ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜

柴咲心桜

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第1章 死神編

第8話 《死神》とダンジョン

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「先輩!」

    昼を過ぎ、ギルドのカウンターで書類整理に追われていたサティ・フライデーは、背後からかけられた声に顔を上げた。

「どうしたの? ルリ」

    呼びかけてきたのは後輩の受付嬢、ルリ・クレイン。明るくて素直な彼女は、サティにとっても数少ない信頼できる仲間だった。

「どうやら、また新しいダンジョンが出現したらしいんですよ!」

「また!?」
    サティは思わず頭に手を当ててため息をつく。
「ついこの間、ひとつ攻略されたばかりじゃない。なのに、また新しく発見されるなんて……」

「出来たものは仕方ないじゃないですか。文句言っても始まりませんよ」

「それはそうだけど……」

   まだ残っていた書類に手を伸ばしかけた時、ルリがさらに声を潜めて続けた。

「先輩、聞きましたか?」

「何を?」

   その瞬間、背筋に嫌な冷気が走る。
   サティの勘が告げていた。これは“ただの世間話”ではない。

「ギルドが冒険者《死神》の捜索に本格的に動き出したって」

「……なんだ、そんなこと……」
   思わず反射的に笑ってしまいそうになったが、言葉の途中で凍りついた。

――今、なんて言った?
 《死神》って……言ったよね?

「先輩? どうかしましたか?」

    ルリが心配そうにサティを覗き込む。

「大丈夫よ。なんでもないわ。心配しないで」

   笑って返しながら、内心は嵐のように騒いでいた。

(……ギルドが本格的に動いたってことは、私を捕まえる気ね)

    サティ・フライデー。受付嬢でありながら、その正体はギルドが追う伝説級の存在《死神》。
彼女はため息混じりに、静かに決意する。

(なら、そのダンジョン――先に片付けておくしかないわね)

* * *

   一方その頃、新たに発見されたダンジョンの最深部へと向かっていたのは、ギルド所属のAランクパーティ《白金の盾》のジェイルと、《黄金の剣》のリーダー・ガイだった。

「で、どうやって確保するんだ?」
   ガイが問うと、前を歩いていたジェイルが振り返る。

「相手は《死神》だ。油断は命取りになる」

「油断なんてしてないさ。ただ、アレは……人間じゃねぇよ。バケモンだ」

「簡単に捕らえられるとは思っていない。だが……」

   ジェイルが足を止めた。

「待て。モンスターだ」

   ダンジョンの通路を塞ぐように現れたのは、巨大なゴーレムだった。
   武装を構える間もなく、ジェイルはその足元に素早く滑り込み、一撃で魔核を砕き崩れさせる。

「……やっぱりお前、強いな」

「君もな」
   短い言葉の応酬の後、通路奥に石造りの扉が現れる。

「ボスのお出ましか?」

   やる気をみなぎらせたガイが剣を握るが、ジェイルは首を横に振った。

「やる気満々のところ悪いが……倒すのは俺たちじゃない」

「は? じゃあ誰が───」

「お前、俺たちがここに来た目的を忘れたのか?」

「……《死神》を捕まえること、だろ?」

「ああ。だからこのダンジョンのボスと戦わせて、体力を削ったところを確保する。……本当は、こんな手段は使いたくなかったんだがな」

   ガイはしばらく沈黙していたが、やがて頷いた。

「……分かった。最初は話し合い、それでも駄目なら」

「その時は、力尽くで止める」

    準備は整った。あとは、彼女──サティ・フライデーの登場を待つのみ。

   ギルド全体が仕掛けた包囲網が、今、音もなく動き出していた。
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