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番外編 サブストーリー
8話「魔法少女の真価」
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「よし、いつでも来い。」
すらりと剣を抜き取り、スフレへと向けるイチゴ。勿論、怪我をさせない為に模擬刀ではあるが。それに対して、スフレは完全に萎縮してしまっていた。
「さ、流石はイチゴさん…前より更に『覇天』の力が増してます…」
竜騎士に伝わる秘技、覇天。近くにいる者を威圧する、強力なスキルだ。
『なーにあんなもの。私の武装で難なく振り払えますよ。さあ、我が主。戦闘準備を。』
「はい。…あの、ところで…」
『なんですか?』
「性格変わってませんか?」
『……戦闘開始!』
「(す、スルーされた…)」
ステッキの力によってスフレの服は再び粒子化して形状を変化させ、魔法少女のコスチュームへと全身を変化させていく。
『「魔法少女☆スフレ爆誕!」』
と、ステッキの声に合わせてスフレも声を叫ぶ。…どうやら、二回目以降は自分も叫ばなければならないらしい。
「な、なんで私まで…!?」
『仕様です。』
「し、仕様…」
なんか聞いてはいけない言葉を聞いてしまった気分。スフレは前回の変身時には無かった、小さなポーチが服に装着されている事に気付いた。
「あの、これはなんですか?」
『それはマジックポケット。魔法少女の真髄とも言える魔術の権化、禁術絵札を内包するケースであります。』
「メルトリア…って、もしかして禁術の事ですか…!?」
『その通りです我が主。』
禁術。この世界において、使用を禁じられている魔法の事で、メルトリアと呼ばれている。基本的にどの魔法も強力で、世界を破壊しかねないと人々に恐れられ、禁止された魔法達だ。
「そ、それがこのポーチの中に…恐ろしい…」
ステッキはスフレの武器となり、手中へと納まる。これで互いに準備完了だ。
「行くぞ。魔法少女の力、見せてもらう!」
「は、はい!」
イチゴが飛び出し、スフレが構える。ルールは単純で、相手が降参するまでの勝負。
「せあっ!」
───ブォン!!
─ズガァァァン!!
神速の一太刀。模擬刀での攻撃とは思えぬ恐ろしい一撃が、スフレの真横を掠めて地面を抉りとる。人間がまともに受けたら即死するレベルだ。
「避けたか…!」
「こ、こちらからも行きます!」
魔力を大気中から寄せ集め、杖先へと魔力を集中させる。やがて光の玉が杖先へと集まり、光線となってイチゴを狙う光弾となる。
『魔力光撃』
──ビギューン!!
「っ…!」
光線が凄まじい勢いでイチゴへと襲い掛かる。イチゴは剣を使って光線を上手く引き裂くが、威力に押し負けて大きく後ろへ引き下がる。
──ビシュンビシュン!
隙を逃さぬ怒涛の追撃がイチゴを狙う。杖先に集まった魔力は上空へ飛び上がり、拡散して無数のレーザーと化してイチゴへ一目散に向かっていく。
「ちょ、ちょっとやりすぎですよ…!」
『あの女はこのくらいしないと理解して頂けませんよ。』
───ズガァァァァァン!!!
追撃したレーザーが爆発を起こす。しかしなお、威圧的な力を放つ黒影が、爆風の中で蠢いていた。
「スフレらしくない全力の攻撃。…見事だ。ふふ。これなら私も全力で挑めそうだ!」
はっ!と叫ぶ。それだけで、イチゴは爆風を四散させ、再び相対する敵の方を睨み付ける。
「あ、あれを受けても無傷なんて…!」
驚くスフレを他所に、イチゴは剣を構え直す。ゆっくりと身体を前へ傾け、一気に飛び出す。遠距離戦では、イチゴが不利だ。
「せあっ!」
「きゃっ!」
ギリギリを刃が掠め、物凄い轟音が空を裂く。何度も振り抜かれる刃に押し切られそうになるが、スフレもまた実力者。卓越した経験を糧に、イチゴの動きを見切る。
『武術スキルを上昇を確認。』
えっ…?と、スフレが困惑するよりも早く、身体はイチゴの斬撃に対応する。真上から振り下ろされた剣が自分に直撃する前に腕を掴み…
「(掴まれた…!?)」
「わっ!?」
──ガッ!
素早く足払い。イチゴのバランスが崩れた所でスフレはくるりと体を一回転して体制を変え、逆の足を後ろに引き下げる。
「(しまっ…!)」
────ズガァッ!!
