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第5章 王城占拠編
第38話 偽りと真実の邂逅
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「サティさん、これからどうしますか?」
城内への侵入に成功した私とフィーネは、静まり返った廊下をゆっくりと進んでいた。緊張感が張り詰めた空気の中、私はフィーネに尋ねる。
「フィーネは、どれくらい戦えるの?」
《剣聖》という肩書きはあれど、私は彼女の戦闘を実際に見たことがなかった。その実力がどれほどのものなのかは、想像の域を出ない。
「大抵の敵なら倒せるかな」
フィーネは自信たっぷりに、しかしどこか軽やかに答えた。
「その言葉が聞けて安心したわ」
頼もしい仲間がいてくれるのは、心強い。
そう思った矢先、フィーネが小声で私の耳元に囁く。
「サティ、敵だ」
私はすぐに息を潜め、音を立てずに賊の姿を確認する。
「……はぁ、これだと全員を相手にしてたら時間がかかるな」
「どうするの?」
フィーネが問いかけてきた瞬間、《色欲》の権能・変異により私の身体は淡い光に包まれ、形を変えていく。光が消えたとき、そこには聖女ルア・シエンと瓜二つの姿の私がいた。
「え、どういうこと!? なんでルアがいるの!?」
「私のスキルの一つよ。“姿”と“声”を他者に変える能力。相手に気付かれなければ、堂々と近づける」
「よく分からないけど、すごいね……」
「さて、行きますよ、フィーネ」
戦闘で無駄な血を流さないため、私は賊たちを魔術で一人ずつ眠らせていく。フィーネも非殺傷での戦闘に合わせ、的確に相手を無力化していった。
そして───
「あそこ!」
ホールの奥に、捕らえられていた使用人や侍女たちの姿を発見した。
「フィーネ様! ルア様! ありがとうございます!」
人質たちは、私を本物のルアだと勘違いして感謝している。まぁ、今はルアの姿をしているから、別に否定はしない。
しかしそのとき───
「おいおい、こりゃどうなってるんだ」
私たちが入ってきた扉が開かれ、ずんと重たい気配を纏った女が姿を現した。周囲の空気が、一瞬にして変わる。
「あなた……この賊の親玉ってとこかしら?」
「《剣聖》に《聖女》か。……あぁ、知ってるとも。来てくれたのがあんたらだけで良かったよ」
「どういう意味?」とフィーネが問い返す。
「《死神》が来てたら困ってた。あんな怪物、まともにやり合って勝てるわけがないだろ」
その言葉を聞いて、私は肩を竦めた。
ちょうどそのとき、もう一つの扉が開き、陛下と───本物のルア・シエンが入ってきた。
「フィーネさん! サティさん! 大丈夫ですか!?」
「ちょっと待って。なぜ聖女殿が2人いる?」
陛下が呟く。
「えっ、私がもう1人!?」
動揺するルアに、私は小さくため息をついて、顔を戻す。
「分かったわ、正直に言うから」
「あなた……誰ですか?」
「私は《死神》─サティ・フライデーよ」
スキルを解き、変化が消えると、その場の空気が一変した。
「し、死神……!」
残りの賊が驚愕し、武器を構える。
「驚くな! 奴は今、一人だ。しかも本気は出さないだろう。今ならまだ勝ち目がある!」
「私たちのことを忘れてもらっちゃ困りますね」
とフィーネが剣を構え、ルアも祈りの詠唱を始める。
「よし……こっちは2人を頼む! 私は《死神》とやり合う!」
賊の親玉が、私の前へと歩み出る。
「噂では色々と聞いてるが、全部が本当なわけじゃないだろ」
「あなたの名前は? 討伐した後で名前が分からないと、幽霊でも殺した気分になるわ」
「ふっ、礼儀正しいな。私はレオリア。この賊のリーダーだ」
「私は《死神》、サティ・フライデー」
名乗りを交わし、互いに静かに間合いを詰めていく。
「───後は、やり合うだけだ」
かすかに笑ったレオリアが、血の気配を滲ませて私へと迫る。
城内への侵入に成功した私とフィーネは、静まり返った廊下をゆっくりと進んでいた。緊張感が張り詰めた空気の中、私はフィーネに尋ねる。
「フィーネは、どれくらい戦えるの?」
《剣聖》という肩書きはあれど、私は彼女の戦闘を実際に見たことがなかった。その実力がどれほどのものなのかは、想像の域を出ない。
「大抵の敵なら倒せるかな」
フィーネは自信たっぷりに、しかしどこか軽やかに答えた。
「その言葉が聞けて安心したわ」
頼もしい仲間がいてくれるのは、心強い。
そう思った矢先、フィーネが小声で私の耳元に囁く。
「サティ、敵だ」
私はすぐに息を潜め、音を立てずに賊の姿を確認する。
「……はぁ、これだと全員を相手にしてたら時間がかかるな」
「どうするの?」
フィーネが問いかけてきた瞬間、《色欲》の権能・変異により私の身体は淡い光に包まれ、形を変えていく。光が消えたとき、そこには聖女ルア・シエンと瓜二つの姿の私がいた。
「え、どういうこと!? なんでルアがいるの!?」
「私のスキルの一つよ。“姿”と“声”を他者に変える能力。相手に気付かれなければ、堂々と近づける」
「よく分からないけど、すごいね……」
「さて、行きますよ、フィーネ」
戦闘で無駄な血を流さないため、私は賊たちを魔術で一人ずつ眠らせていく。フィーネも非殺傷での戦闘に合わせ、的確に相手を無力化していった。
そして───
「あそこ!」
ホールの奥に、捕らえられていた使用人や侍女たちの姿を発見した。
「フィーネ様! ルア様! ありがとうございます!」
人質たちは、私を本物のルアだと勘違いして感謝している。まぁ、今はルアの姿をしているから、別に否定はしない。
しかしそのとき───
「おいおい、こりゃどうなってるんだ」
私たちが入ってきた扉が開かれ、ずんと重たい気配を纏った女が姿を現した。周囲の空気が、一瞬にして変わる。
「あなた……この賊の親玉ってとこかしら?」
「《剣聖》に《聖女》か。……あぁ、知ってるとも。来てくれたのがあんたらだけで良かったよ」
「どういう意味?」とフィーネが問い返す。
「《死神》が来てたら困ってた。あんな怪物、まともにやり合って勝てるわけがないだろ」
その言葉を聞いて、私は肩を竦めた。
ちょうどそのとき、もう一つの扉が開き、陛下と───本物のルア・シエンが入ってきた。
「フィーネさん! サティさん! 大丈夫ですか!?」
「ちょっと待って。なぜ聖女殿が2人いる?」
陛下が呟く。
「えっ、私がもう1人!?」
動揺するルアに、私は小さくため息をついて、顔を戻す。
「分かったわ、正直に言うから」
「あなた……誰ですか?」
「私は《死神》─サティ・フライデーよ」
スキルを解き、変化が消えると、その場の空気が一変した。
「し、死神……!」
残りの賊が驚愕し、武器を構える。
「驚くな! 奴は今、一人だ。しかも本気は出さないだろう。今ならまだ勝ち目がある!」
「私たちのことを忘れてもらっちゃ困りますね」
とフィーネが剣を構え、ルアも祈りの詠唱を始める。
「よし……こっちは2人を頼む! 私は《死神》とやり合う!」
賊の親玉が、私の前へと歩み出る。
「噂では色々と聞いてるが、全部が本当なわけじゃないだろ」
「あなたの名前は? 討伐した後で名前が分からないと、幽霊でも殺した気分になるわ」
「ふっ、礼儀正しいな。私はレオリア。この賊のリーダーだ」
「私は《死神》、サティ・フライデー」
名乗りを交わし、互いに静かに間合いを詰めていく。
「───後は、やり合うだけだ」
かすかに笑ったレオリアが、血の気配を滲ませて私へと迫る。
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