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守護精編
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しおりを挟む「いいか、あんまり力を入れすぎんなよ。ひび割れるからな。俺は壁を掃除してるから。何かあったら言えよ」
「……」
サラは手に持ったぼろ雑巾でひたすら拭いてゆく。
がしかし、ただ拭くだけでは綺麗にならなかった。
表面の埃は取れるが、ピアノ全体のくすみは取れない。
サラは少し離れてピアノを観察する。
正直、このピアノはそんなにも汚れていない。
おそらくギルが丁寧に掃除をしているからだろう。
だから、汚れ自体が表面についているわけではないらしい。
透明のボディ全体がすすけているのだ。
もともとこんなにもすすけていたのか?
ギルはこちらを見ながら掃除をしているが、この状態は掃除の終わりではないらしい。
一体どう磨けばいいんだ? そもそもこのすすけているのは取れるのか? 本当に綺麗になるのか?
ピアノを注視していれば、一箇所だけ透明度の高い場所を発見した。
そこはアルグランドの尻尾があたっているところだ。
なぜかそこだけ綺麗に輝いている。
雑巾よりもアルの体で拭いたほうが綺麗になるんじゃないのか?
とか考えていれば、サラはふと気がついた。
そうか。
光の力を使って拭けってことか。
この聖域の浄化は済んでいるようだが、それ以上の光で満たされていないのだ。
闇堕ちされていない王都や東の聖域は光に満ち溢れていた。
その状態に戻すために、今聖域へ光の力を注ぐことが必要なのか。
だから、この聖域の要であろうグランドピアノに透明感がないのだ。
恐らく少しずつでも光の力で満たすために、ギルはこの聖域を丁寧に掃除していたのだ。
サラは自分自身に集中した。すると体全身が光に包まれる。
光を注ぐっていうことでいいのか?
浄化すれば注入もできるのではないのか?
そう思ったサラはとりあえずこのピアノを浄化してみようと試みる。
「闇に染まりし――ぐはっ!!」
いきなり背後から箒で頭を叩かれた。先ほどまで床を掃いていた箒で、だ。
「ちょい! 力入れすぎ!! そんなことしたらピアノが壊れるだろうが!! あんまり力入れすぎんなって言っただろ!!」
「力ってそっちの力かよ!」
「当たり前だろ! 単純な拭く力じゃねえよ! 普通わかるだろ!!」
「わかるわけないだろ! まあ、つまり丁度いい光の力で磨けってことか。くそ、面倒くさいな」
「次やらかしたら承諾は破棄だからな!」
「やらかさない!」
ただ単純に浄化するのはだめだ。
それではどうやら力が強すぎる。
光の力をコントロールしながら磨かないといけないらしい。
サラは手に意識を集中させる。
ほんのり光る手からじんわりと微量な力を感じながら拭いた。
だがしかし、全く綺麗にならない。
多少のくすみは取れているような気はするが、美しく輝いている状態ではない。
微量の力では足りないってことか。
もう少し力を入れなければならないらしい。
光の力のコントロールを意識したことのないサラは、正直戸惑った。
スカルと戦う時は光の力は全力で出し切ることが多い。
より強力な光の力で戦わなければスカルを倒せないからだ。
ピアノが綺麗になるある一定の光の力を見極めなければならないが、その光の力の調節が難しい。
けれど、やるしかない。
先ほどの微量ではだめだった。
もう少し力を出す。
サラは手に意識を集中させる。
手の平が温かくなる。
ピアノに接している部分がほんのりと光る。だがそれも少し。
もう少し力を込めれば、先ほどよりも格段にピアノとの接している部分が輝く。
ならばそれよりもさらに力を込めれば美しく光るのではないか、そう思って力を放出していれば、かなり体がしんどくなってきた。
息が上がる。
眩暈がして吐きそうになった。
どういうことだ。
それほど力を出していないのにも関わらず、これほどまで体力を消耗するということは。
休み休みするしかないが、ピアノが完全に綺麗になるには時間が相当かかる。
一体どうすればいいんだ。
「拭くの遅いけど、サラは力のコントロールができねえのか?」
壁の掃除を終えのか、丁度いいタイミングでギルがひょこひょこやってきた。
「…………………………………………できない」
「間が長ぇ」
サラは負けを認めたような心境で「出来ない。……教えてくれ」と教えを請うた。
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