20 / 36
第1章 カタリナ、ついでに弩級戦艦もらっとく ~ 海賊(きょうてき)打倒編 ~
第20話 脱出していい?
しおりを挟む
脱出を急ぐカタリナたち。バルザックはロープでミノムシのようにぐるぐる巻きにされ、足に結ばれたロープを団員三人に引きずられていた。
バルザックは引っ張られながらも怒りと不快感で顔を歪ませていた。
非常口からカタリナ達は飛び出した。少しだけ広い場所に出た。
だがその先は切り立った崖になっており、それ以上進むことはできなかった。
まるで地震のように地面が小刻みに揺れている。
どれくらいの猛獣が迫ってきているのか。
「道を間違ったか!急げ!戻るぞ!」
カタリナが叫ぶ。だがその時に崖下から一隻のコルベットが急浮上してきた。
コタは本当に場所を把握していた。
スピーカーからコタの声が聞こえる。
「間に合いました!さぁ、逃げますよ。ですが、この一隻に34人を押し込むのは少々厳しい上に時間がかかります。少々お待ちください。」
崖際の上空10メートルほどまで急上昇した。風で団員達の髪が大きく揺らいだ。
先ほど設置していた秘密装置が展開し、大きなネットが広がった。
「そこに飛び乗ってください。」
「……大丈夫なの、これ?」
カタリナが蓑虫バルザックを引っ張ってきてネットに放り投げた。
少し揺れたが、しっかりと安定していた
「よし、みんな乗り込め!」
赤毛猫海賊団団員達が次々とネットに飛び移りしっかりとロープを握り締めた。
「乗り込みましたね。では少し揺れますよ。」
そういうとコルベットを浮上させて地上10mほどの所で基地から離脱しようとする。
その時、反対側から大きな音と共に砂埃が舞って基地を取り囲む塀が所々崩された。
半狂乱になって暴れ狂う象のような大型獣、その巨体がぶつかり合い、周囲の獣たちが紙屑のように巻き上げられていった
基地の周りでは集った猛獣たちが、お互い襲いあっていた。
逃げようとした海賊達の中にはその狂乱に巻き込まれた者もいる。
「危機一髪でしたね…。」
団員の一人が呟いた。
それは皆が思っていることだった。
少し不安になったカタリナがコタに語り掛けた。
「ねぇ、コタ。もうちょっと高く上がらないの?なんか猛獣たちが襲ってきたら、届きそうで怖いんだけど。」
「フーム……お嬢様、最近お菓子の食べ過ぎで、少々……あ、いえ何でもございません。実は重くて、これ以上は上昇できません」
「はぁ!?このナイスバディのどこ見て言ってんの!こいつよ、こいつが筋肉バカだから重いのよ!」
プンスカしながらバルザックを指さす。
「冗談ですよ。普通に上昇はできますが、世の中何が起きるか分かりません。もし落下されたとしても、この高さなら一命を取り留めます。執事たるもの全てのリスクに備えるものです。」
今まで、黙り込んでいたバルザックが口を開いた。
「なるほど……そういうことだったのか。俺はどうせ軍に引き渡されても縛り首だ。なら万に一つの助かる道を選ぶさ。」
そういうと蓑虫のまま腹筋と背筋を使って跳ね上がった。ネットが揺れて団員達は掴まるのに必死だった。
バルザックはそのまま、一回転して足から着地しようとする。
「あばよ、小娘!俺は必ず立ち戻り、お前達をぶっ殺してやるからな!!俺を殺さなかったことを後悔するんだな!!」
だがその軌道を追うようにコルベットから何やらアームが伸びた。
コタのドヤ声が聞こえる。
「言ったでしょう?どんなリスクにも備えると。執事たるもの、あらゆるスキルを磨いておくものです。クレーンゲーム検定初段を舐めないでいただきたい。」
落下するバルザックの位置を完全に予測するかのように第二の秘密装置から伸びたアームが固定されるとクレーンが一気に降下し、落下するバルザックをがっしりと掴んだ。
何が起きたか理解できないバルザックはその不安定な体勢で固定された。
「暴れると頭から落ちますよ。」
「うあぁああぁぁああ!!!!」
バルザックの悲鳴が響く中、コルベットは猛獣の群れを超えて、サバンナの開けた場所に着陸した。
そこには先に離脱した7隻のコルベットと団員たちが控えていた。
団員たちはハイタッチで健闘を称えあった。
バルザックは時に引きずられ、時に猛獣に引っかかれ、サボテンに突き刺さって、もはや呆けた状態で気を失っていた。
「お嬢様、お見事でした、おめでとうございます。いかがでしたか?」
「コタ、ありがとう。助かったよ。いや、楽しかったよ。上には上がいることが分かってよかった。もっと強くならないと、みんなを守れないな。」
「ほっほっほ。それはようございました。爺はいつでもお嬢様のために尽くしますぞ。さて、皆も疲れています。帰りましょう。7隻に別れて乗ればそこまで窮屈ではないと思います。」
「ありがとう。コタは?」
「はい、私めはバルザックを軍に引き渡して懸賞金を受け取ってまいります。それは私が一番適任です。なにせ、私は堅気ですからね。」
再び真面目な目つきで顔だけが笑っていた。
団員は内心、この人が一番、やくざっぽい、と思ったのは内緒である。
