マガイモノ

亜衣藍

文字の大きさ
75 / 203
9

9-4

しおりを挟む
 美央は、犯人は局の関係者に違いないと判断ミスをするし、不必要に大声を出して助けを呼ぼうとするし……これでは、さすがに自信を失ってしまいそうだ。

 ミステリーやアクションも書ける万能型脚本家を目指しているというのに、ユウに比べてこの体たらくとは。

 我ながら、情けないと感じる。

 するとユウは、微かに苦笑を浮かべた。

「別にオレは、冷静じゃないよ。ただ……美央よりもちょっとだけ歳を喰ってる分、俯瞰ふかんして物事を考えることが出来たってだけだ」

「俯瞰、ですか――」

「当事者なのに、傍観者の側に回って意識を切り替えるのは……オレの、子供の頃からの得意技なんだ」

 そう言うと、またユウはフッと微笑んだ。

 少し影を含んだその瞳に気付き、美央は口を開こうとするが、

「さ、とにかく! 犯人は、わざわざ電気が煌々と灯っているこの楽屋のセットの中に、オレたちを放置したんだ。と、いう事は、オレたちはいま『楽屋に居る』んだと、犯人はそう信じ込ませようとしているんだと思う」

「そう――ですね……」

「いずれにせよ、犯人は直ぐに戻ってくるつもりなんだろう。今の忙しい時期に、テレビ局のスタジオがいつまでも空きのままでいるワケが無いからな」

「確かに、その通りです。それじゃあオレたちは、どうしましょう? 」

「うん……ここは騙されているふりをして、犯人の正体と目的を探った方が利口じゃないかな」

「OK、分かりました。確かにオレたちは、まだ犯人の正確な名前も知らないんだ。見当を付けていたマサミはADの名前だったし。……ここは、情報を仕入れるのが先ですね。では、それでいきましょう」

 美央も頭を切り替えて、ユウに笑顔を向ける。

 その笑顔は、緊張の為かずいぶん強張っていたが、パニックになって騒ぐことはもうないだろうと思わせる、しっかりとした笑顔だった。

 それを見て、ユウは『それじゃあ少しの間、大人しく眠っているふりをしよう』と言って目を閉じる。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

Take On Me 2

マン太
BL
 大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。  そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。  岳は仕方なく会うことにするが…。 ※絡みの表現は控え目です。 ※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。

インテリヤクザは子守りができない

タタミ
BL
とある事件で大学を中退した初瀬岳は、極道の道へ進みわずか5年で兼城組の若頭にまで上り詰めていた。 冷酷非道なやり口で出世したものの不必要に凄惨な報復を繰り返した結果、組長から『人間味を学べ』という名目で組のシマで立ちんぼをしていた少年・皆木冬馬の教育を任されてしまう。 なんでも性接待で物事を進めようとするバカな冬馬を煙たがっていたが、小学生の頃に親に捨てられ字もろくに読めないとわかると、徐々に同情という名の情を抱くようになり……──

薔薇摘む人

Kokonuca.
BL
おじさんに引き取られた男の子のお話。全部で短編三部作になります

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

あなたの隣で初めての恋を知る

彩矢
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

淫愛家族

箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。 事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。 二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。 だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――

処理中です...