光の騎士

ななこ

文字の大きさ
177 / 201
守護精編

34

しおりを挟む

 時は少し前。

 サラはあたりをくまなく探すように、水中を泳いでいた。

 けれど、どこを探しても守護精は見当たらない。

 一体どこにいるんだ?

 サラは遠目でスカルとブリジットが戦っているのを確認した。

 早く私も加勢しないと。

 そう思うが、サラが守護精の承諾を得ずに加勢するのは、ブリジットは許してくれないだろう。

 だから一刻も早く守護精を見つけなければいけないのだが。

 肝心の守護精はどこにもいない。

 サラは注意深く辺りを見渡す。

 黒く輝く岩の表面がサラの光によって青色に変わった。

「……」

 かつて海底洞窟と言われる程美しい深みがかった青色が、今ではくすんだ黒。

 まさに以前闇染めされていたときのようだ。

 だがしかし、この聖域は闇染めされているレベルではない。

 形が変形しているのだ。
 
 つまり守護精へのダメージは以前よりも大きいに違いない。

 ならば姿を消していてもおかしくはない。

 直接会えないのならば、なんらかの手段で承諾を得るしかない。

「おーい、ここの守護精!」

 声を張り上げればどこかにいるはずの守護精に聞こえるだろう。

「聞こえているのなら、返事をしてくれ!」

 声の余韻が消え去り、しーんと静まり返った。

 薄暗い聖域の中で、サラは嫌な予感がした。

 もしかして、ここの守護精はいなくなったのか? そもそもそんなことってありえるのか?

 指先が冷えてきた。

 もし、本当に守護精がいなくなってしまったのならば、聖域は正常に機能しなくなるだろう。

 つまり、闇によって大打撃を受けたこの都市は闇に堕ちる可能性が高くなる。

 ごくん、と喉を鳴らした。

 するとどこからか、ゴポゴポ、という泡が吐き出されるような音がした。

 何だろうと思い、その音の方へ行けば、サラは目を疑うこととなる。

「なん、だ。これは……」

 道の壁の岩の中に、人らしきものが眠っているのだ。

 閉じ込められているのだろうか。

 その岩の周りの地面からこぽこぽ、と小さな気泡が出ている。

 もしかして、返事をしようとしているのだろうか。それとも助けを求めているのだろうか。

 どちらにせよ助けるべきなのだが、一体どうやって岩の中から助ければいいんだ?

「……ここの守護精なのか?」

 彼女は問いかけにコポコポ、という気泡でしか返せないようだ。

 物理的に岩を壊すのは無理だ。そんな馬鹿力はない。

 ならば、こちら側から浄化し、意識を取り戻してもらうしかない。

 岩からの救出はそれから考えることにする。まずは浄化だ。

 浄化することで何か現状が変わればいいが。

 サラはす、と岩に触れた。

 すると触れているところがじんわりと黒色から深い青色へと変化してゆく。

 それを見て、サラは息を深く吸いこんだ。

「よし……」

 自身の光脈をより感じるために、全神経を集中させる。

 体中を熱いものが駆け巡り、鼓動が早くなる。

 それと同時にサラの全身がまばゆく輝き出した。

 その光に照らされているところから岩が青く美しい輝きを取り戻し始める。

 岩の表面から中へ。

 光はどんどん岩を浄化してゆく。

 そして、岩の中で眠る守護精の全身がサラの光により淡く輝き出した。

「う……」

 守護精が目をゆっくりと開けた。

「!!」

 サラを見て驚いている守護精(一体何に驚いているのかはわからないが)は、目覚めるや否やこちらへ接近してきたが。

 ゴンッ、と勢いよく岩の壁にぶつかってしまった。

 だ、大丈夫か、こいつ。

 痛みと恥ずかしさを堪えるように顔を覆い、しばらく経ってから、岩からゆっくりと出てきた。

 どうやら岩の中に捕らえられていたわけではないらしい。

 自分で岩の中に入っていたようだ。

「こ、これが、愛、ね!」

「は……? 愛とは……?」

 一体何を言っているんだ? 壁にぶつかったことが愛なのか? ドMか? この守護精はドMなのか?

