56 / 110
9 凪は昼と夜の狭間。
喧嘩
しおりを挟む
(side壮一郎)
「運命とか……あるじゃないっすか」
「出会う確率が少ないものに縋りたいとは思わない。まあ、藍は……月ヶ瀬は運命を望んだらしいけど、それでも結局運命以外と恋愛をした。そんなものだよ」
「そんなものですか」
「俺の両親は『運命』だけれど……会えたからって、だから何だって話だよね。俺は真っ直ぐ自分の人生を生きるだけだ」
そっか、そんなものか。結野夏向も大変だぜ。
夢も欠片も無い。現実に生きる大人みたい。こんなロボットみたいなやつ、誘惑しないといけないのか。俺ならハニートラップは諦めて……正攻法で、暗殺するな。
けれども俺は暗殺の実行係では無い。あくまで監視役だ。だから生徒会長に手出しはしない。
俺のご主人様は俺に殺しを望んでいない。ご主人様に拾われたあの日から……俺は殺しを禁じられた。
というのも、俺はΩじゃ無いからだ。
『手を汚すのはΩでいい』それがご主人様の考え方だ。
「かっこいいっすね。俺はたった今、生徒会長憧れたんで生徒会役員になりたいです」
なんて提案をしてみる。真っ正面から褒められて、さぞ嬉しいだろう。警戒心は、こうやって薄められる。元気で無邪気なキャラを演じて……相手の繊細な部分に土足で踏み込んでも許される。それが俺が身につけたコミュニケーション術だ。
「でも今……生徒会の席は空いてないからな。生徒会選挙には中途半端な時期なんだ」
「じゃあ……生徒会から副会長を追い出せばいいんじゃないですか?」
「簡単に言うね、君。追い出したとして……不良問題まで解決するなら俺だってそうしたい。そうだね……いっそ不良学校も買収するのもアリかな?」
「金で解決するんすか?汚いですよ、それ。まあ、副会長にしてくれるって言うんなら……俺が解決しますよ」
生徒会長の目が見開いた。俺には出来ないと思われているな。確かに俺はβで……更に転入生だ。学園のトップに立つのには新参者過ぎるし、持って生まれたものが無い。
けれどまあ、少し汚えけど……これがきっと最短距離だ。
「分かった。いいよ。君は随分優秀そうだし……。君を利用するのも悪くはなさそうだ。凪」
と、俺は生徒会長とそんな約束をした。
さて、そんなふうに雑用をしながら雑談を三日間続けていたら……俺が知らなかった情報が大分集まった。
勿論、転入前に生徒会役員の大まかなプロフィールは知っていたが……やっぱり生徒の噂って大事だと思い知った。まあ、ハトファイも有効活用したけどな。
さて、いよいよ古波鮫と対面だ。
俺は喧嘩中の古波鮫を襲った。簡単に言うと、ボッコボコにした。俺に逆らえないように、俺に従うように……そこまでして漸く彼は大人しくなった。
喧嘩は、俺の得意技だ。本物の、生死の瀬戸際を生きてきた俺からすればそんなもの、子供と戯れているのと一緒。圧勝だった。
血を吐いて、彼は地面に伏している。俺は古波鮫の背中に足を乗せた。
『ぐっ』と耐える声が聞こえて……ああ、まだ大丈夫だな。なんて思った。αだからやっぱり意外と頑丈らしい。
「降参、降参だ。お願いだから……言うことを聞く、何が望みだ」
「勿論、生徒会副会長の座だ。それから自主退学してくれたら嬉しいぜ」
「退……学?」
「そう。二度も言わせるなよ。あんたはもう、必要ない。言う通りにしないんならまた毎日ボコボコにしてやるぜ」
『どうだ、やるか?』と笑みを浮かべる。
血塗れの中、逃げ道を断つように追い込んでやる。
そうしてまた『降参だ』と声が聞こえて、俺はそいつを解放した。
「運命とか……あるじゃないっすか」
「出会う確率が少ないものに縋りたいとは思わない。まあ、藍は……月ヶ瀬は運命を望んだらしいけど、それでも結局運命以外と恋愛をした。そんなものだよ」
「そんなものですか」
「俺の両親は『運命』だけれど……会えたからって、だから何だって話だよね。俺は真っ直ぐ自分の人生を生きるだけだ」
そっか、そんなものか。結野夏向も大変だぜ。
夢も欠片も無い。現実に生きる大人みたい。こんなロボットみたいなやつ、誘惑しないといけないのか。俺ならハニートラップは諦めて……正攻法で、暗殺するな。
けれども俺は暗殺の実行係では無い。あくまで監視役だ。だから生徒会長に手出しはしない。
俺のご主人様は俺に殺しを望んでいない。ご主人様に拾われたあの日から……俺は殺しを禁じられた。
というのも、俺はΩじゃ無いからだ。
『手を汚すのはΩでいい』それがご主人様の考え方だ。
