マガイモノ

亜衣藍

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「お久しぶりね、聖さん」

「――――どうして、アンタがここに? 」

「あら? つれないことを言うじゃないの」

 ほほほ、と笑う万里子の後を引き継ぐように、一夏が口を開く。

「その紙にサインをしたら、隣の部屋でこの万里子とセックス・・・・してもらおうか」

「っ!? 」

 とんでもない事を言い出した一夏に、聖は素直な感想を言う。

「はぁ!? 冗談じゃねーよ。なんでオレが、史郎の女を抱かなきゃいけないんだ。それに、何だよこいつは? これこそ、冗談じゃない! 」

 聖が手にしたその紙は、なんと婚姻届けだったのだ。

 相手の欄には、万里子のサインが既に入っている。

 聖は美しいおもてに怒りの表情を浮かべ、一夏をキッと睨み付けた。

「オレは忙しいんだ。これ以上ガキの茶番に付き合ってやる暇はないんだよ! ユウを傷付けた一件を不問にして、逆にこっちは手打ちの金まで用意してやったってのに、いったい何を考えてんだ!! 親子そろって、お前らの頭の中はイカレてるよ! 」

「それが、本当のアンタか」

 きつく眦を吊り上げて怒る聖は、苛烈なほどに美しい。

 隣に立つ万里子も、女性らしく肉感的で魅力的な女だが――――こうして比べてみると、聖の方がどうしても格上に見える。

 万里子は綺麗だが、所詮は街の女。

 対して聖は、只人には手の届かない高嶺の華だ。

 美しく、かつ蠱惑的なその顔と躰を見ていると、意識しない内に、身体の芯が熱くなってくる――――その事に気付き、一夏は内心の動揺を隠しながら、聖から視線を逸らした。

「……万里子はオヤジの気に入りだったが、他の妾たちに嫌がらせをしていた一件がバレて、お役御免になっちまったんだ。だが、特別に手切れ金として青菱の経営していたクラブの一つを貰って、運よくそこのオーナーに収まったが……しかし、それだけじゃあ万里子の気は済まないそうだ」

 史郎が、出所してからコッチ、あちこちの玄人の女に手を出しているのは、既に真壁から聞いている。
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