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すると、七海は直ぐにある変化に気付いた。
「クビ」
「あ……」
奏はハッとして、ポッと頬を染める。その様子に、七海の顔は綻んだ。
「ショウカサマ、ト、ヤットツガイニナレタンダネ」
「えっ」
「イツモ、イッテタ。ショウカサマ、ショウカサマ、ッテ」
奏の首には痛々しい傷跡があり、七海はいつもそれを憐れに思っていたが、今は新しく出来た噛み痕の方が目立っている。
それは、まごう事なき番いの印だ。
「オメデトウ、カナデ。アイツトハ、ワカレタンダネ」
「あいつ――? 」
「マブチ。アイツ、ゼッタイニ、ユルサナイ」
「あ……」
奏は、この4年近くの間に起こった変化を、どう説明したらいいのか戸惑った。
5年前、馬淵によって酷い目に遭わされ、路上で動けなくなっていた奏を助けに駆け付けてくれたのは、この七海だ。七海は、それからずっと馬淵を誤解して嫌ったままなのだ。
大切な後輩を酷い目に遭わせた、あくどいベータの成金男……七海の認識は、そこで止まっている。
「ヨウヤク、カナデノオモイガツウジタンダ。ヨカッタ」
「あ、あの――これは……」
奏は言い淀みながら、真実を口にする。
「これは、正嘉さまではありません、馬淵栄太さんの噛み痕です。僕は……栄太さんと番いになったんです……」
その告白に、七海は驚愕した。
信じられないと目を見張り、まだ不自由な声帯を直に震わせる。
「――そ、ん、な――ばか、なっ! かな、で、は……あいつに、ひどい目――――」
青ざめ震えながら、ひどい出血で貧血になって動けなくなっていた奏。
その原因である馬淵と、どうして番に!?
七海は、訳が分からず混乱した。
「だ、ま……さぇて――い――」
七海はゴホッと咳をして、ボードへ視線を当てる。
「カナデ、ダマサレテイル。オドサレタ? アンナニ、イヤナコト、アッタノニ」
「それは――色々な誤解があったんです。本当は、栄太さんは僕の事をとても心配していていたんですけど、僕の態度が悪くて――つ、つまり、僕が頑なに栄太さんの真意を聞こうとしなかったから、だから、お互いに誤解したままになってしまって! 」
散々な初体験であったのは確かだ。
栄太に罵倒され、冷たくあしらわれて(本当は、あの時の栄太はパニックになってしまい、どうしたらいいのか分からずに癇癪を起す子供のようになっていたのだが)兎にも角にも貧血で動けなくなった奏は、助けを求めて七海に縋った。
しかし、あの時の奏が、もっと素直であったなら。
『初めてなので優しくしてください』
そう、一言でも口にしていたら。
最初から身構えないで、心を開いて栄太を迎え入れていたなら……結果は違った筈だった。
あれから5年もの間、誤解して栄太を憎むことなく愛していたかもしれない。
「今の僕は――栄太さんと番えて幸せです。本当です」
だが、やはり七海は納得できないらしく、険しい表情になった。
「ベータハ、アルファニ、コンプレックスヲモッテイル。カナデガ、アルファニ、オモイヲヨセテイルカラ、タイコウシンガ、ワイタンダ」
「そんな、対抗心なんて……」
奏は、その言葉に戸惑う。
確かに栄太は、アルファに対して並々ならぬ憎悪を抱いている。
その事は、奏も聞いていたので知っている。
馬淵家の義理の兄弟がアルファである事。そして義理の父もアルファであり、エリート気質の彼等から相当なプレッシャーと耐え難い屈辱を味わわされた事。
それらを撥ね返す為に、如何に栄太が馬淵家の中で努力したか――――。
そして、家を継ぐには後継者を用意しろと注文を付けられ、栄太はオメガを囲う事になって…………。
そこで、奏はふと不安になった。
「クビ」
「あ……」
奏はハッとして、ポッと頬を染める。その様子に、七海の顔は綻んだ。
「ショウカサマ、ト、ヤットツガイニナレタンダネ」
「えっ」
「イツモ、イッテタ。ショウカサマ、ショウカサマ、ッテ」
奏の首には痛々しい傷跡があり、七海はいつもそれを憐れに思っていたが、今は新しく出来た噛み痕の方が目立っている。
それは、まごう事なき番いの印だ。
「オメデトウ、カナデ。アイツトハ、ワカレタンダネ」
「あいつ――? 」
「マブチ。アイツ、ゼッタイニ、ユルサナイ」
「あ……」
奏は、この4年近くの間に起こった変化を、どう説明したらいいのか戸惑った。
5年前、馬淵によって酷い目に遭わされ、路上で動けなくなっていた奏を助けに駆け付けてくれたのは、この七海だ。七海は、それからずっと馬淵を誤解して嫌ったままなのだ。
大切な後輩を酷い目に遭わせた、あくどいベータの成金男……七海の認識は、そこで止まっている。
「ヨウヤク、カナデノオモイガツウジタンダ。ヨカッタ」
「あ、あの――これは……」
奏は言い淀みながら、真実を口にする。
「これは、正嘉さまではありません、馬淵栄太さんの噛み痕です。僕は……栄太さんと番いになったんです……」
その告白に、七海は驚愕した。
信じられないと目を見張り、まだ不自由な声帯を直に震わせる。
「――そ、ん、な――ばか、なっ! かな、で、は……あいつに、ひどい目――――」
青ざめ震えながら、ひどい出血で貧血になって動けなくなっていた奏。
その原因である馬淵と、どうして番に!?
七海は、訳が分からず混乱した。
「だ、ま……さぇて――い――」
七海はゴホッと咳をして、ボードへ視線を当てる。
「カナデ、ダマサレテイル。オドサレタ? アンナニ、イヤナコト、アッタノニ」
「それは――色々な誤解があったんです。本当は、栄太さんは僕の事をとても心配していていたんですけど、僕の態度が悪くて――つ、つまり、僕が頑なに栄太さんの真意を聞こうとしなかったから、だから、お互いに誤解したままになってしまって! 」
散々な初体験であったのは確かだ。
栄太に罵倒され、冷たくあしらわれて(本当は、あの時の栄太はパニックになってしまい、どうしたらいいのか分からずに癇癪を起す子供のようになっていたのだが)兎にも角にも貧血で動けなくなった奏は、助けを求めて七海に縋った。
しかし、あの時の奏が、もっと素直であったなら。
『初めてなので優しくしてください』
そう、一言でも口にしていたら。
最初から身構えないで、心を開いて栄太を迎え入れていたなら……結果は違った筈だった。
あれから5年もの間、誤解して栄太を憎むことなく愛していたかもしれない。
「今の僕は――栄太さんと番えて幸せです。本当です」
だが、やはり七海は納得できないらしく、険しい表情になった。
「ベータハ、アルファニ、コンプレックスヲモッテイル。カナデガ、アルファニ、オモイヲヨセテイルカラ、タイコウシンガ、ワイタンダ」
「そんな、対抗心なんて……」
奏は、その言葉に戸惑う。
確かに栄太は、アルファに対して並々ならぬ憎悪を抱いている。
その事は、奏も聞いていたので知っている。
馬淵家の義理の兄弟がアルファである事。そして義理の父もアルファであり、エリート気質の彼等から相当なプレッシャーと耐え難い屈辱を味わわされた事。
それらを撥ね返す為に、如何に栄太が馬淵家の中で努力したか――――。
そして、家を継ぐには後継者を用意しろと注文を付けられ、栄太はオメガを囲う事になって…………。
そこで、奏はふと不安になった。
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