧に耐えられるかどうかはまるで我慢比べだ。

「……ちっ」

 ヴォルクセンは命の木と結界に力を分散させて考える。

 とんだ邪魔が入っているが、命の木の闇染めはもう少しで完了する。

 どちらが早いかはわからない。もはや時間の問題だ。ならば、早々に命の木を闇に染めるべきか。

 そうすれば邪魔者へはもっと強力な力で対抗できる。

 そう思ったヴォルクセンが命の木へ少しだけ闇エネルギーを増やした直後。

 バアアアアアアン、と限界を迎えた結界が爆裂してしまった。

「な……」

 途端にキャンヴェルとヴォルクセンを水が呑み込む。

「ぐ……」

「く、くるし……」

 命の木も巻き込まれ、ギシギシと悲鳴を上げた。

「死ね……!」

 レギオーラが水圧に一層力を込めた瞬間。

 全てを呑み込んでいた激流が四方へ弾けとんだ。

「!?」

 キャンヴェルとヴォルクセンは地面に放り出されて、肩で息を繰り返す。彼らを守るようにして姿を見せたのは。

「私の部下は返してもらうよ」

 冷たい視線をレギオーラに向けた、ノヴァだった。

 強大な闇エネルギーを感じたレギオーラの肌がピリッと痺れる。

「三対一、上等だぜ!」

「邪魔だ」

 ノヴァが手を払うような仕草をした直後、レギオーラの体に高エネルギーの波動弾が激突した。

 水で防壁を築いたが、防ぎきれず爆砕。レギオーラはその衝撃で後方へ吹っ飛んだ。

 もう終わった、とでも言うようにノヴァが翻す。

「闇染めはもういい。帰るぞ」

「ノヴァ様……! もう少しで完全に――」

「もういいと言っている。堕せなくても力をそげればそれでいい」

「は、はい……!」

 命の木を一瞥し、視線を戻したノヴァは歩き出す。黒いもやに包まれてノヴァ、キャンヴェル、ヴォルクセンは姿を消した。

「待てよ、おい!」

 態勢を立て直して地を蹴ったレギオーラは彼らに接近し剣を振るったが、もうそこには敵の姿は見当たらなかった。
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