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年の差ブルドッグ
「ぶさねこ」という名の喫茶店
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喫茶店「ぶさねこ」
僕がアルバイトをしている下町の喫茶店です。
平成元年(1989年)
僕は中学卒業後、家庭が貧しいこともあり働きながら定時制の高校に通っていましたが勤務していた職場の労働環境や雰囲気に馴染めず、僅か1年で退職したのが16歳。
僕が高校近くにある喫茶店の前を通り合わせた時、たまたま見つけたアルバイト募集の張り紙…
何も考えず飛び込んだのが「ぶさねこ」でした。
オーナー兼女性店長の高山さんは60歳で
「年より若く見られるの」
が口ぐせですが、僕にはそのまま還暦に見えます。
どう見ても60歳です!
面接でお会いしたときの第一印象は
「キツそうだなぁ…」
でした。
性格がとにかくキツそうに見える、そんな店長の表情に尻込みしてしまい
「働かせてください」
と時間を割いてもらっているのに
「やっぱりやめます」
とも言えず、自分の欠点を話しました。
客商売は未経験で接客は苦手、定時制高校に通っているので時間の制約もある等…
「この仕事向いてないね」
店長のほうから諦めてもらうのに、必死で語りました。
が返事は意外にも
「いつから来れる?」
飛び込みでお邪魔した履歴書もない僕にあっさりと言います。
「え?えっと、あ…いつでも…」
そんな流れで翌日にはもう出勤することに…
一緒に働いてみると第一印象とは真逆で、面倒見のいい親切なおばさんです。
そしてもう一人、大先輩の麻里さん36歳。
結婚して中学生の子供が2人います。
とにかく陽気でおしゃべり大好き…
店長と話し出すと止まらないこともしばしばで、常連さんからは
「麻里ちゃん」
と呼ばれています。
口は悪いけど頼れる姉さん。
そんな「ぶさねこ」での時給は600円…
これが高いのか安いのか、僕にはイマイチわかりません。
「ナオ君、いくつだっけ?」
店長に聞かれて、答えようとする僕を遮って
「16よ!じゅうろく!」
横から麻里さんが割って入りました。
「うちの子とたいして変わらないんだから…」
「えっ?てことはさ…こんな孫が私にいてもおかしくないよね?」
稀にお客さんが居なくなる時間もあり、そんな店内では2人の止まらないおしゃべりが続きます。
会話の流れで
「売上げが増えればあんた達の時給も上げられるんだけどね…」
店長が申し訳なさそうに囁きました。
バブル崩壊の足音がヒタヒタと近づく中、社会も経済にもまったく知識のない16歳の少年には実感も恩恵もありませんが、それでもまだニュースで国中が浮かれていたのは知っています。
しかし下町の小さな喫茶店、客層を含めたこの空間だけはそんなバブルに取り残されたような閑寂な佇まいで、裕福そうなお客さんが来店すると
「あの人、お金持ってそう」
「バブルの波に乗りまくったんじゃない?」
ゴシップ大好き店長と麻里さんの会話が始まります。
僕といえば、表向きは質素なフリして裏ではお客さんそれぞれがヒーローだったり凶悪犯だったり…
人間観察をしながら思いを巡らす健全な16歳でした。
そしてそんな僕にも裏の一面はあります。
40歳も年の離れた恵子さんとの不潔な主従関係は
「口外するな」
と、固く口止めされている2人だけの秘密です。
「なんかなーい?売上げを伸ばす方法…」
店長が呟きます。
「若くてかわいい娘、雇ったらどうですか?」
なんとなく麻里さんの方を見ながら言うと
「それ目当てで客が増える…ってか?いや!なんで私見んのよ!失礼な奴だねぇ」
「まぁまぁ、麻里ちゃん…お母さんみたいなもんだから」
店長がなだめますが余計、刺激してしまったようで
「そうだ!あんた女装しなよ?かわいい顔してるし…ニューハーフとか流行ってんじゃん」
「こらこら、ウチはそういう店じゃないんだよ」
何気ないおしゃべりで日が暮れると、僕は定時制高校に通い平穏な一日が終わります。
真っ昼間から酒に酔ったお客が店内で大騒ぎし、屈強な常連さん達にねじ伏せてもらったり、ごく稀に無銭飲食のお客もいたりと慌ただしい時間を過ごすことも…
そして2ヶ月に一度という距離感の中で恵子さんと、日常から離れた快楽に溺れる…
1990年4月からアルバイトを始めた「ぶさねこ」での1年はあっという間に過ぎ、僕は17歳になりました。
しかし、音も無く忍び寄る性の刺客…
恵子さんが送り込んだそんな女性の存在を僕はまだ知る由もなく、代わり映えのしない生活が続きます。
僕がアルバイトをしている下町の喫茶店です。
平成元年(1989年)
僕は中学卒業後、家庭が貧しいこともあり働きながら定時制の高校に通っていましたが勤務していた職場の労働環境や雰囲気に馴染めず、僅か1年で退職したのが16歳。
僕が高校近くにある喫茶店の前を通り合わせた時、たまたま見つけたアルバイト募集の張り紙…
何も考えず飛び込んだのが「ぶさねこ」でした。
オーナー兼女性店長の高山さんは60歳で
「年より若く見られるの」
が口ぐせですが、僕にはそのまま還暦に見えます。
どう見ても60歳です!