「ミネ、ついてきなさい。懸賞首を届け出の仕方と吹っかけ方を伝授します。」
「うん、わかった。ではカタリナ様、私はお父さんと一緒に行って後から合流します。くれぐれもアジトを汚さないでくださいね。」
「そんな元気ないから早く戻ってきてね。」
カタリナが珍しく弱気なのをみて、みんな思い出した。
「あぁ…そういえばおねーちゃん、骨折ってたっけ?もうくっついた?」
サクラモカが真面目な顔で問いかけた。
「………おねーちゃんの事、ロボットか何かと勘違いしてないか?」
笑いが広がる。ホッとして皆が心の底から笑い抱き合った。
「じゃあ、帰ろう!!」
【あとがき】
…皆さん、お疲れ様です。ミネです。
無事に帰還しました。カタリナ様もモカ様も、そしてみんなも、全員無事です。
今回は、本当にヒヤヒヤしました。
私だって、カタリナ様が無茶をするのはいつものことだと思っていました。
ですが、今回は、相手が違いすぎました。
バルザック…あの人は、本当に強敵でしたね。
団長が骨を折られるほどの相手なんて、今までいませんでしたから。
そして、私の秘密道具。
フェイズウィップ…あれは、もともと「いざという時に、お父さんを止めるため」に持っていたんです。
でも、まさかあんなところで役に立つなんて…。
まさか、モカ様があんなに上手に使いこなすとは思いませんでした。
モカ様、銃は本当にダメなのに…鞭は得意だなんて……。
実は夜の女王様の素質が……ガクガクガク。
でも…お父さんの「場所はわかる」っていうセリフには、ゾッとしました。
本当に場所を特定してきたのできっと何かあります。今度問い詰めないと……。
今回、作戦は成功しましたが、私達はまだまだ未熟です。
もし、私達が今回よりもさらに強い敵と戦うことになったら…
あの時のような危険な状態は、もう見たくありません。
お父さんのように、完璧な準備と、どんな状況にも対応できるスキルを身につけなければいけませんね。
私はまだまだお父さんから学ぶべきことは多いようです。
さて、これからお父さんと懸賞金を受け取りに行きます。
もちろん、吹っ掛けます。少しでも多くもらわないと、命を賭けた甲斐がありませんからね。
それでは、また次回、お会いしましょう。
カタリナ様に感想やレビューを差し上げてください。嬉しくて単純なので骨もすぐにくっつくかもしれません。
バルザックは引っ張られながらも怒りと不快感で顔を歪ませていた。
非常口からカタリナ達は飛び出した。少しだけ広い場所に出た。
だがその先は切り立った崖になっており、それ以上進むことはできなかった。
まるで地震のように地面が小刻みに揺れている。
どれくらいの猛獣が迫ってきているのか。
「道を間違ったか!急げ!戻るぞ!」
カタリナが叫ぶ。だがその時に崖下から一隻のコルベットが急浮上してきた。
コタは本当に場所を把握していた。
スピーカーからコタの声が聞こえる。
「間に合いました!さぁ、逃げますよ。ですが、この一隻に34人を押し込むのは少々厳しい上に時間がかかります。少々お待ちください。」
崖際の上空10メートルほどまで急上昇した。風で団員達の髪が大きく揺らいだ。
先ほど設置していた秘密装置が展開し、大きなネットが広がった。
「そこに飛び乗ってください。」
「……大丈夫なの、これ?」
カタリナが蓑虫バルザックを引っ張ってきてネットに放り投げた。
少し揺れたが、しっかりと安定していた
「よし、みんな乗り込め!」
赤毛猫海賊団団員達が次々とネットに飛び移りしっかりとロープを握り締めた。
「乗り込みましたね。では少し揺れますよ。」
そういうとコルベットを浮上させて地上10mほどの所で基地から離脱しようとする。
その時、反対側から大きな音と共に砂埃が舞って基地を取り囲む塀が所々崩された。
半狂乱になって暴れ狂う象のような大型獣、その巨体がぶつかり合い、周囲の獣たちが紙屑のように巻き上げられていった
基地の周りでは集った猛獣たちが、お互い襲いあっていた。
逃げようとした海賊達の中にはその狂乱に巻き込まれた者もいる。
「危機一髪でしたね…。」
団員の一人が呟いた。
それは皆が思っていることだった。
少し不安になったカタリナがコタに語り掛けた。
「ねぇ、コタ。もうちょっと高く上がらないの?なんか猛獣たちが襲ってきたら、届きそうで怖いんだけど。」
「フーム……お嬢様、最近お菓子の食べ過ぎで、少々……あ、いえ何でもございません。実は重くて、これ以上は上昇できません」
「はぁ!?このナイスバディのどこ見て言ってんの!こいつよ、こいつが筋肉バカだから重いのよ!」
プンスカしながらバルザックを指さす。
「冗談ですよ。普通に上昇はできますが、世の中何が起きるか分かりません。もし落下されたとしても、この高さなら一命を取り留めます。執事たるもの全てのリスクに備えるものです。」
今まで、黙り込んでいたバルザックが口を開いた。
「なるほど……そういうことだったのか。俺はどうせ軍に引き渡されても縛り首だ。なら万に一つの助かる道を選ぶさ。」