 サラは後ずさる。

 正直関わりたくない。

 それでも承諾を得なければならないのでそんな事など言ってられないのだが、サラの思いとは裏腹に、守護精はずんずん近寄ってきた。

「私、ここの守護精のユーフェミア! ああ、なんて素敵なの!?」

「……は?」

 たっぷりとある髪の毛は波のようにウェーブしている。

 肌を大胆に露出した衣装は所々長い部分があり、水中をゆらゆら漂っている。

 近づいてくるユーフェミアからサラは距離を取ろうと後ずさったが、それを阻止するかのように、彼女は手を強く握ってきた。

 おまけに目がキラキラと輝いている。

「……な、何だ」

「私、スカルに掴まっていたの。苦しかったから、自分を守るために自分の殻に籠っていたの。そしたら助けにきてくれた! まるでこの世界にある御伽噺おとぎばなしのようね!! 囚われたお姫様とヒーロー……! す、素敵……!」

「なんだそれは。というか手を離せ」

「いやよ! これは運命なのよ! あなたはここで私と一緒にいるのよ!」

「……はあ? 私はあんたの承諾を得に来ただけだ。それにあんたとここに居たらまだ承諾を得ていない他の聖域へ行けなくなるからダメだ」

「……そうなの」

 見るからにしょぼんと落ち込んだユーフェミアに、サラは少し頭を掻く。

「他の守護精は承諾する代わりに条件を出していた。私がここに滞在する以外で、何か要望があれば応える」

「……」

 ユーフェミアは目線を下にして暫く考え込んでいた。

 サラがブリジットの事を気にして視線をずらした時、ユーフェミアはやっと口を開いた。

「この都市には言い告がれているの。『愛燃ゆるとき、導きの蒼き光りが照らすだろう』。だから、ここの聖域の青い石を愛すべき人へ贈る風習ができたの。誰かから誰かへ贈られる想い。石を取りに来る人からは感じたことはあるけれど、私は実際にその『愛』を見たことはないの」

 ゆっくりと顔を上げて、サラを見た。

「私、一度でいいから『愛』が見たい」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

娘を返せ〜誘拐された娘を取り返すため、父は異世界に渡る

ほりとくち
ファンタジー
突然現れた魔法陣が、あの日娘を連れ去った。 異世界に誘拐されてしまったらしい娘を取り戻すため、父は自ら異世界へ渡ることを決意する。 一体誰が、何の目的で娘を連れ去ったのか。 娘とともに再び日本へ戻ることはできるのか。 そもそも父は、異世界へ足を運ぶことができるのか。 異世界召喚の秘密を知る謎多き少年。 娘を失ったショックで、精神が幼児化してしまった妻。 そして父にまったく懐かず、娘と母にだけ甘えるペットの黒猫。 3人と1匹の冒険が、今始まる。 ※小説家になろうでも投稿しています ※フォロー・感想・いいね等頂けると歓喜します!  よろしくお願いします!

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ペットになった

ノーウェザー
ファンタジー
ペットになってしまった『クロ』。 言葉も常識も通用しない世界。 それでも、特に不便は感じない。 あの場所に戻るくらいなら、別にどんな場所でも良かったから。 「クロ」 笑いながらオレの名前を呼ぶこの人がいる限り、オレは・・・ーーーー・・・。 ※視点コロコロ ※更新ノロノロ

30年待たされた異世界転移

明之 想
ファンタジー
 気づけば異世界にいた10歳のぼく。 「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」  こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。  右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。  でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。  あの日見た夢の続きを信じて。  ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!  くじけそうになっても努力を続け。  そうして、30年が経過。  ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。  しかも、20歳も若返った姿で。  異世界と日本の2つの世界で、  20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

処理中です...