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5年前も、更にその前も、自分の方から正嘉の元へと足を運んできたというのに。
焦れる内心にイラつきながらも、正嘉はそれでもしばらく待っていたが、やはり奏の方から現われる様子はない。
故に、とうとう業を煮やして、正嘉は自ら動く事にしたのだ。
いつも、交際を申し込まれる側のポジションだった正嘉が、初めて自分の方から足を運んだのだ。
これは、周囲が思っている以上の、とんでもない奇跡の行動だろう。
しかし――――本来なら涙を流して喜ぶであろう、運命の番である筈の結城奏は、あろう事か正嘉を否定してきたのだ。
『き、気安く、僕に触れないでください!! 』
『あなたは、僕にとって最早ただの他人です』
なんと、奏は予想外のリアクションを返して来たのだ。
正嘉は、仕方なしにその時はいったん引き下がり、改めて次の一手を考える事にした。
そして、九条恵美が暗躍していたらしき行動内容の詳細と、その兄の九条凛の周辺。
更に七海達樹の事まで調べ上げたところで、正嘉は満を持して二回目の行動を起こしたのだ。
奏に対し、石を投げつける等の攻撃行動を取った九条恵美を呼び出して、正式に謝罪する事を確約させた。そして正嘉は恵美を伴い、再び奏の元を訪れたのである。
だがしかし、意に反して、奏は正嘉の方こそを諸悪の根源のように断罪して来た。
そして、愚かにもベータの男を選んだと言い出したのだ。
――――何をバカな事を……と、正嘉は不愉快になった。
自分こそが運命だと知っているくせに、その定めに背を向けようとしているのか?
そんな事が、まかり通ると思っているのか?
(オレ達は、好きだろうと嫌いだろうと、互いに『運命の番』と認識したなら、もうそれに従うのが当たり前ではないか)
感情は関係ない。大切なのは、運命に従う本能だ。
そう思い、奏と揉み合ったところ……偶然、その首筋に残る醜い古傷の上に刻まれた、新しい噛み痕を目の当たりにしてしまった。
(ベータの男と、番の真似事だと!? )
――――その瞬間、正嘉の理性は切れた。
正嘉は奏の儚い抵抗を易々と封じて、その上から『番の上書き』をしたのだ。
それは、アルファだけに可能な、絶対的な所有権の刻印だった。
「その後オレは、気を失った奏をわざわざマンションへ運んで――――まぁ、オレも若いからな。ましてや、相手は運命の番だ。甘い匂いに誘われて……」
「君は! 幾ら相手が運命だからといって、そんな一方的な行為が許されると思っているのか! 」
声を荒げた九条に、正嘉は肩を竦める。
「暴走してやり過ぎてしまったのは自覚しているが、かなり自制はした方だぞ。そのまま連れて帰ろうかと思ったが――」
「こっちの総会で頭がいっぱいで、結局そのまま彼をマンションへ置き去りにして帰ったんだろう! 君は、本当にまだ子供だ! 自分のやった事の責任も、結果も、全て負うその覚悟もない、下らない能書きを垂れるガキだ!! 」
九条はそう断言すると、未だ真意の見えない正嘉をキッと睨む。
「君の言い分は余りにも自分勝手で、見苦しいだけだ。もう四の五の言わないで、大人しくサインをする事だな! 」
バンっとテーブルを叩き、九条は命令する。
だが、やはりどうした事か、正嘉は動じない。
彼は顔色も変えずに、次にとんでもない事を言いだした。
「責任? 結果? 貴様は何を言っている? オレはこの下らない総会が終わったら、奏の元へ再び出向いて、今度こそ青柳の別邸へ連れて行くつもりだ。何といっても、運命の番だからな」
「な……に? 」
「番なのだから、娶るのは当たり前だろう? そのまま連れ帰ろうかと思ったが、うわ言に『研究』『試薬』と繰り返されては、直ぐに連れて行く訳にもいくまい。何か余程の要件なのだろうと、オレなりに昨夜は遠慮したんだ」
「――――つまり、君は……」
「今日一日猶予を与えたのだから、ヤツも、もう充分だろう。オレはこれから奏を迎えに行く」
焦れる内心にイラつきながらも、正嘉はそれでもしばらく待っていたが、やはり奏の方から現われる様子はない。
故に、とうとう業を煮やして、正嘉は自ら動く事にしたのだ。
いつも、交際を申し込まれる側のポジションだった正嘉が、初めて自分の方から足を運んだのだ。
これは、周囲が思っている以上の、とんでもない奇跡の行動だろう。
しかし――――本来なら涙を流して喜ぶであろう、運命の番である筈の結城奏は、あろう事か正嘉を否定してきたのだ。
『き、気安く、僕に触れないでください!! 』
『あなたは、僕にとって最早ただの他人です』
なんと、奏は予想外のリアクションを返して来たのだ。
正嘉は、仕方なしにその時はいったん引き下がり、改めて次の一手を考える事にした。
そして、九条恵美が暗躍していたらしき行動内容の詳細と、その兄の九条凛の周辺。
更に七海達樹の事まで調べ上げたところで、正嘉は満を持して二回目の行動を起こしたのだ。
奏に対し、石を投げつける等の攻撃行動を取った九条恵美を呼び出して、正式に謝罪する事を確約させた。そして正嘉は恵美を伴い、再び奏の元を訪れたのである。
だがしかし、意に反して、奏は正嘉の方こそを諸悪の根源のように断罪して来た。
そして、愚かにもベータの男を選んだと言い出したのだ。
――――何をバカな事を……と、正嘉は不愉快になった。
自分こそが運命だと知っているくせに、その定めに背を向けようとしているのか?
そんな事が、まかり通ると思っているのか?
(オレ達は、好きだろうと嫌いだろうと、互いに『運命の番』と認識したなら、もうそれに従うのが当たり前ではないか)
感情は関係ない。大切なのは、運命に従う本能だ。
そう思い、奏と揉み合ったところ……偶然、その首筋に残る醜い古傷の上に刻まれた、新しい噛み痕を目の当たりにしてしまった。
(ベータの男と、番の真似事だと!? )
――――その瞬間、正嘉の理性は切れた。
正嘉は奏の儚い抵抗を易々と封じて、その上から『番の上書き』をしたのだ。
それは、アルファだけに可能な、絶対的な所有権の刻印だった。
「その後オレは、気を失った奏をわざわざマンションへ運んで――――まぁ、オレも若いからな。ましてや、相手は運命の番だ。甘い匂いに誘われて……」
「君は! 幾ら相手が運命だからといって、そんな一方的な行為が許されると思っているのか! 」
声を荒げた九条に、正嘉は肩を竦める。
「暴走してやり過ぎてしまったのは自覚しているが、かなり自制はした方だぞ。そのまま連れて帰ろうかと思ったが――」
「こっちの総会で頭がいっぱいで、結局そのまま彼をマンションへ置き去りにして帰ったんだろう! 君は、本当にまだ子供だ! 自分のやった事の責任も、結果も、全て負うその覚悟もない、下らない能書きを垂れるガキだ!! 」
九条はそう断言すると、未だ真意の見えない正嘉をキッと睨む。
「君の言い分は余りにも自分勝手で、見苦しいだけだ。もう四の五の言わないで、大人しくサインをする事だな! 」
バンっとテーブルを叩き、九条は命令する。
だが、やはりどうした事か、正嘉は動じない。
彼は顔色も変えずに、次にとんでもない事を言いだした。
「責任? 結果? 貴様は何を言っている? オレはこの下らない総会が終わったら、奏の元へ再び出向いて、今度こそ青柳の別邸へ連れて行くつもりだ。何といっても、運命の番だからな」
「な……に? 」
「番なのだから、娶るのは当たり前だろう? そのまま連れ帰ろうかと思ったが、うわ言に『研究』『試薬』と繰り返されては、直ぐに連れて行く訳にもいくまい。何か余程の要件なのだろうと、オレなりに昨夜は遠慮したんだ」
「――――つまり、君は……」
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