そういうと蓑虫のまま腹筋と背筋を使って跳ね上がった。ネットが揺れて団員達は掴まるのに必死だった。
バルザックはそのまま、一回転して足から着地しようとする。
「あばよ、小娘!俺は必ず立ち戻り、お前達をぶっ殺してやるからな!!俺を殺さなかったことを後悔するんだな!!」
だがその軌道を追うようにコルベットから何やらアームが伸びた。
コタのドヤ声が聞こえる。
「言ったでしょう?どんなリスクにも備えると。執事たるもの、あらゆるスキルを磨いておくものです。クレーンゲーム検定初段を舐めないでいただきたい。」
落下するバルザックの位置を完全に予測するかのように第二の秘密装置から伸びたアームが固定されるとクレーンが一気に降下し、落下するバルザックをがっしりと掴んだ。
何が起きたか理解できないバルザックはその不安定な体勢で固定された。
「暴れると頭から落ちますよ。」
「うあぁああぁぁああ!!!!」
バルザックの悲鳴が響く中、コルベットは猛獣の群れを超えて、サバンナの開けた場所に着陸した。
そこには先に離脱した7隻のコルベットと団員たちが控えていた。
団員たちはハイタッチで健闘を称えあった。
バルザックは時に引きずられ、時に猛獣に引っかかれ、サボテンに突き刺さって、もはや呆けた状態で気を失っていた。
「お嬢様、お見事でした、おめでとうございます。いかがでしたか?」
「コタ、ありがとう。助かったよ。いや、楽しかったよ。上には上がいることが分かってよかった。もっと強くならないと、みんなを守れないな。」
「ほっほっほ。それはようございました。爺はいつでもお嬢様のために尽くしますぞ。さて、皆も疲れています。帰りましょう。7隻に別れて乗ればそこまで窮屈ではないと思います。」
「ありがとう。コタは?」
「はい、私めはバルザックを軍に引き渡して懸賞金を受け取ってまいります。それは私が一番適任です。なにせ、私は堅気ですからね。」
再び真面目な目つきで顔だけが笑っていた。
団員は内心、この人が一番、やくざっぽい、と思ったのは内緒である。
「ミネ、ついてきなさい。懸賞首を届け出の仕方と吹っかけ方を伝授します。」
「うん、わかった。ではカタリナ様、私はお父さんと一緒に行って後から合流します。くれぐれもアジトを汚さないでくださいね。」
「そんな元気ないから早く戻ってきてね。」
カタリナが珍しく弱気なのをみて、みんな思い出した。
「あぁ…そういえばおねーちゃん、骨折ってたっけ?もうくっついた?」
サクラモカが真面目な顔で問いかけた。
「………おねーちゃんの事、ロボットか何かと勘違いしてないか?」
笑いが広がる。ホッとして皆が心の底から笑い抱き合った。
「じゃあ、帰ろう!!」
【あとがき】
…皆さん、お疲れ様です。ミネです。
無事に帰還しました。カタリナ様もモカ様も、そしてみんなも、全員無事です。
今回は、本当にヒヤヒヤしました。
私だって、カタリナ様が無茶をするのはいつものことだと思っていました。
ですが、今回は、相手が違いすぎました。
バルザック…あの人は、本当に強敵でしたね。
団長が骨を折られるほどの相手なんて、今までいませんでしたから。
そして、私の秘密道具。
フェイズウィップ…あれは、もともと「いざという時に、お父さんを止めるため」に持っていたんです。
でも、まさかあんなところで役に立つなんて…。
まさか、モカ様があんなに上手に使いこなすとは思いませんでした。
モカ様、銃は本当にダメなのに…鞭は得意だなんて……。
実は夜の女王様の素質が……ガクガクガク。
でも…お父さんの「場所はわかる」っていうセリフには、ゾッとしました。
本当に場所を特定してきたのできっと何かあります。今度問い詰めないと……。
今回、作戦は成功しましたが、私達はまだまだ未熟です。
もし、私達が今回よりもさらに強い敵と戦うことになったら…
あの時のような危険な状態は、もう見たくありません。
お父さんのように、完璧な準備と、どんな状況にも対応できるスキルを身につけなければいけませんね。
私はまだまだお父さんから学ぶべきことは多いようです。
さて、これからお父さんと懸賞金を受け取りに行きます。
もちろん、吹っ掛けます。少しでも多くもらわないと、命を賭けた甲斐がありませんからね。
それでは、また次回、お会いしましょう。
カタリナ様に感想やレビューを差し上げてください。嬉しくて単純なので骨もすぐにくっつくかもしれません。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる
しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。
いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに……
しかしそこに現れたのは幼馴染で……?
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる