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9 凪は昼と夜の狭間。
強がり
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(side壮一郎)
ガラリ、と職員室の扉が開かれる。
漸く出てきたか。反省文を書き終わっただろうユイは俺に気づいて、そして怯えるように俺を呼んだ。
「ナギ……」
「よう。話がある」
どういう顔をすべきなんだろうな。分からないから、取り敢えず笑っておこう。なのにユイは拳を握りしめ、俺を睨みつけた。まるで、敵を見るような目だ。
「僕は無いし」
「いいのか?……兄様に愛してもらわなくて。それに、このままだったら生徒会長を不幸にしてしまう」
「それは……」
ユイは目を見開き、動揺した。図星か。運命なんて、所詮そんなもの。亀裂にトドメを刺すのは俺の役目だ。
「あのハトファイでの……嘘の記事はナギが書いたの?」
「嘘……か。何が嘘なんだ?生徒会長を誘惑したのも、あんたのせいで俺が脱退したのも本当だぜ。ハーレム云々はあくまで憶測だ。記事にもそう書いてある。あの記事に嘘はねぇよ。……ま、意図して作ったモノだけど。でも、あんたに必要な情報を提示しないのは、生徒会長だって一緒だろう?」
「……っ。なんで、それを?」
「ああ、やっぱり……都合の悪いところは隠しちゃうよな。聖人君子でも、あんたを救う神様でもない。生徒会長も、人間だよ。裏表がある」
「……」
黙ってしまったユイに俺はため息をついて、言葉を続けた。なんだ、もう少し抵抗があると思っていたのに……こんなものか。
「きっともうユイには、学園に居場所なんかねぇよ。あのまんま、生徒会長のお荷物になるなら止めはしないぜ。まー重い荷物はそのうち捨てられるかもしれないけれど。でも、そうはなりたくないなら、話がある」
「話?」
「ご主人様からの伝言だ。『七世光希と離れ、右代から他の仕事を受ける生活を続ける。それだけで、七世光希のことは諦める』とよ」
ユイの目が、揺れたのか分かった。
「光希を、ターゲットから外してくれる?」
もちろん。俺がそう言うより早く、ユイを呼ぶ大き叫び声が聞こえた。
「夏向!!」
ちょうど、話題の中心人物であった七世光希が、俺とユイの間に立ち塞がった。
ユイを俺から守るように、馬鹿だなぁ。俺は危害を加えるつもりなんて全くないんだぜ。
むしろ、敵意がダダ漏れなのはそっちだろう。
勘違い、早とちり?困るよなあ。だいたい、最初っから監視役って言ったじゃねーか。俺はただの傍観者。
なのに……お前のフェロモン、強えよ。
威嚇のフェロモンがβの俺をちくちくと刺激した。
あまりにも強くて、無意識に身体が震えていた。心の奥底から湧き上がる、恐怖。
俺は何も言えずに固まってしまった。
「君は、夏向に何を言ったのかな?」
「……そっちの運命に聞けばいいっすよ」
ああ、ダメだな。αが、本気で威嚇している時に対峙すればβの俺はたちまち震え上がってしまう。
そういえば。古波鮫の時は不意打ちでボコボコにして、俺に恐怖させた。あいつ、威嚇のフェロモンなんて出してる暇すら無かったのか。
というより、好きなΩが絡むと途端にαはややこしくなる。目の前の生徒会長だって過去には『俺は真っ直ぐ自分の人生を生きるだけだ』とか言ってたんだぜ。笑っちゃうよな。……運命って、Ωって、そんなにαにとって影響力強いのかよ。
ご主人様が恐れる位に?