隙だらけの腹部に、思い切り蹴りを放つ。自分の攻撃とは思えぬ程荒々しい蹴りは、歴戦の猛者であるイチゴでさえ、強烈に吹っ飛ばされた。
「い、今の私が…!?」
『はい。我が主。肉体的能力、魔法的能力共に大幅に上昇しているのです。』
ふふん、と自慢げに語るステッキであったが、本人は自分の攻撃力の恐るべき向上に驚いていた。これはまるで、トモヤの持つ神の力のようである。
「なるほど…魔法少女とは名ばかりに、武術も嗜んでいると来たか。」
イチゴは感心しながら、模擬刀を再度スフレへと向ける。如何に魔法で強化されているとはいえ、イチゴは生来の剣豪。半端な武術で倒せる相手では無い。
『我が主。禁術絵札を使いましょう。』
「ええっ!?だ、ダメですよ!そんな危険なもの…!?」
『大丈夫です我が主。あの女なら死にません。我が主自身、よく知っているのではありませんか?』
「そ、そうですけど…」
『ええい、まどろっこしい!さっさとしなさい!』
すると、念力でも使ったのかぶわっとカードが空に巻き上がり、くるりとスフレの周りを飛び交う。規則的に並んだカードからビシッと一枚が弾き出され、スフレの腕へと飛ばされる。
『さあ!我が主、バゴーンとやっちゃいましょう!』
「……わ、わかりました…!」
簡易な魔法ではイチゴが降参しないのも事実。ここは、禁術の力を見るのも良いかもしれない。
『禁忌術式 始動』
「人類の叡智。深淵を知りし賢者の稔り。封緘の螺旋を経て募りしその力を開放すべし。我が力に呼応し、我が力に順従せよ。」
バッと手を広げた彼女の腕に、満ち満ちた魔力が魔法陣として展開されていく。魔法陣は一重、二重と腕に生成され、十二もの魔法陣を腕へと纏わせて力を込める。
「今こそ放て…!」
──ギリギリギリギリ…
と。魔法らしからぬ奇怪な音が腕から鳴り響く。この魔術。「魔法陣から魔法を放つ」と言うよりは、「身体そのものを魔法を放つ道具」として駆使しているようだ。
『魔力爆腕撃』
──カッ!!
と。スフレは腕を振り抜く。途端、閃光のように弾き出される魔力の砲弾。凄まじい魔力のブーストを浴びて加速しながら、一直線にイチゴへと向かっていく。
「必殺技か。…面白い、私も受けて立ってやろう!」
イチゴは剣を天に上に高く掲げると、魔力を腕へと集め始める。すると、青白い閃光が天へと立ち上り、周囲のエネルギーを集めて凝縮する。
「迎撃する!行くぞッ!!」
『トゥハイフリズスキャルヴ・オーバーロード』
──ビシューン!!
立ち上った閃光が、そのまま真っ直ぐに振り下ろされる。閃光はスフレの魔力と激突しながら、互いの威力を削りあっていく。
──ズガァァァァァン!!!
そして。爆風が街の中に立ち上って、互いの姿は完全に見えなくなった。
すらりと剣を抜き取り、スフレへと向けるイチゴ。勿論、怪我をさせない為に模擬刀ではあるが。それに対して、スフレは完全に萎縮してしまっていた。
「さ、流石はイチゴさん…前より更に『覇天』の力が増してます…」
竜騎士に伝わる秘技、覇天。近くにいる者を威圧する、強力なスキルだ。
『なーにあんなもの。私の武装で難なく振り払えますよ。さあ、我が主。戦闘準備を。』
「はい。…あの、ところで…」
『なんですか?』
「性格変わってませんか?」
『……戦闘開始!』
「(す、スルーされた…)」
ステッキの力によってスフレの服は再び粒子化して形状を変化させ、魔法少女のコスチュームへと全身を変化させていく。
『「魔法少女☆スフレ爆誕!」』
と、ステッキの声に合わせてスフレも声を叫ぶ。…どうやら、二回目以降は自分も叫ばなければならないらしい。
「な、なんで私まで…!?」
『仕様です。』
「し、仕様…」
なんか聞いてはいけない言葉を聞いてしまった気分。スフレは前回の変身時には無かった、小さなポーチが服に装着されている事に気付いた。
「あの、これはなんですか?」
『それはマジックポケット。魔法少女の真髄とも言える魔術の権化、禁術絵札を内包するケースであります。』
「メルトリア…って、もしかして禁術の事ですか…!?」
『その通りです我が主。』
禁術。この世界において、使用を禁じられている魔法の事で、メルトリアと呼ばれている。基本的にどの魔法も強力で、世界を破壊しかねないと人々に恐れられ、禁止された魔法達だ。
「そ、それがこのポーチの中に…恐ろしい…」
ステッキはスフレの武器となり、手中へと納まる。これで互いに準備完了だ。
「行くぞ。魔法少女の力、見せてもらう!」
「は、はい!」
イチゴが飛び出し、スフレが構える。ルールは単純で、相手が降参するまでの勝負。
「せあっ!」
───ブォン!!
─ズガァァァン!!
神速の一太刀。模擬刀での攻撃とは思えぬ恐ろしい一撃が、スフレの真横を掠めて地面を抉りとる。人間がまともに受けたら即死するレベルだ。
「避けたか…!」
「こ、こちらからも行きます!」
魔力を大気中から寄せ集め、杖先へと魔力を集中させる。やがて光の玉が杖先へと集まり、光線となってイチゴを狙う光弾となる。
『魔力光撃』
──ビギューン!!
「っ…!」
光線が凄まじい勢いでイチゴへと襲い掛かる。イチゴは剣を使って光線を上手く引き裂くが、威力に押し負けて大きく後ろへ引き下がる。
──ビシュンビシュン!
隙を逃さぬ怒涛の追撃がイチゴを狙う。杖先に集まった魔力は上空へ飛び上がり、拡散して無数のレーザーと化してイチゴへ一目散に向かっていく。
「ちょ、ちょっとやりすぎですよ…!」
『あの女はこのくらいしないと理解して頂けませんよ。』
───ズガァァァァァン!!!
追撃したレーザーが爆発を起こす。しかしなお、威圧的な力を放つ黒影が、爆風の中で蠢いていた。
「スフレらしくない全力の攻撃。…見事だ。ふふ。これなら私も全力で挑めそうだ!」
はっ!と叫ぶ。それだけで、イチゴは爆風を四散させ、再び相対する敵の方を睨み付ける。
「あ、あれを受けても無傷なんて…!」
驚くスフレを他所に、イチゴは剣を構え直す。ゆっくりと身体を前へ傾け、一気に飛び出す。遠距離戦では、イチゴが不利だ。
「せあっ!」
「きゃっ!」
ギリギリを刃が掠め、物凄い轟音が空を裂く。何度も振り抜かれる刃に押し切られそうになるが、スフレもまた実力者。卓越した経験を糧に、イチゴの動きを見切る。
『武術スキルを上昇を確認。』
えっ…?と、スフレが困惑するよりも早く、身体はイチゴの斬撃に対応する。真上から振り下ろされた剣が自分に直撃する前に腕を掴み…
「(掴まれた…!?)」
「わっ!?」
──ガッ!
素早く足払い。イチゴのバランスが崩れた所でスフレはくるりと体を一回転して体制を変え、逆の足を後ろに引き下げる。
「(しまっ…!)」
────ズガァッ!!
隙だらけの腹部に、思い切り蹴りを放つ。自分の攻撃とは思えぬ程荒々しい蹴りは、歴戦の猛者であるイチゴでさえ、強烈に吹っ飛ばされた。
「い、今の私が…!?」
『はい。我が主。肉体的能力、魔法的能力共に大幅に上昇しているのです。』
ふふん、と自慢げに語るステッキであったが、本人は自分の攻撃力の恐るべき向上に驚いていた。これはまるで、トモヤの持つ神の力のようである。
「なるほど…魔法少女とは名ばかりに、武術も嗜んでいると来たか。」
イチゴは感心しながら、模擬刀を再度スフレへと向ける。如何に魔法で強化されているとはいえ、イチゴは生来の剣豪。半端な武術で倒せる相手では無い。
『我が主。禁術絵札を使いましょう。』
「ええっ!?だ、ダメですよ!そんな危険なもの…!?」
『大丈夫です我が主。あの女なら死にません。我が主自身、よく知っているのではありませんか?』
「そ、そうですけど…」
『ええい、まどろっこしい!さっさとしなさい!』
すると、念力でも使ったのかぶわっとカードが空に巻き上がり、くるりとスフレの周りを飛び交う。規則的に並んだカードからビシッと一枚が弾き出され、スフレの腕へと飛ばされる。
『さあ!我が主、バゴーンとやっちゃいましょう!』
「……わ、わかりました…!」
簡易な魔法ではイチゴが降参しないのも事実。ここは、禁術の力を見るのも良いかもしれない。
『禁忌術式 始動』
「人類の叡智。深淵を知りし賢者の稔り。封緘の螺旋を経て募りしその力を開放すべし。我が力に呼応し、我が力に順従せよ。」
バッと手を広げた彼女の腕に、満ち満ちた魔力が魔法陣として展開されていく。魔法陣は一重、二重と腕に生成され、十二もの魔法陣を腕へと纏わせて力を込める。
「今こそ放て…!」
──ギリギリギリギリ…
と。魔法らしからぬ奇怪な音が腕から鳴り響く。この魔術。「魔法陣から魔法を放つ」と言うよりは、「身体そのものを魔法を放つ道具」として駆使しているようだ。
『魔力爆腕撃』
──カッ!!
と。スフレは腕を振り抜く。途端、閃光のように弾き出される魔力の砲弾。凄まじい魔力のブーストを浴びて加速しながら、一直線にイチゴへと向かっていく。
「必殺技か。…面白い、私も受けて立ってやろう!」
イチゴは剣を天に上に高く掲げると、魔力を腕へと集め始める。すると、青白い閃光が天へと立ち上り、周囲のエネルギーを集めて凝縮する。
「迎撃する!行くぞッ!!」
『トゥハイフリズスキャルヴ・オーバーロード』
──ビシューン!!
立ち上った閃光が、そのまま真っ直ぐに振り下ろされる。閃光はスフレの魔力と激突しながら、互いの威力を削りあっていく。
──ズガァァァァァン!!!
そして。爆風が街の中に立ち上って、互いの姿は完全に見えなくなった。
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