57 / 60
第9章 黒霧編
第57話 剣と霧、封じられた旧都へ
しおりを挟む
「これが……霧に対抗するための装備ね?」
フィーネが手にしたのは、黒い革製のリストバンド。
サティがギルド内の工作班に作らせた、特注の【霧干渉遮断装置】だ。
「霧の中では魔力が歪む。これは、その暴走を防ぐための装置よ。あと、これも持っていって」
サティが手渡したのは、【黒霧共鳴石】。
特定の霧の密度に反応して光る装置だ。
「エイルが霧に取り込まれているなら、必ず近くで反応するはずよ」
「分かった」
フィーネは短く頷くと、腰の剣に手を添えた。
その瞳に一片の迷いもない。
***
黒霧区。
ルメリア北端、封鎖された旧市街地。
高い柵と封印の紋章が刻まれた石門を超え、彼女は禁域に足を踏み入れた。
「……空気が重い」
入った瞬間、肌にまとわりつくような圧迫感。
魔力の濃度が異常だ。まるで、空気が“魔法”そのものになったかのような感覚。
足元にはひび割れた石畳。崩れかけた建物。
そして、その奥から───霧が、ゆっくりと“生えて”いた。
「こっちね」
フィーネは共鳴石の反応を頼りに、かつて学院だった場所の裏庭へと進む。
その途中、彼女は“気配”を感じ取った。
(……来た)
一歩踏み出した瞬間。霧が裂けるように左右に揺れ、
その中から“人の形をした何か”が現れた。
「《黒喰い》……!」
顔がない。腕が長すぎる。
そして、その体の中心には“人間の瞳”が浮かんでいた。
「退きなさい。……今は、戦う気はないの」
フィーネが声をかけても、それは喉を鳴らすような唸り声を上げて迫ってくる。
ズシャッ――!
応じたのは、一閃の風。
フィーネの剣が“間合いよりも先”に斬り裂き、黒喰いの身体を貫いた。
「……道を、開けて」
霧がまた一つ後退した。
彼女は再び、奥へと進んでいく。
***
数分後、辿り着いたのは───“黒の鏡”の前。
そこには、少女が立っていた。
霧に包まれながら、まるで人形のように静かに。
「……エイル」
「こんにちは、《剣聖》様」
その声は、柔らかかった。
だが瞳に宿る光は、人ではなかった。
「ここが私の“世界”よ。どう? 綺麗でしょ?」
「戻りましょう、エイル。あなたは、こんな場所にいてはいけない」
「でも私はここで目覚めたの。ずっと眠っていた魔力も、心も。全部、この鏡が教えてくれたのよ」
「……操られてるの?」
「違う。私は“選ばれた”の。試してあげる。《剣聖》って、本当に最強なのか」
───バチッ。
次の瞬間、エイルの背後から魔力が走った。
黒霧をまとうように、彼女の身体が変質していく。
“黒の使い魔”が彼女の影から這い出し、空間が歪んだ。
「さぁ、私と“試練”を踊って? 剣の人」
フィーネが手にしたのは、黒い革製のリストバンド。
サティがギルド内の工作班に作らせた、特注の【霧干渉遮断装置】だ。
「霧の中では魔力が歪む。これは、その暴走を防ぐための装置よ。あと、これも持っていって」
サティが手渡したのは、【黒霧共鳴石】。
特定の霧の密度に反応して光る装置だ。
「エイルが霧に取り込まれているなら、必ず近くで反応するはずよ」
「分かった」
フィーネは短く頷くと、腰の剣に手を添えた。
その瞳に一片の迷いもない。
***
黒霧区。
ルメリア北端、封鎖された旧市街地。
高い柵と封印の紋章が刻まれた石門を超え、彼女は禁域に足を踏み入れた。
「……空気が重い」
入った瞬間、肌にまとわりつくような圧迫感。
魔力の濃度が異常だ。まるで、空気が“魔法”そのものになったかのような感覚。
足元にはひび割れた石畳。崩れかけた建物。
そして、その奥から───霧が、ゆっくりと“生えて”いた。
「こっちね」
フィーネは共鳴石の反応を頼りに、かつて学院だった場所の裏庭へと進む。
その途中、彼女は“気配”を感じ取った。
(……来た)
一歩踏み出した瞬間。霧が裂けるように左右に揺れ、
その中から“人の形をした何か”が現れた。
「《黒喰い》……!」
顔がない。腕が長すぎる。
そして、その体の中心には“人間の瞳”が浮かんでいた。
「退きなさい。……今は、戦う気はないの」
フィーネが声をかけても、それは喉を鳴らすような唸り声を上げて迫ってくる。
ズシャッ――!
応じたのは、一閃の風。
フィーネの剣が“間合いよりも先”に斬り裂き、黒喰いの身体を貫いた。
「……道を、開けて」
霧がまた一つ後退した。
彼女は再び、奥へと進んでいく。
***
数分後、辿り着いたのは───“黒の鏡”の前。
そこには、少女が立っていた。
霧に包まれながら、まるで人形のように静かに。
「……エイル」
「こんにちは、《剣聖》様」
その声は、柔らかかった。
だが瞳に宿る光は、人ではなかった。
「ここが私の“世界”よ。どう? 綺麗でしょ?」
「戻りましょう、エイル。あなたは、こんな場所にいてはいけない」
「でも私はここで目覚めたの。ずっと眠っていた魔力も、心も。全部、この鏡が教えてくれたのよ」
「……操られてるの?」
「違う。私は“選ばれた”の。試してあげる。《剣聖》って、本当に最強なのか」
───バチッ。
次の瞬間、エイルの背後から魔力が走った。
黒霧をまとうように、彼女の身体が変質していく。
“黒の使い魔”が彼女の影から這い出し、空間が歪んだ。
「さぁ、私と“試練”を踊って? 剣の人」
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
うちの幼馴染がデレすぎてて俺の理性はもう限界。でも毎日が最高に甘いからもうどうでもいいや
静内燕
恋愛
相沢悠太の日常は、規格外の美少女である幼馴染、白石葵によって完全に支配されている。
朝のモーニングコール(ベッドへのダイブ付き)から始まり、登校中の腕組み、そして「あーん」が義務付けられた手作り弁当。誰もが羨むラブラブっぷりだが、悠太はこれを「家族愛」だと頑なに誤解(無視)している。
「ゆーたは私の運命の相手なんだもん!」と、葵のデレデレは今日も過剰の一途。周囲の冷やかしや、葵を狙う男子生徒のプレッシャーが高まる中、悠太の**「幼馴染フィルター」**はついに限界を迎える。
この溺愛っぷり、いつまで「家族」で通せるのか?
甘すぎる日常が、悠太の鈍感な理性を溶かし尽くす――最初からクライマックスの、超高濃度イチャイチャ・ラブコメ、開幕!
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる
まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」
父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。
清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。
なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。
学校では誰もが憧れる高嶺の花。
家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。
しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。
「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」
秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。
彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。
「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」
これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。
完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。
『著者より』
もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858
ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主
雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。
荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。
十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、
ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。
ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、
領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。
魔物被害、経済不安、流通の断絶──
没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。
新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる