路傍の石

亜衣藍

文字の大きさ
29 / 40
4

4-1

しおりを挟む

 蔵は闇に紛れながら、ランのアパートまで戻っていた。

 物陰に身を潜めながら目線を走らせると、明らかにカタギではなさそうな風体の男たちが、路上でたむろしているのが目に入った。
 耳を澄ませると「あの野郎、戻ってきたら仕置きだな」「ホストの方は何て言ってんだ」「面倒くせぇから纏めて売っちまえばいーんだよ」と、何とも物騒な事を言っているのが分かる。

 どうやら男達は、どこにも行く当てのないランが、その内ここに戻ってくると踏んでいるようだ。

(あんなに痛めつけた相手が、のうのうとアパートに戻って来るワケがねぇだろうが。あいつらバカか)

 そうは思うが、きっと今まで何度もこういう事はあったのだろう。

 嫌がって泣いて逃げて。
 でも、逃げる先のないランは、トボトボとこの魔窟へ戻って来たのだろう。

(あいつら……)

 その時のランの絶望を考えると、怒りで頭が爆発しそうになる。
 今すぐ飛び出して行って、この拳を男どもへ叩き込んでやりたくなる。

――――だが、まだ早い。

(顔の右半分に髑髏の刺青、か……。三宮は、あそこにはいないようだな)

 三宮に叩き込むのは拳ではない。
 確実に命を奪えるよう、ナイフを心臓めがけて突き立てるつもりだ。
 蔵は、ここに来る途中で買った折り畳みナイフをグッと握ると、ひとまず尻ポケットへ入れなおした。
 そうして、できるだけ人好きするような笑顔を作ると、暗闇からスッと立ち上がる。

「ども、ご苦労さんです」

 突然見知らぬ青年に声を掛けられ、男たちは訝しむように目をすがめた。

「何だ、お前?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

Take On Me 2

マン太
BL
 大和と岳。二人の新たな生活が始まった三月末。新たな出会いもあり、色々ありながらも、賑やかな日々が過ぎていく。  そんな岳の元に、一本の電話が。それは、昔世話になったヤクザの古山からの呼び出しの電話だった。  岳は仕方なく会うことにするが…。 ※絡みの表現は控え目です。 ※「エブリスタ」、「小説家になろう」にも投稿しています。

ナラズモノ

亜衣藍
BL
愛されるより、愛したい……そんな男の物語。 (※過激表現アリとなっております。苦手な方はご注意ください) 芸能界事務所の社長にして、ヤクザの愛人のような生活を送る聖。 そんな彼には、密かな夢があった――――。 【ワルモノ】から十年。27歳の青年となった御堂聖の物語です。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

仮面の王子と優雅な従者

emanon
BL
国土は小さいながらも豊かな国、ライデン王国。 平和なこの国の第一王子は、人前に出る時は必ず仮面を付けている。 おまけに病弱で無能、醜男と専らの噂だ。 しかしそれは世を忍ぶ仮の姿だった──。 これは仮面の王子とその従者が暗躍する物語。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

今日くらい泣けばいい。

亜衣藍
BL
ファッション部からBL編集部に転属された尾上は、因縁の男の担当編集になってしまう!お仕事がテーマのBLです☆('ω')☆

処理中です...