光の騎士

ななこ

文字の大きさ
153 / 201
守護精編

10(都市長会議)

しおりを挟む
 
 会議室の中がしんと鎮まりかえる。

 この決断は非常に重たい決断であり、一歩間違えれば自分たちは闇に負けてしまう可能性は否めない。

 そうならないためにも、最善策は一体何なのかをみな神妙な顔つきで考える。

「その一時的に光の加護の薄まる期間はおおよそどれぐらいなんですか?」とフレデリックがウォルティオに問う。 

「一時的といっても最低でも三年はかかると申し上げる。長ければもう少しかかると存じ上げる。だが、各守護精の力の消耗後の回復速度は一定ではなく、そして守護精によっても違うため、少しづつの回復は見られるのではないかと存じ上げる。絶対三年で光の加護が回復するとは申し上げることは出来ないが、目安としてはそのぐらいかかると私は存じ上げる」

「三年か……」とそれぞれが呟く。

「……その三年を長いと取るか短いと取るかは各自の自由だが、闇の猛威はここ最近大いに振るわれ、一年も経たずしてこれほどまで甚大な被害をもたらしていることは動かしえない事実だ。その三年間という空白に我々が耐えうることが出来るのか、ということは不安要素ではある」

 ガレッドが小さくため息を吐いた。

「確かに光の加護が薄まってしまうのはかなり危険な状況であると考えるねえ、私は。だから、あまり賛成はしたくないねえ。光の加護が少なくなるということは、世界全体のスカルが圧倒的に増えると考えていいと思うんだよね。だから以前より聖域も闇に堕とされやすくなるってウォルティオさんが言っていたことに付け加えるんだけど、もしかしたら地下都市のように都市が闇堕ちする可能性も出てくるわけで。今はまだ光の加護があるから完全に闇堕ちして回復不能のところは地下都市しかないけれど、今後はそれが増えるかもしれないからねえ。だから、いくら精霊が進化して戦力になったとしても、土台となる光の加護が薄まってしまうのであれば、私はやめておいた方が得策なんじゃないかなぁと思うなあ」

 ジェイソンの意見に、モリスが「不安材料ばかりを語っていては前へは進みませんな」と咳払いする。

「まあ、研究も同じですな。何事も初めは不安はつきもので、自分たちの考えた理論上では成功するはずだったことも、失敗に終わることだって普通にありますからな。まあ、やったことのないことをするのですから、それは失敗して当たり前でしょう」

「精霊の進化が失敗してもいいっていうのかよ、あ? この世界が闇に堕ちる可能性だってあるんだぞ?」とバートルが睨み付ける。

「別に進化が失敗してもいいとは言ってはいないのですよ。そもそも失敗してもそれは致し方ない事だって言ってるんです。したことの無いことをさせて失敗するな、ということは無理な話ですからね。ですが、この世界には奇跡という言葉がふさわしい事だって起きますから。一体全体どうなって成功したのか理論上では説明できないことだってあるのです。確率的には低いですけれどね」

「だから何がいいてーんだよ」とバートルが突っ込む。

「人の話は最後まで聞くものです。まあ、ほぼほぼ我々の研究はたゆまぬ努力と、諦めない根性、そして数え切れない失敗の上に、絶妙なバランスで成功が成り立っております。つまり、成功とは本来そういうものであり、一度の失敗に怯えるのではなく、将来を見つめ、精霊たちが成功するまでこちらがサポートをすればよいわけです。研究とは何年も長い期間をかけて行うものですから、たかだか三年で怖気づいていてはその先の未来など見えないでしょうな」

 鼻で笑ったモリスはさらに続ける。

「まあ、その精霊の進化の失敗でどこかが闇堕ちして、スカルが蛆虫うじむしのように発生したとしても、絶望的かもしれませんが、そこから対策を練っても遅くは無いでしょう。我々の騎士の人数は確かに減ってはいるものの、実力のある騎士は上官含めまだまだ多いでしょうから。もちろん我々も擬似的な光増加装置を研究中でありますから、それが出来上がり次第実行に移そうと考えておりますので、精霊たちの負担軽減、そして世界の光の加護の増強も夢ではないでしょう」

 都市長会議で発言したことの無い研究内容に都市長たちは驚く。

 エクサイトもそうだったが、北の研究は想像を超える研究が多くされている。

 けれどそれはたくさんの知恵を出し合い考案されたものの中から選びぬかれたものであり、そして研究内容を現実にするために失敗を繰り返して出来上がったものなのだ。

 都市長たちは気づく。

 自分たちがどれだけ現状しか見ていないのか。

 確かに現状を見ることは重要だ。

 でもそれだけではいけないのだ。

 今だけを見るのではなく、長い目で見て考えなければこの精霊からの案を採用した場合、上手く軌道に乗せることなどできないだろう。

 それは『今』や『自分たち』だけを考えるのでなく『未来』も『精霊たち』も考えてゆく必要があるからだ。

「モリスよ、それはいつごろ完成する予定か?」とエドモンドが関心を示す。

「まだ未定ですな。研究施設の修復作業が終わってからの研究再開になりますからな。ですから、何かが起きる前、起きる前に対策するのはいいことですが、起きてから学んでも遅くはないでしょう。まだ未来のことなんて誰も想像もできませんし、失敗して死ぬわけでもないですから。まあ、死ぬ確率は高いかもしれませんけどね。ま、要はリスクなしでは成功は望めませんということです」

 挫折をものともしない北都市の研究所のメンバーの不屈の精神力は学ぶべきところだろう。

 そしてモリスはこの場にいる誰よりも策を多く考えている。

 それはいかにして闇と戦うかを常に考えていなければできないことだ。

 先を見通してのモリスの意見に都市長たちは感心した。

「珍しくいい意見を述べたな」とガレッドが驚く。

「たまにはいいでしょう」とモリスはニヒルに笑う。

 すると「私も北長の意見に賛同します」とダイナが発言する。

「闇は勢力を拡大してきてますから、保身ではおそらく何も解決しないでしょう。むしろこのままではこちらの戦力は闇に大幅に削られる可能性が高いです。ここは精霊の進化を信じ、賭けに出るべきだと私は思います。私たちは光と共にありますから、光が弱くなっているとき、私たちが支えるべきではないでしょうか」

 ダイナの意見に賛同するように、フレデリックが発言する。

「私も賛成です。今以上に苦しい戦いになるかもしれないことはみな承知の上です。でも私たち人間だけでは能力の限界がありますから、精霊たちの力を今まで以上に借りれることは、ありがたいことです。確かに三年は私の感覚では長いと思いますが、光の加護が薄まってしまうのであれば、もはや闇堕ちしないように守るしか選択肢はないでしょう。確かに騎士の全体的な人数が減っているとはいえ、より聖域を守るために全都市の隊を組みなおしたり配置を変えたりと、私たちにできることはまだ残されているはずです。私たちは精霊を進化させることはできないですから、人間と精霊はお互いできることをしていかないと、闇に対抗する手段は潰えてしまうと思います」

 それぞれが意見を言っている中で「俺は」とバートルが言葉を濁した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ペットになった

ノーウェザー
ファンタジー
ペットになってしまった『クロ』。 言葉も常識も通用しない世界。 それでも、特に不便は感じない。 あの場所に戻るくらいなら、別にどんな場所でも良かったから。 「クロ」 笑いながらオレの名前を呼ぶこの人がいる限り、オレは・・・ーーーー・・・。 ※視点コロコロ ※更新ノロノロ

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

処理中です...