ギルド嬢の大罪無双〜平凡な受付嬢は禁断の力で世界を駆ける〜

柴咲心桜

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第4章 パレード編

第32話 死神の導き、来訪者たち

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パレードの開催が近づき、王国全体が浮き足立つ中。
    サティ・フライデーは、静かに準備を整えていた。

     ハイドからの召集から数日。
     ついに《剣聖》と《聖女》を迎える時が来た。

「さて、そろそろ転移するか」
    サティは腰に手を当てて、小さく息をつく。集合場所は国境。《剣聖》の到着予定地点だ。

    王都の空気を後にし、魔法陣を描いて一言───「転移」。

    眩い光の中、彼女はクラウン王国の外れ、国境近くの小道に立っていた。草木のざわめきが耳に心地良い。

「さて、そろそろ来るかな……」

    しばし待つと、遠くから馬車の車輪音が近づいてくる。風に巻かれた砂埃とともに、一台の馬車が静かに止まった。

「あなたが《死神》ですか?」
馬車から降りた護衛の騎士が尋ねる。

「はい。そうです」
(……やっぱり、他の国の人にも“死神”って呼ばれてるのね)

    馬車の扉が開き、中から銀髪の騎士服の少女が姿を現す。

「《剣聖》のフィーネ・カステンです。よろしくお願いします」
     気品を帯びた立ち姿と、引き締まった眼差し。

「サティ・フライデーです。こちらこそ、よろしくお願いします」

     護衛の者に軽く一礼し、サティは続けた。

「それでは、フィーネ様。次は《聖女》を迎えに行きましょう」

「はい、お願いします」

    サティはフィーネの手をそっと握り、魔力を流し込む。

「───転移」

    次の瞬間、2人はパルナコルア信仰国との国境付近に移動していた。

「……あっという間に着いたね」

「『転移』したからね」
     サティが肩をすくめると、フィーネは微笑んだ。

      そこへ、再び馬車が姿を現す。

「あなたが《剣聖》様ですね?」
    車内から、ふわりと金色の髪を揺らす少女が顔をのぞかせた。
     白を基調とした法衣と、穏やかで神聖な微笑み。

「そうだけど、君は?」

「申し遅れました。私は《聖女》、ルア・シエンと申します」

「君が……!」
    フィーネが目を見開く。聖女というより、どこか普通の少女のような柔らかさ。

「そして、そちらの方は?」

「クラウン王国からお二人をご案内する者です。よろしくお願いします」
     サティは穏やかに応じる。

     だが、フィーネがいたずらっぽく聞いた。

「なあサティ、ルアには“あの二つ名”言わないの?」

「物騒な名を知ってるのは少ない方がいいから」

「でも、私……知っていますよ。あなたが《死神》だって」

「……ルアは、どうして?」

「クラウン王国の《死神》。あなたの噂は他国にも届いています。実際にお会いできるなんて光栄です」

(……この分だと、知らない国の方が少なそうね)

     と、サティは内心ため息をついた。

「さて、そろそろ移動しましょう。今日は私の領地・ルメリアに泊まってもらいます。明日、王都へ向かうから」

    近くの馬車を借り、三人はルメリアへと向かう。


「ここが……あなたの領地?」

    到着後、馬車の扉を開けたフィーネとルアは、街の景色を眺めてしばし沈黙した。

    整備途中の石畳、立ち並ぶ建設中の建物、所々に残る崩れかけの塀。

「綺麗に片付いてなくてごめんね。叙爵されたばかりだから、まだ整備も行き届いてないの。今、住民たちと協力して良い街にしようとしているところだから」

    サティが少し気恥ずかしそうに言うと、ルアが首を振った。

「いえ。理想を目指して進んでいる街には、何よりも価値があります」

「完成したら、また招待してくださいね」

「私も行くよ!」
    フィーネもすぐに続いた。

    サティは頷いて、にこりと笑った。

「もちろん。あの時よりももっと素敵になったルメリアに、2人を招待するわ。その時は、招待状をちゃんと届けるから」

    その夜、《剣聖》と《聖女》はサティの領地に滞在し、静かに、そして少しだけ騒がしく、旅の疲れを癒していった。

    それが、後の大事件の幕開けになるとは、この時のサティはまだ知らない───。
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