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23話 誘拐
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「申し訳ありませんが」
どう返事しようか迷っていた聖女より早く、付き人のルーチェが彼の前に立ちはだかった。
「セラフィーナさんは御多忙の身です。貴方のような騎士一人一人と会話している余裕など無いのですよ」
本当は結構ヒマだけどね、とルーチェは心の中で訂正したが、彼がセラフィーナに近寄るのは面倒だと判断したのだろう。声掛けなど固くお断りだ、と断固拒否する事にした。
「…どうしてもダメか?本当に少し話をするだけで良いんだ」
「はい、ダメです」
ちょっとくらい良いと思うけど…とセラフィーナは言いたげだが、その甘さは間違いなく命取りになる。ルーチェは手をクロスしてバツを作って拒否する。
「そうか…なら仕方ないな…」
男は諦めて引き下がる……かと思いきや、ぐっと足に力を込めて、勢い良くバンッ!と扉を蹴り砕いた。扉は威力によって完全にひしゃげて潰れ、枠から外れてしまっていた。
「え?…う、うわっ!?」
その場にいる全員が唖然としている中で、アルヴェルトはサッとセラフィーナをお姫様抱っこで抱えて、その場から走って逃げ出した。
「え?え?なに?なに!?」
「落ち着いてくれ、アンタをどうこうするつもりはない!」
「そ、そうなの?っていうか、今どんな状況!?///」
騎士団の男に声をかけられたと思ったら、次の瞬間に拉致されて連れ去られてしまった。しかも、お姫様抱っこされている。目の前で揺れるイケメンの顔と、力強くたくましい腕に包まれて、セラフィーナはこんな状況だってのにいつもの妄想癖が始まってしまう。
『話は後でだ。今は大人しくしてろ…』
『は、はいっ…!』
『素直じゃねえか…良い子にしてろよ。お前を連れ去ってから、後で美味しく頂いてやるよ……』
『そ、そんな……ダメです…だって私は……』
『恥ずかしがんなって。そんな顔されたら、余計燃えちまうぞ?』
『っ……』
そこまでやって、ハッと我に返った。今はそんな妄想している場合では無い。よく分からない騎士に連れ去られちゃってるし、身体まで触れられちゃってる。下手したら男だとバレるかもしれない。これはまずい。聖女生活初日から大ピンチだ。
「飛ぶぞ、捕まってろ!」
「はぇ!?は、はいっ!」
ぎゅっと男の服を掴むとほぼ同時に、力強く男の脚が大地を叩き付ける。たまたま開いていた窓から身体を飛び上がらせ、一気に空へと舞い上がる。高さにして5メートル。下手に落下したら即死するような高さまで、彼は一蹴りで登りつめたのだ。
「え、え…ええええええええ!?!?」
「竜翼!」
バサッと、心地良い音が響いたかと思うと、彼の背中に竜の翼が大きく開いていたのだ。そのまま翼をはためかせ、一気に空へと舞い上がる。
「と、ととと…飛んで……」
「すぐ降りるから安心してくれ…はっ!」
そのまま勢いを落として滑空し、王城近くの自然地区へと緩やかに落下する。アルヴェルトは大地に降り立つと、ゆっくりとセラフィーナを地面に下ろした。
「(わ、わぁ…飛んでた…飛んでた……)」
「悪い、誘拐なんかしちまって。どうしてもアンタと話したかったんだ」
「…は、はい…気にしてはいませんけど…私に話したい事ってなんですか?」
いや、本当はめっちゃ気にしてるけど…この後どうなるのか、あんまり考えたくないのはある。アルヴェルトは少し口をモゾモゾさせて言い淀んでから、思い切って想いを伝えることにした。
「…実は俺、アンタの事が好きになっちまったんだ。一目惚れ…って奴だな」
「なるほど、私の事が好きに……」
なあんだ、私の事を殺したいとか、身代金を取りたいのかとか思ってしまった。好きになられるくらいなら全然……
全然……
「好きって……女の子として?」
「ああ。それ以外無いだろ……言わせんなよ…」
そう言って、アルヴェルトは顔を赤くしてそっぽを向く。そうだよねー、とセラフィーナは頷くと同時に、驚きの感情が瞬く間に自身の内から膨れ上がるのを感じた。
「……ええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!?!?!?///」
どう返事しようか迷っていた聖女より早く、付き人のルーチェが彼の前に立ちはだかった。
「セラフィーナさんは御多忙の身です。貴方のような騎士一人一人と会話している余裕など無いのですよ」
本当は結構ヒマだけどね、とルーチェは心の中で訂正したが、彼がセラフィーナに近寄るのは面倒だと判断したのだろう。声掛けなど固くお断りだ、と断固拒否する事にした。
「…どうしてもダメか?本当に少し話をするだけで良いんだ」
「はい、ダメです」
ちょっとくらい良いと思うけど…とセラフィーナは言いたげだが、その甘さは間違いなく命取りになる。ルーチェは手をクロスしてバツを作って拒否する。
「そうか…なら仕方ないな…」
男は諦めて引き下がる……かと思いきや、ぐっと足に力を込めて、勢い良くバンッ!と扉を蹴り砕いた。扉は威力によって完全にひしゃげて潰れ、枠から外れてしまっていた。
「え?…う、うわっ!?」
その場にいる全員が唖然としている中で、アルヴェルトはサッとセラフィーナをお姫様抱っこで抱えて、その場から走って逃げ出した。
「え?え?なに?なに!?」
「落ち着いてくれ、アンタをどうこうするつもりはない!」
「そ、そうなの?っていうか、今どんな状況!?///」
騎士団の男に声をかけられたと思ったら、次の瞬間に拉致されて連れ去られてしまった。しかも、お姫様抱っこされている。目の前で揺れるイケメンの顔と、力強くたくましい腕に包まれて、セラフィーナはこんな状況だってのにいつもの妄想癖が始まってしまう。
『話は後でだ。今は大人しくしてろ…』
『は、はいっ…!』
『素直じゃねえか…良い子にしてろよ。お前を連れ去ってから、後で美味しく頂いてやるよ……』
『そ、そんな……ダメです…だって私は……』
『恥ずかしがんなって。そんな顔されたら、余計燃えちまうぞ?』
『っ……』
そこまでやって、ハッと我に返った。今はそんな妄想している場合では無い。よく分からない騎士に連れ去られちゃってるし、身体まで触れられちゃってる。下手したら男だとバレるかもしれない。これはまずい。聖女生活初日から大ピンチだ。
「飛ぶぞ、捕まってろ!」
「はぇ!?は、はいっ!」
ぎゅっと男の服を掴むとほぼ同時に、力強く男の脚が大地を叩き付ける。たまたま開いていた窓から身体を飛び上がらせ、一気に空へと舞い上がる。高さにして5メートル。下手に落下したら即死するような高さまで、彼は一蹴りで登りつめたのだ。
「え、え…ええええええええ!?!?」
「竜翼!」
バサッと、心地良い音が響いたかと思うと、彼の背中に竜の翼が大きく開いていたのだ。そのまま翼をはためかせ、一気に空へと舞い上がる。
「と、ととと…飛んで……」
「すぐ降りるから安心してくれ…はっ!」
そのまま勢いを落として滑空し、王城近くの自然地区へと緩やかに落下する。アルヴェルトは大地に降り立つと、ゆっくりとセラフィーナを地面に下ろした。
「(わ、わぁ…飛んでた…飛んでた……)」
「悪い、誘拐なんかしちまって。どうしてもアンタと話したかったんだ」
「…は、はい…気にしてはいませんけど…私に話したい事ってなんですか?」
いや、本当はめっちゃ気にしてるけど…この後どうなるのか、あんまり考えたくないのはある。アルヴェルトは少し口をモゾモゾさせて言い淀んでから、思い切って想いを伝えることにした。
「…実は俺、アンタの事が好きになっちまったんだ。一目惚れ…って奴だな」
「なるほど、私の事が好きに……」
なあんだ、私の事を殺したいとか、身代金を取りたいのかとか思ってしまった。好きになられるくらいなら全然……
全然……
「好きって……女の子として?」
「ああ。それ以外無いだろ……言わせんなよ…」
そう言って、アルヴェルトは顔を赤くしてそっぽを向く。そうだよねー、とセラフィーナは頷くと同時に、驚きの感情が瞬く間に自身の内から膨れ上がるのを感じた。
「……ええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!?!?!?///」
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