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第6章 領地繁栄編
第41話 潜入、再びの迷宮へ
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「サティ。詳しく聞かせてもらえる?」
ユーリシア姫が私に詰め寄り、真剣な目で問いかけてくる。
この目に嘘は通じない。仕方ない――観念した私は、静かに頷いた。
「……分かった」
促されるまま、私は陛下と交わした話を一から丁寧に説明した。王城に届いた“ダンジョン出現”の報。
けれど外見上それらしい建造物は見つからず、あくまで“報告のみ”であること。そして私の予想───「既存のダンジョン内に、もう一つダンジョンができたのでは」という可能性について。
「──というわけで、確認のために、前に探索したダンジョンに行こうと思ってる」
私が言い終わると、ユーリシアは少しだけ黙り込み、やがて静かに口を開いた。
「これからダンジョンに行くんですね?」
「うん。まだ確定じゃないけど、可能性は高いから」
私の言葉に、姫様は納得したように頷いた。
……が。
「だったら、私も一緒に行く」
やっぱり、そう来るか───。
「姫様。今回は危ないかもしれません。お留守番していてください」
「でも、新しいダンジョンができたんでしょ? それを確かめに行くんじゃないの?」
「ええ。だからこそよ。今回は**“確認”だけ”**。本格的な攻略じゃないし、何より……」
一度、言葉を区切って彼女の目をまっすぐ見つめた。
「──今度ちゃんと潜るときは、必ず誘うから。だから今回は、城で待っててほしいの」
その場に沈黙が落ちた。
ユーリシアはほんのわずかに視線を落とし、唇を結んでいたが───やがて、観念したように笑った。
「……分かった。気をつけてね」
「うん、ありがとう」
私は姫様に小さく頭を下げ、振り返る。そして、かつて《純潔》の美徳と戦った、あのダンジョンへと向かった。
* * *
「さて……久しぶりに来たけど」
ダンジョンの入口は、以前と変わらぬ姿で私を迎えていた。
無骨な石の門。その奥には、あの静寂と緊張が満ちた空間が広がっている。
「……入るよ」
私は一歩、暗き迷宮へと足を踏み入れた。
薄闇の中、灯りを落とさぬように慎重に進んでいく。以前訪れたときとは違い、今回の目的は“探索”ではない。“違和感”の正体を確かめるための調査だ。
「魔物の反応は……無し」
結界も、気配も特別な変化は感じられない。
だが、何かが“おかしい”と肌が告げていた。
(前に来たときより、空気が……重い?)
まるで地下深くに新しい穴が開いたような――そんな圧力。
歩を進めると、かつて《純潔》と対峙したホールにたどり着く。だが───。
「……あった」
その中央に、以前は存在しなかったものがあった。
石畳の床に、ぽっかりと空いた闇の穴。
空間そのものが“崩れている”ような、不自然な穴だ。
覗き込むと、霧が立ち込めていて中は見えない。
「これが……新しいダンジョン、なの?」
視界の中、ほんの一瞬、紫色の光が霧の奥で揺れた。
それは、七つの美徳とは異なる───別の“何か”の気配だった。
「……調査完了、っと」
私は転移の術式を描きながら、静かに呟いた。
「今度、ここにはユーリシアと一緒に来る。だから……」
霧の奥に語りかけるように、言葉を続ける。
「待ってなさい。あなたの正体を、必ず暴いてみせるから」
そして、私は城へと戻った。
ユーリシア姫が私に詰め寄り、真剣な目で問いかけてくる。
この目に嘘は通じない。仕方ない――観念した私は、静かに頷いた。
「……分かった」
促されるまま、私は陛下と交わした話を一から丁寧に説明した。王城に届いた“ダンジョン出現”の報。
けれど外見上それらしい建造物は見つからず、あくまで“報告のみ”であること。そして私の予想───「既存のダンジョン内に、もう一つダンジョンができたのでは」という可能性について。
「──というわけで、確認のために、前に探索したダンジョンに行こうと思ってる」
私が言い終わると、ユーリシアは少しだけ黙り込み、やがて静かに口を開いた。
「これからダンジョンに行くんですね?」
「うん。まだ確定じゃないけど、可能性は高いから」
私の言葉に、姫様は納得したように頷いた。
……が。
「だったら、私も一緒に行く」
やっぱり、そう来るか───。
「姫様。今回は危ないかもしれません。お留守番していてください」
「でも、新しいダンジョンができたんでしょ? それを確かめに行くんじゃないの?」
「ええ。だからこそよ。今回は**“確認”だけ”**。本格的な攻略じゃないし、何より……」
一度、言葉を区切って彼女の目をまっすぐ見つめた。
「──今度ちゃんと潜るときは、必ず誘うから。だから今回は、城で待っててほしいの」
その場に沈黙が落ちた。
ユーリシアはほんのわずかに視線を落とし、唇を結んでいたが───やがて、観念したように笑った。
「……分かった。気をつけてね」
「うん、ありがとう」
私は姫様に小さく頭を下げ、振り返る。そして、かつて《純潔》の美徳と戦った、あのダンジョンへと向かった。
* * *
「さて……久しぶりに来たけど」
ダンジョンの入口は、以前と変わらぬ姿で私を迎えていた。
無骨な石の門。その奥には、あの静寂と緊張が満ちた空間が広がっている。
「……入るよ」
私は一歩、暗き迷宮へと足を踏み入れた。
薄闇の中、灯りを落とさぬように慎重に進んでいく。以前訪れたときとは違い、今回の目的は“探索”ではない。“違和感”の正体を確かめるための調査だ。
「魔物の反応は……無し」
結界も、気配も特別な変化は感じられない。
だが、何かが“おかしい”と肌が告げていた。
(前に来たときより、空気が……重い?)
まるで地下深くに新しい穴が開いたような――そんな圧力。
歩を進めると、かつて《純潔》と対峙したホールにたどり着く。だが───。
「……あった」
その中央に、以前は存在しなかったものがあった。
石畳の床に、ぽっかりと空いた闇の穴。
空間そのものが“崩れている”ような、不自然な穴だ。
覗き込むと、霧が立ち込めていて中は見えない。
「これが……新しいダンジョン、なの?」
視界の中、ほんの一瞬、紫色の光が霧の奥で揺れた。
それは、七つの美徳とは異なる───別の“何か”の気配だった。
「……調査完了、っと」
私は転移の術式を描きながら、静かに呟いた。
「今度、ここにはユーリシアと一緒に来る。だから……」
霧の奥に語りかけるように、言葉を続ける。
「待ってなさい。あなたの正体を、必ず暴いてみせるから」
そして、私は城へと戻った。
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