色衰愛弛

亜衣藍

文字の大きさ
22 / 77
4

4-4

しおりを挟む
 佐々木の指摘はやはり図星だったのか、一藻はますます渋い顔をした。
 その隣で、一藻の同僚らしき男は「この人物はいったい何者なんですか」と、困惑した様子で囁く。

「どうやら一藻さんとお知り合いのようですが、一般人に捜査内容を知らせるのはマズいですよ」
「そんなことは判っている」

 苛立った様子でそう吐き捨てると、一藻は佐々木に向き直った。

「綾瀬は何処だ?」
「所長ですか? ここにはいませんよ」
「お前たちの目的は、道前淳史の動向か?」

 どこか鎌をかけるようなニュアンスを敏感に感じ取り、佐々木は一瞬戸惑う。

(道前淳史だけって、どういうことだ? 確かにオレは、所長の指示で道前の所に出入りする人物だけを監視するよう言われて来たけど。でも、この人達は……)

 一藻は、マトリだ。
 ならば、当然麻薬に関する事件で動いていることになる。

(ビルの前で言い合っていた外人たちも、ドラッグのトラブルで揉めていたようだったな。だったら、リベンジポルノなんて、この人達には全然関係のない話になる訳だ)

 少し考えると、今度は佐々木の方から鎌をかけてみる事にした。

「……姉帯茂音」

 ポツリとその名前を呟くと、一藻たちの空気がピンと張り詰めたのを感じた。
 どうやらこれは、当たりのようだ。

「一藻さん達も、姉帯茂音の行方を捜しているんですか?」
「なぜお前は、その名を知ってるんだ!? 姉帯茂音の居場所を知っているのか?」

 綾瀬は、心当たりがあると言っていたが。
 だが佐々木は、一藻にそんな重大ヒントを与えるつもりはないので、ゆっくりと首を振った。

「いいえ、オレ達も捜している状況なんですよ。ここに来たのは、姉帯の行方を捜してほしいと依頼してきたのが道前淳史だったからです。でも、捜索が難航してて。もしかしたら灯台下暗しの可能性もあるからと、所長の指示でこっちに来たんですよ」

 嘘と事実を混ぜ込んで、佐々木はそう告げた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

神楽囃子の夜

紫音みけ🐾書籍発売中
ライト文芸
※第6回ライト文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。 【あらすじ】  地元の夏祭りを訪れていた少年・狭野笙悟(さのしょうご)は、そこで見かけた幽霊の少女に一目惚れしてしまう。彼女が現れるのは年に一度、祭りの夜だけであり、その姿を見ることができるのは狭野ただ一人だけだった。  年を重ねるごとに想いを募らせていく狭野は、やがて彼女に秘められた意外な真実にたどり着く……。  四人の男女の半生を描く、時を越えた現代ファンタジー。  

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

織田信長 -尾州払暁-

藪から犬
歴史・時代
織田信長は、戦国の世における天下統一の先駆者として一般に強くイメージされますが、当然ながら、生まれついてそうであるわけはありません。 守護代・織田大和守家の家来(傍流)である弾正忠家の家督を継承してから、およそ14年間を尾張(現・愛知県西部)の平定に費やしています。そして、そのほとんどが一族間での骨肉の争いであり、一歩踏み外せば死に直結するような、四面楚歌の道のりでした。 織田信長という人間を考えるとき、この彼の青春時代というのは非常に色濃く映ります。 そこで、本作では、天文16年(1547年)~永禄3年(1560年)までの13年間の織田信長の足跡を小説としてじっくりとなぞってみようと思いたった次第です。 毎週の月曜日00:00に次話公開を目指しています。 スローペースの拙稿ではありますが、お付き合いいただければ嬉しいです。 (2022.04.04) ※信長公記を下地としていますが諸出来事の年次比定を含め随所に著者の創作および定説ではない解釈等がありますのでご承知置きください。 ※アルファポリスの仕様上、「HOTランキング用ジャンル選択」欄を「男性向け」に設定していますが、区別する意図はとくにありません。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

【完結】幼馴染に裏切られたので協力者を得て復讐(イチャイチャ)しています。

猫都299
青春
坂上明には小学校から高校二年になった現在まで密かに片想いしていた人がいる。幼馴染の岸谷聡だ。親友の内巻晴菜とはそんな事も話せるくらい仲がよかった。そう思っていた。 ある日知った聡と晴菜の関係。 これは明が過去に募らせてしまった愚かなる純愛へ一矢報いる為、協力者と裏切り返す復讐(イチャイチャ)の物語である。 ※2024年8月10日に完結しました! 応援ありがとうございました!(2024.8.10追記) ※小説家になろう、カクヨム、Nolaノベルにも投稿しています。 ※主人公は常識的によくない事をしようとしていますので気になる方は読まずにブラウザバックをお願い致します。 ※「キスの練習相手は〜」「幼馴染に裏切られたので〜」「ダブルラヴァーズ〜」「やり直しの人生では〜」等は同じ地方都市が舞台です。関連した人物も、たまに登場します。(2024.12.2追記) ※番外編追加中・更新は不定期です。(2025.1.30追記)←番外編も完結しました!(2025.9.11追記) ※【修正版】をベリーズカフェに投稿しています。Nolaノベルでは全話限定公開・修正中です。(2025.10.29追記)

25年目の真実

yuzu
ミステリー
結婚して25年。娘1人、夫婦2人の3人家族で幸せ……の筈だった。 明かされた真実に戸惑いながらも、愛を取り戻す夫婦の話。

滝川家の人びと

卯花月影
歴史・時代
勝利のために走るのではない。 生きるために走る者は、 傷を負いながらも、歩みを止めない。 戦国という時代の只中で、 彼らは何を失い、 走り続けたのか。 滝川一益と、その郎党。 これは、勝者の物語ではない。 生き延びた者たちの記録である。

神様がくれた時間―余命半年のボクと記憶喪失のキミの話―

コハラ
ライト文芸
余命半年の夫と記憶喪失の妻のラブストーリー! 愛妻の推しと同じ病にかかった夫は余命半年を告げられる。妻を悲しませたくなく病気を打ち明けられなかったが、病気のことが妻にバレ、妻は家を飛び出す。そして妻は駅の階段から転落し、病院で目覚めると、夫のことを全て忘れていた。妻に悲しい思いをさせたくない夫は妻との離婚を決意し、妻が入院している間に、自分の痕跡を消し出て行くのだった。一ヶ月後、千葉県の海辺の町で生活を始めた夫は妻と遭遇する。なぜか妻はカフェ店員になっていた。はたして二人の運命は? ―――――――― ※第8回ほっこりじんわり大賞奨励賞ありがとうございました!

処理中です...