MAN OF THE FULL BLOOM

プロローグ

プロローグ-2

　城嶋晁生の芸能事務所『城嶋エンタープライズ』は、薄利多売のアイドルグループ運営を軸にしていただけに、ドル箱だったライブ収益が0になった事で大きなダメージを負った。

　対して、聖が率いる『ジュピタープロダクション』は、多くの俳優を抱える芸能事務所であるワケだが。

　損益という面では城嶋エンタープライズ程ではないが、やはり舞台公演が二年ストップした事によるダメージはそれなりに大きかった。

　だが、それを上手い具合に支えてくれたのが、畠山ユウを含むアーティストの音楽配信事業だった。
　なので、ジュピタープロダクションは城嶋エンタープライズのように資産整理までしなければならないような窮地は回避できたが、せっかく進出しようとしていたモデル事業の方は撤退を余儀なくされた。

　それだけ、今のエンタメ業界には体力が残っていない。

　今年に入り、ようやく世界中を覆っていた新型感染症は収まって来たが、直ぐに挽回となるにはどこも傷が深かった。

　そんな折、同業の城嶋晁生から誘いが来た。

『皆を助けると思って、少し付き合ってほしい』

　その内容は、この豪華客船に乗船して、気前よく投資してくれる新たなパトロンを見つけようというものだった。

（話を聞いた時は、何をバカな事をと思ったが。どこの金持ちも新型感染症の所為で遣い切れなかった資産を持て余しているから、いっその事プレゼンという形で競わせて、気に入った者へご褒美として投資してやろうという話が本当になるとは。いかにも悪趣味な金持ちが考えそうなことだが……）

　だが、悔しいが実に魅力的な話ではある。
　隠れて愛人に貢ぐ訳では無く、会社へ正式に投資するのだ。
　その額は、数億万ドルに達する可能性だってある。

「ボクが、我々の事業に投資に前向きな人物を選定して、君がプレゼンする。互いに得意分野で動くんだ、絶対に上手く行く。エンタメ業界こそ投資するべきだと唆すんだ」