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「――青柳正嘉くん。君の番は、こちらの棟で滞在している。これからそこへ案内するが、くれぐれも乱暴はしないように。あくまで、丁重にな」
九条の言葉に、正嘉は傲然と頷いた。
「それは勿論だ。オレとしても、他家で無法な行いなどしたくはないからな」
そう言い、正嘉が軽く片手を振ると、控えていたらしい青柳の家人二名が音もなく現われた。どうやら、もしも奏が抗おうとしたら、問答無用で連れて行こうという事らしい。
たった今『乱暴はしないように』とクギを刺したばかりなのに、人の話を聞いていないのか?
さすがに不快な気分になり、九条は眉を顰め――――そして当然だが、七海は激昂した。
「お前! 奏をこれ以上苦しめるようなら、オレは許さないぞ!! 」
しかし、これが悪かった。
急激にアドレナリンが上昇したせいか、次の瞬間、七海は真っ青になってガクリと俯いてしまった。どうしようもなく、目の前が暗くなる。
(まずい……意識が……)
息も不規則になり、抗いきれぬ激しい眩暈が頭脳を襲う。
「う……」
低く呻き、動きを止めた七海へ、九条は慌てて駆け寄った。
「七海! 」
「――だいじょう、ぶ……す、こし――おちつけ、ば……」
だが、蒼白の顔色は誤魔化しきれない。
九条はメイドへ向かって、直ぐに七海を医務室へ連れて行くように指図すると同時に、ドクターを呼び出すよう急いで手配をした。
その間、九条は正嘉ヘの対応までは手が回らなくなってしまう。
仕方なしに、正嘉一行にはしばらくの間、応接室へ移ってもらおうと指示を出す。
「正嘉くん、申し訳ないが少し落ち着くまで待っていてくれ――誰かっ! 案内を!!」
「はい旦那さま。では、こちらへどうぞ」
「ふん」
――――だからといって、言われるままに気を利かせて大人しく別室に控えているような、正嘉はそんな男ではなかった。
「それではオレは勝手に動かせてもらうぞ」
――――先程のベータが『AOYANAGI・realtor』へ向かっているのは間違いないだろう。あまり向こうを待たせるのも可哀想というものだ。
「さっさと番を回収して、この屋敷を退出させてもらう」
正嘉はそう言い捨てると、メイドの案内を振り切って、配下の男達を伴い奏の滞在している棟へと足を踏み入れた。
だが当然、離れた場所にいた奏はその騒ぎを知らない。
しかし、突如部屋へと現れた正嘉を見た奏は、取り乱す事無く言い放った。
強張った顔で、冷たい声で。
「――――あなたを見損ないました。まさか、僕の番に向かって……悪びれもせずに堂々と『番の上書き』をしたなんて、そんな恥知らずな事を言うなんて――最低です」
まさか、出会い頭にそんな事を言われるとは思っていなかった。
だが正嘉は、決して自分が間違っているとも思っていないので、凍り付いた視線のまま自分を睨み付ける奏に対し、同じように冷たい言葉を掛ける。
「オレは本当の事を言っただけだ。ベータの連中がどう取ろうと事実は変わらない」
いずれにせよ、ケジメとして、馬淵には行動する義務がある。
どれだけ屈辱を感じようがプライドが傷付こうが、頭を下げて頼まなければならない筈だ。
――――それが、奏ではなく会社を選んだ代償なのだから。
「……それでは、お前をこれから青柳へ連れて行く」
こうして、奏の身柄は、青柳へと移される事になってしまったのだった。
◇
体調が悪いのは、どうも治らないようだ。
その原因は、やはり妊娠初期の所為なのであろうか?
九条の言葉に、正嘉は傲然と頷いた。
「それは勿論だ。オレとしても、他家で無法な行いなどしたくはないからな」
そう言い、正嘉が軽く片手を振ると、控えていたらしい青柳の家人二名が音もなく現われた。どうやら、もしも奏が抗おうとしたら、問答無用で連れて行こうという事らしい。
たった今『乱暴はしないように』とクギを刺したばかりなのに、人の話を聞いていないのか?
さすがに不快な気分になり、九条は眉を顰め――――そして当然だが、七海は激昂した。
「お前! 奏をこれ以上苦しめるようなら、オレは許さないぞ!! 」
しかし、これが悪かった。
急激にアドレナリンが上昇したせいか、次の瞬間、七海は真っ青になってガクリと俯いてしまった。どうしようもなく、目の前が暗くなる。
(まずい……意識が……)
息も不規則になり、抗いきれぬ激しい眩暈が頭脳を襲う。
「う……」
低く呻き、動きを止めた七海へ、九条は慌てて駆け寄った。
「七海! 」
「――だいじょう、ぶ……す、こし――おちつけ、ば……」
だが、蒼白の顔色は誤魔化しきれない。
九条はメイドへ向かって、直ぐに七海を医務室へ連れて行くように指図すると同時に、ドクターを呼び出すよう急いで手配をした。
その間、九条は正嘉ヘの対応までは手が回らなくなってしまう。
仕方なしに、正嘉一行にはしばらくの間、応接室へ移ってもらおうと指示を出す。
「正嘉くん、申し訳ないが少し落ち着くまで待っていてくれ――誰かっ! 案内を!!」
「はい旦那さま。では、こちらへどうぞ」
「ふん」
――――だからといって、言われるままに気を利かせて大人しく別室に控えているような、正嘉はそんな男ではなかった。
「それではオレは勝手に動かせてもらうぞ」
――――先程のベータが『AOYANAGI・realtor』へ向かっているのは間違いないだろう。あまり向こうを待たせるのも可哀想というものだ。
「さっさと番を回収して、この屋敷を退出させてもらう」
正嘉はそう言い捨てると、メイドの案内を振り切って、配下の男達を伴い奏の滞在している棟へと足を踏み入れた。
だが当然、離れた場所にいた奏はその騒ぎを知らない。
しかし、突如部屋へと現れた正嘉を見た奏は、取り乱す事無く言い放った。
強張った顔で、冷たい声で。
「――――あなたを見損ないました。まさか、僕の番に向かって……悪びれもせずに堂々と『番の上書き』をしたなんて、そんな恥知らずな事を言うなんて――最低です」
まさか、出会い頭にそんな事を言われるとは思っていなかった。
だが正嘉は、決して自分が間違っているとも思っていないので、凍り付いた視線のまま自分を睨み付ける奏に対し、同じように冷たい言葉を掛ける。
「オレは本当の事を言っただけだ。ベータの連中がどう取ろうと事実は変わらない」
いずれにせよ、ケジメとして、馬淵には行動する義務がある。
どれだけ屈辱を感じようがプライドが傷付こうが、頭を下げて頼まなければならない筈だ。
――――それが、奏ではなく会社を選んだ代償なのだから。
「……それでは、お前をこれから青柳へ連れて行く」
こうして、奏の身柄は、青柳へと移される事になってしまったのだった。
◇
体調が悪いのは、どうも治らないようだ。
その原因は、やはり妊娠初期の所為なのであろうか?
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