「かっこいいっすね。俺はたった今、生徒会長憧れたんで生徒会役員になりたいです」
なんて提案をしてみる。真っ正面から褒められて、さぞ嬉しいだろう。警戒心は、こうやって薄められる。元気で無邪気なキャラを演じて……相手の繊細な部分に土足で踏み込んでも許される。それが俺が身につけたコミュニケーション術だ。
「でも今……生徒会の席は空いてないからな。生徒会選挙には中途半端な時期なんだ」
「じゃあ……生徒会から副会長を追い出せばいいんじゃないですか?」
「簡単に言うね、君。追い出したとして……不良問題まで解決するなら俺だってそうしたい。そうだね……いっそ不良学校も買収するのもアリかな?」
「金で解決するんすか?汚いですよ、それ。まあ、副会長にしてくれるって言うんなら……俺が解決しますよ」
生徒会長の目が見開いた。俺には出来ないと思われているな。確かに俺はβで……更に転入生だ。学園のトップに立つのには新参者過ぎるし、持って生まれたものが無い。
けれどまあ、少し汚えけど……これがきっと最短距離だ。
「分かった。いいよ。君は随分優秀そうだし……。君を利用するのも悪くはなさそうだ。凪」
と、俺は生徒会長とそんな約束をした。
さて、そんなふうに雑用をしながら雑談を三日間続けていたら……俺が知らなかった情報が大分集まった。
勿論、転入前に生徒会役員の大まかなプロフィールは知っていたが……やっぱり生徒の噂って大事だと思い知った。まあ、ハトファイも有効活用したけどな。
さて、いよいよ古波鮫と対面だ。
俺は喧嘩中の古波鮫を襲った。簡単に言うと、ボッコボコにした。俺に逆らえないように、俺に従うように……そこまでして漸く彼は大人しくなった。
喧嘩は、俺の得意技だ。本物の、生死の瀬戸際を生きてきた俺からすればそんなもの、子供と戯れているのと一緒。圧勝だった。
血を吐いて、彼は地面に伏している。俺は古波鮫の背中に足を乗せた。
『ぐっ』と耐える声が聞こえて……ああ、まだ大丈夫だな。なんて思った。αだからやっぱり意外と頑丈らしい。
「降参、降参だ。お願いだから……言うことを聞く、何が望みだ」
「勿論、生徒会副会長の座だ。それから自主退学してくれたら嬉しいぜ」
「退……学?」
「そう。二度も言わせるなよ。あんたはもう、必要ない。言う通りにしないんならまた毎日ボコボコにしてやるぜ」
『どうだ、やるか?』と笑みを浮かべる。
血塗れの中、逃げ道を断つように追い込んでやる。
そうしてまた『降参だ』と声が聞こえて、俺はそいつを解放した。
0
あなたにおすすめの小説
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
普通のβだった俺は
りん
BL
普通の大学生として過ごす白瀬凪が、αの先輩に絡まれる話
凪は普通の大学生だ。βで、容姿も中身も平均値ぐらいだと認識している。ある日、大学でもよく噂されている先輩に声をかけられる。先輩の独特の雰囲気と空気に、次第に巻き込まれていく凪。
書き殴り状態なので少しずつ修正するつもりですです…。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
運命の番ってそんなに溺愛するもんなのぉーーー
白井由紀
BL
【BL作品】(20時30分毎日投稿)
金持ち社長・溺愛&執着 α × 貧乏・平凡&不細工だと思い込んでいる、美形Ω
幼い頃から運命の番に憧れてきたΩのゆき。自覚はしていないが小柄で美形。
ある日、ゆきは夜の街を歩いていたら、ヤンキーに絡まれてしまう。だが、偶然通りかかった運命の番、怜央が助ける。
発情期中の怜央の優しさと溺愛で恋に落ちてしまうが、自己肯定感の低いゆきには、例え、運命の番でも身分差が大きすぎると離れてしまう
離れたあと、ゆきも怜央もお互いを思う気持ちは止められない……。
すれ違っていく2人は結ばれることができるのか……
思い込みが激しいΩとΩを自分に依存させたいαの溺愛、身分差ストーリー
★ハッピーエンド作品です
※この作品は、BL作品です。苦手な方はそっと回れ右してください🙏
※これは創作物です、都合がいいように解釈させていただくことがありますのでご了承くださいm(_ _)m
※フィクション作品です
※誤字脱字は見つけ次第訂正しますが、脳内変換、受け流してくれると幸いです
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる