マガイモノ

亜衣藍

文字の大きさ
151 / 203
16

16-4

しおりを挟む
 だが、その声質はユウのように綺麗ではない。

 ミヤビの声は擦れるようなクセのある、ハスキーボイスなのだ。

 もちろん音痴というワケではないが、明らかに、ユウとは方向性というかジャンルというか……質そのものが違う音なのである。

 以前、MHJでの共演を検討した時は、ミヤビがユウのコーラスを担当し、サビ部分を被るように歌うというものであった。

 デモテープを聴いた時は、いい具合にステージでは相乗効果が期待できそうだと判断し、事務所でもいっときはGOを出した。

 だが、実際に顔を合わせて打ち合わせをする段階に至ると――――ミヤビはユウの声を無視して発声しようとして、自分こそを業界関係者へ売り込もうと欲をかいてしまった。

 不協和音に陥った状態ではとても共演は無理だという結論になり、それで結局ユウとInnovativeイナヴァトリィ共演の話は流れてしまった。

 だが、あの頃の尖った声を調節して、こうしてユウと音を合わせたところ……息を殺して様子を伺っていた、聖の顔が真剣なモノに変わった。

 その眼差しは、息子を溺愛する父親ではなく、一流芸能プロダクション社長のそれに変わる。

 ユウとミヤビ。

 それぞれ異なる「声質」のボーカルが組み合わさることでケミストリーが生じ、ケガの影響で高音を出せなかったユウのバックアップを見事に構築している。

「a――……」

 音を合わせ終わったところで、ユウは聖を見遣った。

「どうです、聖さん? 」

「…………驚いた。案の定ユウは骨折の影響で、高音はヘッドボイスではなくファルセットになってしまうようだが――まさかそれを、そいつがミドルでフォローするとは」

(※ヘッドボイス、ファルセット、ミドルボイスは裏声の技法の名前です)

 聖の言葉に、ユウはニッコリと笑う。

「ね? これなら、充分フェスに出演可能ですよね」

「――――そうだな」

 聖は、根負けしたように苦笑した。

 しかし、疑問もある。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

Take On Me 2

マン太
BL
 大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。  そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。  岳は仕方なく会うことにするが…。 ※絡みの表現は控え目です。 ※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。

インテリヤクザは子守りができない

タタミ
BL
とある事件で大学を中退した初瀬岳は、極道の道へ進みわずか5年で兼城組の若頭にまで上り詰めていた。 冷酷非道なやり口で出世したものの不必要に凄惨な報復を繰り返した結果、組長から『人間味を学べ』という名目で組のシマで立ちんぼをしていた少年・皆木冬馬の教育を任されてしまう。 なんでも性接待で物事を進めようとするバカな冬馬を煙たがっていたが、小学生の頃に親に捨てられ字もろくに読めないとわかると、徐々に同情という名の情を抱くようになり……──

薔薇摘む人

Kokonuca.
BL
おじさんに引き取られた男の子のお話。全部で短編三部作になります

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

処理中です...