面接でお会いしたときの第一印象は
「キツそうだなぁ…」
でした。
性格がとにかくキツそうに見える、そんな店長の表情に尻込みしてしまい
「働かせてください」
と時間を割いてもらっているのに
「やっぱりやめます」
とも言えず、自分の欠点を話しました。
客商売は未経験で接客は苦手、定時制高校に通っているので時間の制約もある等…
「この仕事向いてないね」
店長のほうから諦めてもらうのに、必死で語りました。
が返事は意外にも
「いつから来れる?」
飛び込みでお邪魔した履歴書もない僕にあっさりと言います。
「え?えっと、あ…いつでも…」
そんな流れで翌日にはもう出勤することに…
一緒に働いてみると第一印象とは真逆で、面倒見のいい親切なおばさんです。
そしてもう一人、大先輩の麻里さん36歳。
結婚して中学生の子供が2人います。
とにかく陽気でおしゃべり大好き…
店長と話し出すと止まらないこともしばしばで、常連さんからは
「麻里ちゃん」
と呼ばれています。
口は悪いけど頼れる姉さん。
そんな「ぶさねこ」での時給は600円…
これが高いのか安いのか、僕にはイマイチわかりません。
「ナオ君、いくつだっけ?」
店長に聞かれて、答えようとする僕を遮って
「16よ!じゅうろく!」
横から麻里さんが割って入りました。
「うちの子とたいして変わらないんだから…」
「えっ?てことはさ…こんな孫が私にいてもおかしくないよね?」
稀にお客さんが居なくなる時間もあり、そんな店内では2人の止まらないおしゃべりが続きます。
会話の流れで
「売上げが増えればあんた達の時給も上げられるんだけどね…」
店長が申し訳なさそうに囁きました。
バブル崩壊の足音がヒタヒタと近づく中、社会も経済にもまったく知識のない16歳の少年には実感も恩恵もありませんが、それでもまだニュースで国中が浮かれていたのは知っています。
しかし下町の小さな喫茶店、客層を含めたこの空間だけはそんなバブルに取り残されたような閑寂な佇まいで、裕福そうなお客さんが来店すると
「あの人、お金持ってそう」
「バブルの波に乗りまくったんじゃない?」
ゴシップ大好き店長と麻里さんの会話が始まります。
僕といえば、表向きは質素なフリして裏ではお客さんそれぞれがヒーローだったり凶悪犯だったり…
人間観察をしながら思いを巡らす健全な16歳でした。
そしてそんな僕にも裏の一面はあります。
40歳も年の離れた恵子さんとの不潔な主従関係は
「口外するな」
と、固く口止めされている2人だけの秘密です。
「なんかなーい?売上げを伸ばす方法…」
店長が呟きます。
「若くてかわいい娘、雇ったらどうですか?」
なんとなく麻里さんの方を見ながら言うと
「それ目当てで客が増える…ってか?いや!なんで私見んのよ!失礼な奴だねぇ」
「まぁまぁ、麻里ちゃん…お母さんみたいなもんだから」
店長がなだめますが余計、刺激してしまったようで
「そうだ!あんた女装しなよ?かわいい顔してるし…ニューハーフとか流行ってんじゃん」
「こらこら、ウチはそういう店じゃないんだよ」
何気ないおしゃべりで日が暮れると、僕は定時制高校に通い平穏な一日が終わります。
真っ昼間から酒に酔ったお客が店内で大騒ぎし、屈強な常連さん達にねじ伏せてもらったり、ごく稀に無銭飲食のお客もいたりと慌ただしい時間を過ごすことも…
そして2ヶ月に一度という距離感の中で恵子さんと、日常から離れた快楽に溺れる…
1990年4月からアルバイトを始めた「ぶさねこ」での1年はあっという間に過ぎ、僕は17歳になりました。
しかし、音も無く忍び寄る性の刺客…
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