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第8章 パステコ公国編
第51話 剣聖のゆくえ
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野外実習の翌日。
朝露に濡れた道を、私たちの馬車は静かに進んでいた。
車輪が軋む音だけが、早朝の澄んだ空気を震わせる。
馬車の中では、フリックが退屈そうに頬杖をついていた。
「なあ、《剣聖》様って、今どこにいるんだろうな」
そう言って、隣に座るサティに顔を向ける。
サティは荷物の中から丁寧に折られた地図を取り出すと、器用に広げ、真剣な目で目を走らせた。
「この辺りに街があるわ。まずはそこで情報収集ね。パステコ公国にはあまり来ないから、何もわからないまま動いても無駄足になるかも」
彼女の冷静な判断に皆うなずき、馬車は近くの街へと向かった。
***
街の門をくぐると、馬車を止めてくれた商人に一礼する。
「ありがとうございました」
私たちは順に馬車から降り、通りの賑わいに目を細めた。
「それで、これからどうする?」とフリック。
「酒場に行ってみるか?」
「それとも、冒険者ギルド?」
私は少し考えてから答えた。
「まずはギルドね。情報の正確性では酒場より上だと思う」
***
冒険者ギルドの扉を開けると、馴染みのある喧騒が耳に飛び込んできた。
カウンターで受付の女性に声をかけ、掲示板の前で情報を探していたその時だった。
「──あなたは、《死神》さんですか?」
聞き覚えのある声に振り返ると、そこに立っていたのは、以前《剣聖》の護衛として共に行動した男、ラインだった。
「久しぶり。こんな所で会うとはね」
「僕も驚きました。今日はどうしてここに?」
「《剣聖》を探してるの。頼みたいことがあって」
「なるほど……。実は《剣聖》様、今は公都にいますよ」
「えっ、この辺じゃないの?」
「さすがに、もうこの街にはいないですね」
私は小さく息をつき、目を細めた。
「……そう。じゃあ、公都に行ってみるわ」
「もしよければ、案内しましょうか?」
「それは助かるわ」
ちょうどその時、ラインの背後から足音が近づいてきた。
「おい、探したぞライン。何してるんだ?」
声の主は、体格のいい男だった。彼はラインの隣に立ち、私に視線を向けて一礼する。
「はじめまして、レガリアだ。ラインの仲間だよ」
私は軽く会釈する。
「サティです。それで……あなたたち《剣聖》様の配下が、どうしてこんなところに?」
レガリアは肩をすくめ、苦笑した。
「実はな、今の大公が代替わりすることになって、新しい大公を選ぶ選挙が始まってるんだ。で、俺たちはその準備の一環ってわけさ」
「なるほど……。じゃあ、《剣聖》様は選挙に何か関わってるの?」
私の問いに、レガリアは言いにくそうにしながらも口を開いた。
「……君、何も聞いてないんだな」
「え?」
「《剣聖》様こそ、大公の候補者の一人なんだよ」
「───えっ?」
衝撃のあまり、私は思わず言葉を失った。
剣技の化身のような存在である《剣聖》が、政治の頂点を目指すというのか?
「《剣聖》にそんな務まるの? 彼に政治は向いてないと思うけど……」
「俺も反対したさ。でも、本人の意志が固くてな」
私は顔を引き締めた。
「……とにかく、《剣聖》のところに行かないと。案内してくれる?」
「もちろん」
私たちは、静かに足音を揃えて公都への道を歩き始めた。
そこには、ただ《剣聖》を探すだけではない、もうひとつの物語が待っている気がしてならなかった。
朝露に濡れた道を、私たちの馬車は静かに進んでいた。
車輪が軋む音だけが、早朝の澄んだ空気を震わせる。
馬車の中では、フリックが退屈そうに頬杖をついていた。
「なあ、《剣聖》様って、今どこにいるんだろうな」
そう言って、隣に座るサティに顔を向ける。
サティは荷物の中から丁寧に折られた地図を取り出すと、器用に広げ、真剣な目で目を走らせた。
「この辺りに街があるわ。まずはそこで情報収集ね。パステコ公国にはあまり来ないから、何もわからないまま動いても無駄足になるかも」
彼女の冷静な判断に皆うなずき、馬車は近くの街へと向かった。
***
街の門をくぐると、馬車を止めてくれた商人に一礼する。
「ありがとうございました」
私たちは順に馬車から降り、通りの賑わいに目を細めた。
「それで、これからどうする?」とフリック。
「酒場に行ってみるか?」
「それとも、冒険者ギルド?」
私は少し考えてから答えた。
「まずはギルドね。情報の正確性では酒場より上だと思う」
***
冒険者ギルドの扉を開けると、馴染みのある喧騒が耳に飛び込んできた。
カウンターで受付の女性に声をかけ、掲示板の前で情報を探していたその時だった。
「──あなたは、《死神》さんですか?」
聞き覚えのある声に振り返ると、そこに立っていたのは、以前《剣聖》の護衛として共に行動した男、ラインだった。
「久しぶり。こんな所で会うとはね」
「僕も驚きました。今日はどうしてここに?」
「《剣聖》を探してるの。頼みたいことがあって」
「なるほど……。実は《剣聖》様、今は公都にいますよ」
「えっ、この辺じゃないの?」
「さすがに、もうこの街にはいないですね」
私は小さく息をつき、目を細めた。
「……そう。じゃあ、公都に行ってみるわ」
「もしよければ、案内しましょうか?」
「それは助かるわ」
ちょうどその時、ラインの背後から足音が近づいてきた。
「おい、探したぞライン。何してるんだ?」
声の主は、体格のいい男だった。彼はラインの隣に立ち、私に視線を向けて一礼する。
「はじめまして、レガリアだ。ラインの仲間だよ」
私は軽く会釈する。
「サティです。それで……あなたたち《剣聖》様の配下が、どうしてこんなところに?」
レガリアは肩をすくめ、苦笑した。
「実はな、今の大公が代替わりすることになって、新しい大公を選ぶ選挙が始まってるんだ。で、俺たちはその準備の一環ってわけさ」
「なるほど……。じゃあ、《剣聖》様は選挙に何か関わってるの?」
私の問いに、レガリアは言いにくそうにしながらも口を開いた。
「……君、何も聞いてないんだな」
「え?」
「《剣聖》様こそ、大公の候補者の一人なんだよ」
「───えっ?」
衝撃のあまり、私は思わず言葉を失った。
剣技の化身のような存在である《剣聖》が、政治の頂点を目指すというのか?
「《剣聖》にそんな務まるの? 彼に政治は向いてないと思うけど……」
「俺も反対したさ。でも、本人の意志が固くてな」
私は顔を引き締めた。
「……とにかく、《剣聖》のところに行かないと。案内してくれる?」
「もちろん」
私たちは、静かに足音を揃えて公都への道を歩き始めた。
そこには、ただ《剣聖》を探すだけではない、もうひとつの物語が待っている気がしてならなかった。
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