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守護精編
12
しおりを挟む各都市から鉄道が走っているが、現在運用されていないため、地下都市へ行くための汽車はない。
そのため、サラは歩いて地下都市へ向うことに。
暗いトンネルを歩くと時間の感覚が麻痺してきて、早々に地上に出たかった。
けれどこれから行くところは地下だ。
日の光を浴びることなどできないだろう。
サラは諦めて歩き続け、途中野宿しながら、長いトンネルを抜けた。
トンネルを抜けると広い空洞が広がっていた。
どうやらそこが現在使用されていない地下都市――ノルバスクのターミナル駅だった。
そしてこの先が地下都市――ノルバスクだ。
サラはその先の黒ずんでいる奥地へ視線を向けた。
「あ、サラちゃーん!」
ウィルソンたちがサラに気づき、手を振って近づいてくる。
「もう、着いていたのか」
「いや、今着いたとこなんだ!」
「はぐれずに会えてよかったです」とリリナがほっとした表情を浮かべると、「ノルバスクは入り口が一つしかないから、別にその心配はしてなかったけど」とサラがぼそりと呟いた。
「サラさん、何言ってんすか!」
「何だ?」
「サラさんは勝手にノルバスクへ行くかもしれないっすからね! ここで集合できたことは本当によかったっすよ!」
「いや、勝手に行かないし」
「いや、サラちゃんなら行きかねないよね! だって、勝手に東都市に行っちゃうんだもん!」
ウィルソンはサラが一人で東都市に行ったことに対して相当根に持っているらしい。
「……すまない」
「……別にいいけど。というかそもそもどうして王都に連れて行かれたの? 変な事したの?」
「変な事はしてない」
「じゃあ何?」
「……まあ、ちょっとな」
「ふーん……。じゃあ、なんで東に勝手に行ったの?」
「まあ、それも色々あってな」
何も話そうとしないサラに、ウィルソンは「……ふーん」と口を尖らせるが、しつこく聞いてもサラは言わない。
だから聞いても無駄だとわかっているため、ウィルソンはそれ以上聞かなかった。
「ところで、それは何だ?」
「どれ?」
サラがリプニーチェの隣でふよふよ浮いている見慣れない鮫を指差して問う。
「おいお前、俺のこと指差してんじゃねえよ!」
「ああ、レギオーラのこと? 俺の居候かな」
「おい、てめえ! 俺は居候じゃねえよ!」
「ふーん、あっそ」
「おいおい! 自分で聞いておいて興味ねえのかよ! 俺はな、こいつの中にいるもう一体の精霊のレギオーラだ!って、聞けよ!!」
スタスタと歩き始めたサラに対してレギオーラがキレる。
「レギ、うるさいよ。もう少し静かにできないの? まあ、いいけど。って、サラちゃん待ってよ!」
「略すな! 俺はレギオーラだっつってんだろ!!って聞けよ!!」
頬を膨らませるレギオーラはウィルソンに完全に無視されており、雑な扱いを受けている。その不憫さにリプニーチェが「かわいそ」と鼻で笑う。
どこにもやり場のない怒りを持ったレギオーラは「もう知らねえからな!」と吐き捨てるように言って姿を消したのを見て、「子どもねえ」とリプニーチェは呟いた。
サラたちが奥へ伸びるトンネルへ進もうとしたとき、突然サラの無線が鳴った。
『サラ、今はもう地下都市か?』
「いや、これからだ。今地下都市のターミナル駅にいる」
『そうか。急いでサラだけ都市長会議へ来るように』
「は? なんでだ?」
わけがわからない、と眉間に眉を寄せていれば、急にフレデリックからエドモンドの声に切り替わった。
『別の任務だ』
威圧感のある声音に、サラはそういうことか、と小さくため息をつく。
「……わかった。これから向う」
「サラちゃん……。別の任務に行っちゃうんだね」
「ああ……」
びゅう、と奥地から風が吹き上げる。
その風に一抹の不安がよぎった。
地下都市にいるのは強大な力を持っているスカルではなかったか。
「あんたら気をつけろよ」
「大丈夫っすよ。すぐに片付けて他の任務へ行くっすから、俺らは大丈夫っす」
「そうですよ。一人で行かれるようですから、先輩こそ気をつけてください」
みなの引き締まった顔を見たサラは、心配はどうやら杞憂に終わりそうだと思った。
彼らならきっと大丈夫だろう。
サラは踵を返し、中央都市へ続いているトンネルへ向けて駆け出した。
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