所沢朝日の恋愛譚は不完全すぎて

亜衣藍

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 恭介はそう言うと、疑わしい目でジッと朝日を見遣る。
 そして朝日の方は、実際に口から出まかせを言っている手前、どうしてもオドオドと挙動不審になってしまう。

(マズイ! どうにかして誤魔化さないと……)

 泳いでしまいそうになる目を努力して一転に定め、朝日は真面目な顔を作りキリリと向き直った。

「僕の言う事を信じるか信じないは自由だけど、宇野さんの事は心に留めておいてほしい。恭介はイケメンだし、そのままでも充分モテるんだから自信を持っていいと思うよ。そうだ、例えばこれとか」

 手元にあったファイルホルダーから二重丸の付いたファイルを取り出し、朝日はそれを恭介へ差し出す。

「来月の婚活パーティー用のマル秘名簿だけど、これは全員が年収2000万以上の面子なんだってよ。なんと、参加費も通常料金に加えて+50万円っていうトクアン。社員が会員より先にこれを閲覧できるのは特権かな」

「俺は別に金なんて……」

「医者に官僚にIT社長と様々だ。ほら、この創業家の御曹司とかも恭介には合っていると思うよ。アドレスも載っているし、いっそのこと逆玉狙ってもいいんじゃない?」

「……」

「僕等、それぞれ担当を受け持つことになったじゃないか。この人とか、こっちとか……まだ担当が付いてないようだし、先輩に自分を売り込んで担当にしてもらえばいいよ。で、親身になって相談に乗って、あわよくばそのまま付き合えば? 社員は本当ならダメなんだけど、上にバレないように僕も協力するからさ」

「やっぱり怪しいな」

 恭介は腕を組みながら、鋭い目で朝日を睨む。

「コンプライアンス違反を勧めるなんて、朝日らしくない」
「そ、そんな事は~」
「いいや、怪しい」

 断言する恭介だが、これ以上朝日を問い詰める気も無いのか、あっさりと引いた。

「まぁ、別にお前に興味は無いからどうでもいいけど」
「あ、そぉ……」
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