マガイモノ

亜衣藍

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(所詮、おれは凡人なんだよな。零のようなハイレベルのモデルだったら、同性の恋人がいると堂々公表しても表立って波風も立たないけれど……おれは無理だ。ゲイだって口にしたら、周りから奇異な目でしか見られないだろう)

 だから慎一は、このままひっそりと独りで、静かに暮らしていくだけで満足だ。

(自分の恋愛なんて、とっくに諦めてるさ。だからせめて、零の恋愛だけは応援してやるかな)

 恋に真っ直ぐな零の姿は、慎一にとっては、見ていて好ましいというのも本音だ。

 このまま、期限内に仕事へ戻ってくれれば……もうそれでいいだろう。

 自分でも甘いと思うが『人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて死んじまえ』という有名な都々逸どどいつもある。恋仲を邪魔するのも野暮だろう。

 慎一は、そう結論を出していた。


 だが、赤坂を目の前にして、展開がまた変わった。

 零の携帯へ、懐かしい人物から着信が届いたのだ。
 
 相手の名前を確かめると、零は訝し気な表情になって電話へ出る。

「やぁ、久しぶりだね。で、なにか用? いま日本に着いたばかりだし、ちょっと忙しいんだけど」

『ああ、よかった! 繋がった!! すまない、零! 今までの事を全部謝るから……だから、手を貸して欲しいんだ!! 』

 唐突なセリフに、零は面食らって口を開く。

「手を貸す? もうTriangleは解散したんだ。だからもう、君たち・・・との接点は無いはずだよ。オレは事務所も変わったし――」

 だが、電話向こうからは、切羽詰まった声が返って来た。

『オレのバカ弟が、ヤクザに追われているんだ! このままじゃあ、殺されちまう……!だから零! 頼むから、手を貸して欲しいんだ!! 』

 いきなりの懇願に、零はビックリする。

「はぁ? 弟!? ヤクザ!? それが、どうしてオレと関係するんだ? なにか脅されているなら、黙って警察へ行って保護してもらえばいいじゃないか」
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