俺にはわかんねー。
「君は教えてくれないんだ、壮一郎」
生徒会長が、ユイの手をぎゅっと握る。肝心のユイは生徒会長のフェロモンで顔を赤くしていた。
ああ、そういえば、威嚇のフェロモンの中に、微かに甘いフェロモンが漂ってると思ったら、ユイのフェロモンだったか。
「忙しいんですよ。なので、今日は帰ります」
声まで震えそうで、唾を飲み込んだ。とんだ邪魔のせいで……ここは、撤退するしかないようだ。
「待て!」
「なんですか、校内暴力でも起こします?」
「……。暴力は、しない。君は強そうだしね。それより、君たちの狙いは俺だろう。俺を狙えばいい」
生徒会長の、ぐっと握りしめた拳から伝わる怒り。今すぐにでも殴りたいのを必死に我慢しているのだろう。けれども彼は理性的に言葉を投げる。
その言葉の意味は直ぐに分かった。
『だから、運命の番には手を出すな!』ってか。
「それを決めるのは俺じゃ無いんで」
そう言葉を投げ捨てると、俺はふたりの元を去った。
コツコツと、廊下の床に足音が響く。
本当はその場でユイを連れ去りたかったが……まあ、及第点だろう。
さて、俺はご主人様の元に帰りますか。
ガラリ、と職員室の扉が開かれる。
漸く出てきたか。反省文を書き終わっただろうユイは俺に気づいて、そして怯えるように俺を呼んだ。
「ナギ……」
「よう。話がある」
どういう顔をすべきなんだろうな。分からないから、取り敢えず笑っておこう。なのにユイは拳を握りしめ、俺を睨みつけた。まるで、敵を見るような目だ。
「僕は無いし」
「いいのか?……兄様に愛してもらわなくて。それに、このままだったら生徒会長を不幸にしてしまう」
「それは……」
ユイは目を見開き、動揺した。図星か。運命なんて、所詮そんなもの。亀裂にトドメを刺すのは俺の役目だ。
「あのハトファイでの……嘘の記事はナギが書いたの?」
「嘘……か。何が嘘なんだ?生徒会長を誘惑したのも、あんたのせいで俺が脱退したのも本当だぜ。ハーレム云々はあくまで憶測だ。記事にもそう書いてある。あの記事に嘘はねぇよ。……ま、意図して作ったモノだけど。でも、あんたに必要な情報を提示しないのは、生徒会長だって一緒だろう?」
「……っ。なんで、それを?」
「ああ、やっぱり……都合の悪いところは隠しちゃうよな。聖人君子でも、あんたを救う神様でもない。生徒会長も、人間だよ。裏表がある」
「……」
黙ってしまったユイに俺はため息をついて、言葉を続けた。なんだ、もう少し抵抗があると思っていたのに……こんなものか。
「きっともうユイには、学園に居場所なんかねぇよ。あのまんま、生徒会長のお荷物になるなら止めはしないぜ。まー重い荷物はそのうち捨てられるかもしれないけれど。でも、そうはなりたくないなら、話がある」
「話?」
「ご主人様からの伝言だ。『七世光希と離れ、右代から他の仕事を受ける生活を続ける。それだけで、七世光希のことは諦める』とよ」
ユイの目が、揺れたのか分かった。
「光希を、ターゲットから外してくれる?」
もちろん。俺がそう言うより早く、ユイを呼ぶ大き叫び声が聞こえた。
「夏向!!」
ちょうど、話題の中心人物であった七世光希が、俺とユイの間に立ち塞がった。
ユイを俺から守るように、馬鹿だなぁ。俺は危害を加えるつもりなんて全くないんだぜ。
むしろ、敵意がダダ漏れなのはそっちだろう。
勘違い、早とちり?困るよなあ。だいたい、最初っから監視役って言ったじゃねーか。俺はただの傍観者。
なのに……お前のフェロモン、強えよ。
威嚇のフェロモンがβの俺をちくちくと刺激した。
あまりにも強くて、無意識に身体が震えていた。心の奥底から湧き上がる、恐怖。
俺は何も言えずに固まってしまった。
「君は、夏向に何を言ったのかな?」
「……そっちの運命に聞けばいいっすよ」
ああ、ダメだな。αが、本気で威嚇している時に対峙すればβの俺はたちまち震え上がってしまう。
そういえば。古波鮫の時は不意打ちでボコボコにして、俺に恐怖させた。あいつ、威嚇のフェロモンなんて出してる暇すら無かったのか。
というより、好きなΩが絡むと途端にαはややこしくなる。目の前の生徒会長だって過去には『俺は真っ直ぐ自分の人生を生きるだけだ』とか言ってたんだぜ。笑っちゃうよな。……運命って、Ωって、そんなにαにとって影響力強いのかよ。
ご主人様が恐れる位に?
俺にはわかんねー。
「君は教えてくれないんだ、壮一郎」
生徒会長が、ユイの手をぎゅっと握る。肝心のユイは生徒会長のフェロモンで顔を赤くしていた。
ああ、そういえば、威嚇のフェロモンの中に、微かに甘いフェロモンが漂ってると思ったら、ユイのフェロモンだったか。
「忙しいんですよ。なので、今日は帰ります」
声まで震えそうで、唾を飲み込んだ。とんだ邪魔のせいで……ここは、撤退するしかないようだ。
「待て!」
「なんですか、校内暴力でも起こします?」
「……。暴力は、しない。君は強そうだしね。それより、君たちの狙いは俺だろう。俺を狙えばいい」
生徒会長の、ぐっと握りしめた拳から伝わる怒り。今すぐにでも殴りたいのを必死に我慢しているのだろう。けれども彼は理性的に言葉を投げる。
その言葉の意味は直ぐに分かった。
『だから、運命の番には手を出すな!』ってか。
「それを決めるのは俺じゃ無いんで」
そう言葉を投げ捨てると、俺はふたりの元を去った。
コツコツと、廊下の床に足音が響く。
本当はその場でユイを連れ去りたかったが……まあ、及第点だろう。
さて、俺はご主人様の元に帰りますか。
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