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しおりを挟む蔵は闇に紛れながら、ランのアパートまで戻っていた。
物陰に身を潜めながら目線を走らせると、明らかにカタギではなさそうな風体の男たちが、路上で屯しているのが目に入った。
耳を澄ませると「あの野郎、戻ってきたら仕置きだな」「ホストの方は何て言ってんだ」「面倒くせぇから纏めて売っちまえばいーんだよ」と、何とも物騒な事を言っているのが分かる。
どうやら男達は、どこにも行く当てのないランが、その内ここに戻ってくると踏んでいるようだ。
(あんなに痛めつけた相手が、のうのうとアパートに戻って来るワケがねぇだろうが。あいつらバカか)
そうは思うが、きっと今まで何度もこういう事はあったのだろう。
嫌がって泣いて逃げて。
でも、逃げる先のないランは、トボトボとこの魔窟へ戻って来たのだろう。
(あいつら……)
その時のランの絶望を考えると、怒りで頭が爆発しそうになる。
今すぐ飛び出して行って、この拳を男どもへ叩き込んでやりたくなる。
――――だが、まだ早い。
(顔の右半分に髑髏の刺青、か……。三宮は、あそこにはいないようだな)
三宮に叩き込むのは拳ではない。
確実に命を奪えるよう、ナイフを心臓めがけて突き立てるつもりだ。
蔵は、ここに来る途中で買った折り畳みナイフをグッと握ると、ひとまず尻ポケットへ入れなおした。
そうして、できるだけ人好きするような笑顔を作ると、暗闇からスッと立ち上がる。
「ども、ご苦労さんです」
突然見知らぬ青年に声を掛けられ、男たちは訝しむように目を眇めた。
「何だ、お前?」
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