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王都編
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しおりを挟む「わたくしから逃げてどこに行っていたんですの?」
怒り眼のアンジェリカの前に、正座をさせられたサラは「すまない、ウィンテールのところにいた」と頭を掻く。
ウィンテールと聞いて、怒りが一気に冷めたのか、アンジェリカはしばし閉口した。
それからゆっくりと深いため息をつく。
「……まあ、わたくしも祈祷の時間だったので、あなたのいない間は少し退席させていただきましたけれど。……あなた、もしかしてウィンテール様に頼み込んで光脈を外界からむりやり開通させましたわね?」
「……なんでわかったんだ?」
「強大な光エネルギーを感じ取ったからですわ。ですからひょっとして、と思ったんですわ。……一生懸命教えましたけれど、わたくしでは全然だめってことでしたのね! わたくしが教えたことなんて必要なかったってことですわね!? 全く、あなたには腹が立ちますわ!」
ダンダンダン、とヒールの靴で床を鳴らした。
アンジェリカの怒りで建物が揺れそうだ。
すると怒っているのかと思いきや、急にはあ、と深いため息をもらす。
どうした。情緒不安定か?
じっとアンジェリカを窺えば、彼女の表情には酷く疲労の色が見えた。
そうか。
彼女は彼女なりに私に一生懸命教えてくれていた。
それはいつもしている祈祷や浄化とは違う事で、慣れていないのだろう。
それなのに私は逃げ出して、他の者に協力を仰いでしまった。
失礼なことをしてしまったのだと、少しばかり思ったが、でもそれで結果オーライだったのでサラは別段気にしなかった。
「すまない。だが、私は王族の事とか祈祷師のこととか詳しいことを知らなかった。光脈のことだけではない。この世界の成り立ち、祈祷や浄化に必要な予備知識は私にとってはとても重要なことだった。それは文句を言いながらだったが、あんたがしっかりと教えてくれたから理解できた。感謝している。ありがとう」
「な……!?」
お礼を言ったサラを見たアンジェリカが驚愕な表情を浮かべた。
アンジェリカもウィンテール同様サラはお礼が言える人間だと思っていなかったのかもしれない。
全く失礼な人だ。
私だってお礼ぐらい言う。
するとアンジェリカの顔がみるみる赤くなった。
「どうしたんだ? そんなにも怒っているのか?」
「怒ってないですわ! もう! なんでもないですのよ! 別に感謝されて嬉しいっていうわけではないですのよ!」
ふん、とそっぽを向くアンジェリカに、そばにいたアルグランドが「喜んでいるな」とぼそりと呟いた。
「そ、そんなことはもうどうでもいいですわ。わたくし、息抜きにあなたを連れて行こうと思っていた場所がありますけれど、行きますの?」
「それってどこだ?」
「秘密に決まっていますでしょ! 行きますの? 行きませんの?」
「……じゃあ行く」
サラの返答に嬉しそうににんまりと笑う。
「ではついてきてくれませんこと?」とアンジェリカが部屋の扉を開けた。
素直じゃないな、とそんなことを思いながら、サラはアンジェリカについて行った。
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