マガイモノ

亜衣藍

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12-2

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「この……バカ野郎! 」

 鈴置は激高し、拳を振り上げるが――――

「ストップ! 私の病院内で暴力行為はご法度だ! 」

 鋭い李の声に、鈴置の動きは止まった。

 李は続けて、口を動かす。

「ウチは、ヤクザ御用達の病院じゃないんだ。今回はあくまで古馴染みのお前の頼みだから診てやったけど、だからってこっちは『なぁなぁ』で済ませるつもりは一切ないんだからな。この貸しは、しっかりと返してもらうぞ」

 李に指を差され、鈴置は『うっ』と言葉に詰まった様子で押し黙った。

 すると、丁度そのタイミングで、鈴置の携帯が鳴った。

「ったく、今忙しい――」

 しかしその相手を確認すると、鈴置の顔色がサッと変わる。

 そして彼は、即座に電話へ出た。

「は、はい! 鈴置です!――い、いいえ。そんな。ただ、その……畠山ユウですが、ちょっとその……ケガをさせてしまって――」

 すると、電話の向こうで怒号が轟いたらしい。

 鈴置は「ひえっ」と肩を竦めると、すぐに慌てて弁解を始めた。

「これは、クウガってチンピラがオレらの目を盗んで勝手に――で、ですから、今回のことは坊ちゃんも一枚噛んでいるようなんですよ。え、証拠ですか? それは本人の口から直接吐かせますよ――ただ、あの野郎逃げ……え、は、はい。分かりました」

 鈴置はそう言って、電話を切った。

 そしてすぐに、付いてきた舎弟に向かって怒鳴り声を放つ。

「おい! 今直ぐ草の根探して、クウガをとっ捕まえろ! ヤツの兄弟、女、思い当たる関係先を徹底的に洗い出せ! ヤツを会長の前に引き摺り出さないと、オレたちが落とし前を取らされるぞ!! 」

 鈴置のセリフに、男たちは動揺しながら一斉に動き出した。

 その場に留まったのは、茫然とした様子の美央と、不機嫌な表情のままカルテをファイルに閉じている李と、寝台の上で横たわったまま、痛みで動けないユウだけである。

 その三人へ丁寧に頭を下げると、鈴置も、クウガ捜索の為に診療所を後にしようと踵を返す。
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