光の騎士

ななこ

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王都編

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「さて、と」

 これから、どうするかな。

 無線でウィルソンやリリナ、ザグジーの状態は聞いた。

 だいぶ回復しているようで、しかも彼らは王都へ向かっているということだった。

 とりあえずは彼らの到着を待つ間、王都で時間を潰そうか。

 受けた傷もゆっくりしていればそのうち治るだろう。

 所々に植えられている木々が、さわさわと風を受けて音を鳴らす。

 風が気持ちいいな、と不意に空を見上げれば、その木に止まっていた小鳥と目が合った。

「……」

 やけにじっと見つめてくる小鳥。

 サラはなぜか嫌な予感がして、視線を逸らした矢先。

「ねえねえ。騎士さん。そこで一人で何をしているの?」

 精霊だ。なぜ、こちらをじっと見つめてくる。

「……いや、何も」

「今、暇でしょ?」

「暇じゃない」

「嘘。顔に暇って書いてる。頼み事、聞いてくれる?」

「……いきなりだな」

「聞いてくれるでしょ?」

 パタパタとこちらへ飛んできて、頭の上をぐるぐる飛んでいる。

 ものすごく邪魔だ。

「ねえねえ。騎士さん。聞いてくれるでしょ? 聞いてくれるでしょ!? 聞いてくれるでしょ!!」

「わかった。わかったから、目の前をぐるぐる飛ぶな!」

 掴んでやろうかと思ったが、思いの外素早い。

「じゃあ、こっちに来て!」

「あ、おい!」

 バビュン、と飛んでいってしまった。

 というか飛んでいくの早いな! 面倒くさいが仕方ないか……。

 サラは精霊の飛んでいった方向へ向かった。

 連れてこられたのは、王都の外。

 まっすぐな木々が立ち並ぶ林の奥。

 誰にも気づかれないような場所に、色とりどりの花が咲き誇っていた。

 太陽の光を受けて、背筋を伸ばす花は美しい。

「ここのお花を持っていくの!」

「……どこに?」

「お友達のところ!」

「わかった。……でも花ぐらい自分で持っていけるだろ」

 ぼそっと文句を言ったら、高速で頭をつつかれてしまった。

「痛い! やめろ!」

「そんなこと言う人はハゲてしまえ!」

「はあ!? 一体、何なんだよ!」

「見て、この小さな体! 自分では一本でも運ぶのは大変なの!」

 威張るように胸を張る精霊に、「あーそうだな」と適当に合図を打っておいた。

「で? 花は何でもいいのか?」

「出来るだけいろんな種類を持っていきたいの! よろしく!」

「……わかった」

 サラは言われるがまま花を摘む。

 その横でアルグランドはすんすんと花の香りを嗅いでいた。

 いい匂いがするのだろうか。

 どことなく幸せそうに微笑んでいる。

 サラも摘んだ花の香りを嗅いでみた。

 甘い香りのする花、爽やかな香りのする花。

 確かにいい香りがする。

 リラックス効果があるのかわからないが、気持ちが落ち着くような気がする。

 アルグランド同様、サラも小さく微笑んでいた。

 そういえば、今までに心休まることがなかったかもしれない。

 必死に姉さんを探していた。

 時間が惜しいと言わんばかりに、ずっと立ち止まらずに歩き続けていた。

 そのことに意味があると思っていたし、立ち止まることに後ろめたさがあったのは嘘ではない。

 でも、焦ってもだめなのだ。

 周りが見えなくなってしまうし、姉さんを救うためのヒントが転がっているのに気がつかないかもしれない。

 サラはゆっくりと深呼吸した。

 姉さん。

 世界は、美しいよ。

 今見ている景色を、姉さんにも見せたい。

 姉さん、絶対に助けるから――。 

 花を摘み終えたサラは、精霊に案内されて再び王都へ戻ってきた。

「で? お友達とやらはどこにいるんだ?」

 暫く王都を歩き続けて、サラはぶっきらぼうに問う。

「この階段を上がった先だよ!」

 元気いっぱいにそう言って、精霊はかなり長い階段をぴゅーっと飛んでいってしまった。

「この階段を上がった先って……本気かよ」

 精霊は元気いっぱいに飛んでいったが、サラは階段を見てげんなりした。

 はるか遠くまで階段が続いている。

 階段の長さが果てしなさすぎて上がる気が失せたが、仕方ない。

 のんびり上るか……、とサラはゆっくりと歩き出す。

 暫く歩けば、かなり高いところまで上ってきた。ふと後ろを振り返れば、王都が見渡せた。

「きれいだな……」

 緻密な設計により建てられた建物たちが静かにそこに存在する。

 ひっそりと佇んでいるだけなのに、都市全体がまるで一つの生き物のように見える。

 中央の宮殿を守るような造りは、さらにそれを助長しているのかもしれない。

 風がびゅおっと上へ髪を舞いあげた。

 まるで早く上へ来いと言っているかのようだ。

 早く行かないとあの精霊にまた頭をつつかれるかもしれないので、サラは髪を抑え、引き続き歩き続けた。

 そしてやっと頂上に辿り着いた。

「……あの階段、しんどっ!」

 日頃鍛えているとはいえ、長くて急な階段には、さすがのサラでも根をあげそうだった。

 息を整え前を見れば、筒状の建物が目に入る。

 入り口には扉がなく、ぽっかりと穴が開いているだけだが、窓はいくつかついていた。

 他の建物からは離れているため、この建物だけがぽつんと立っている。

 だからだろうか、寂しそうな印象を受ける。

 入ってもいいのかどうか迷ったが、サラは突っ立っていても仕方ないので入ることに。

 そこに足を踏み入れた瞬間。

「ここは……」

 見た事のない花が一面に咲いていた。

 まるで硝子でできたかのような透明感のある花たち。

 筒状の建物は天井が無く、太陽の日差しが直接降り注いでいた。

 花が光を反射して、建物の中は光で溢れていた。

「ここは……もしかして王都の聖域か?」

 王都の聖域など来たことのなかったサラは、先ほど摘んだ花を握りしめたまま、その場で呆けていた。

 時が止まったようなその場所は、息を忘れさせるほど幻想的で壮麗だ。

 サラが突っ立っていれば、平らな場所で寝そべっていた人がむくりと起き上がった。

 誰かが来たことに気が付いたのだろう。

 太陽の光を浴びた顔はどこか物憂げで、恐ろしく整っていた。

 気怠く髪の毛を掻き上げたその人物がサラをじっと見つめたあと、薄く笑った。

「やあ。久しぶりだね」
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