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しおりを挟む一向に聖の行方が掴めないことに、青菱史郎は怒号を上げた。
「お前ら! 朝までに聖を見つけられなかったら、指の一本で済むと思うなよ! 」
「は、はいっ! 」
泡を食って、青菱につめていた残りの構成員たちも出て行く。
――――聖は、路上で襲われた線が濃厚だ。
大方、そのまま車に引き摺り込まれ、黒龍のアジトへ連れて行かれたのだろう。
しかし、そのアジトは、全て調べた。
もぬけの殻なのを確認している。
その他の、可能性のありそうな場所を虱潰しに捜しているが……。
「クソッ! ガキども……!! とっ捕まえて全員ぶち殺してやる! 」
先程、黒龍の幹部から写メが届いた。
そこには、全裸で拘束されている聖の写真と、二つの要求が書かれていた。
史郎はそこに書かれていた文言よりも、その添付された聖の写真を見て、怒りが怒髪天を突いたらしい。
「今直ぐここにガキどもを連れて来い!! 」
史郎は滾るような怒声を上げ、手にしていた日本刀をブンっと振った。
史郎の眼が怒りで目が赤い。完全に冷静さを失っている。周りの護衛は、若頭のあまりの恐ろしさに、ブルリと震えた。
そんな史郎に、来客が告げられる。
「わ、若頭……天黄の組長と、護衛幹部と、刑事が来ました。け、刑事は、一人だけならという条件で中に通しましたが……」
「あぁ!? 」
振り向くと、青い顔をして立つ伝令係の後ろに、三人の男が立っていた。
一人は、史郎にとって最も忌々しい存在の天黄正弘。
その隣に立つ厳つい面相をしたデカい男は知らないが、天黄組の幹部だろう。
そして、元々は柔和で育ちの良さそうな容貌をしていただろうに、何かあったのか、落ち窪んだ目に鬼相を浮かべた刑事が一人立っている。端正な顔だけに、異様だ。
口火を切ったのは、天黄正弘だった。
「――――青菱の若頭。聖に何かあったら、真っ先にウチにも知らせるってぇ約束じゃあなかったのかい? 」
「……たった今黒龍からメールが届いたばかりで、捜索の人数を追加で手筈していたところだ。ちょうど、これからあんたにも知らせようとしていたところさ」
すると、今の史郎の説明を聞いた刑事が口を開いた。
「内容は? 」
「五億を海外の指定口座へ振り込む事と、黒龍幹部が海外へ逃亡するまで手を出さない事。聖は、その為の人質に取られたようだ」
「なのにお前は、捜索の手を緩めないのか? 」
「ヤクザの手口を知らねぇのか? カネを払えば、それで本当に大人しく人質を解放するもんかよ。半グレだろうと、それは変わらねぇだろう」
これを聞いた天黄の二人は相談を始め、そして刑事もそれに頷き史郎に視線を戻す。
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