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14 標的を殺したい僕、運命を守りたい俺
モーゼ
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(side夏向)
これは発情期の症状なのか?
だとしても、タイミングが悪すぎる。偶然、一ヶ月先だった発情期が今来た?
まさか。誤差はあれども、流石にそれは無い。
ならば。
震える口で何とか言葉にしてみんなに伝える。
早く、言い終わらなければ。
「噂に……惑わされないでください。この学園が、この学園のままでありたいと思うなら……どうか七世光希に、皆さんの清き一票をお願い致します」
言い終わった。拍手がどこか遠いところで聞こえてくる。僕は上手く言えた?伝わった?反応が知りたいのに。それどころじゃない。
僕は兄様にキスをされたことを思い出した。あの時、苦い『何か』が喉を通った。
「……は、うぅ。はぁ……」
呼吸がキツくなる。まともに立っていられなくなる。足がもつれて、その場でへたりこんだ。
僕のペニスは主張して、スラックスの中が窮屈で痛いぐらいだ。
服が擦れるだけでも興奮してしまう。
漸く、僕は兄様の思惑が分かってしまった。
兄様は僕に『促進剤』を飲ませるためにキスをしたのだ。
それは、飲んでから約三分ほどで効いてくる、『周期外の発情を促す薬』だ。ちょうど三分。偶然か、演説の時間と一緒だった。
何のために?それを僕は理解してしまったんだ。ポケットにある『それ』。兄様のフェロモン。そして、『仕事を成し遂げたら褒めてあげる』という言葉。
兄様の思惑通りなら、きっと光希はなりふり構わず僕を助けに来るだろう。
実の兄を、恐ろしく感じてしまう。どれだけ僕は兄様を求めたところで、兄様は僕のことなんか愛していないのだ。Ωだから。こうやって薬ひとつでぐずぐずになって……肉欲に溺れてしまう存在だから。
このままだと全校生徒の前で発情してしまう。
発情したら、噂通りだ。誘惑する、下劣なΩ。
生徒たちは僕を見てる。この場にはβだけでない、僅かながらαもいるだろうな。
「おい、あれ……あいつ」
「この匂い、まさか……」
ざわめきが聞こえてくる。みんなまだ突然の事で戸惑っているけれど、直に誰かがフェロモンに当てられて僕を襲おうとするだろう。
光希、助けて。僕を穿いて。その場でかっさらって。
思わず縋りそうになる。けれど。
光希。お願い、来ないで……!!来ちゃ駄目だ。お願い。今すぐ来て欲しい。違う、わかんない、違う。
「夏向!!」
声が聞こえて、肩が跳ねた。光希かな?って一瞬思ったけれど……真っ先に駆け寄ってくれたのは蓮叶だ。
「大丈夫か?安心しろ、俺はΩだからフェロモンにはあてられねぇ」
「れんちゃん……、助けて」
顔を覗き込まれる。袖を掴んで縋った。
「保健室か……それとも抑制剤?俺は持ってねぇんだ。くそ……。夏向は持ってるか?」
抑制剤、僕はいつもポケットに入れている。けれどもタイミングが悪いことに、僕は昨日から無くしてしまっている。首を振って無いことを伝えると、『分かった』と蓮叶は呟いた。
「今運ぶから。我慢しろよ」
それでも蓮叶は筋肉が生まれつき付きにくいΩだ。一人を運ぶのは難しいだろう。
肩に手をやって運ぼうとするけれど、よろけてしまう。その時、蓮叶が気付いて目を見開く。
「お前……これ」
蓮叶が、僕のポケットの中のものを発見したみたいだ。蓮叶はポケットから『それ』をだして僕から取り上げる。
「かえして」
僕はそれに手を伸ばす。折角兄様が僕のポケットに入れてくださったのに。それが無ければ僕は……。
仕事が、出来ない。
もう、駄目だ……抗えない。
更にぶわぁと自分のフェロモンが濃くなる。それと同時にみんなが、僕を欲情した目で見ているのが分かった。早速ひとりが壇上に上がってくる。
「おい。どけ」
蓮叶が突き放されて、僕は押し倒される。
知らない男子生徒、でも彼はきっとαなんだろう。
熱い、熱をどうにかして欲しい。僕を押し倒している彼なら発散してくれるかな。けれども、そうだ。遊んでいる暇なんて無い。そうすると僕は仕事が出来なくなる。
そんなことを考えていたら、僕を押し倒してる彼よりも、強くて甘いフェロモンを感じた。そのフェロモンは、比べものにならない。代替品では無い。発情した僕にとっていちばん欲しいものだ。ガチャガチャとベルトが外される音がする。僕は何となくそれを感じていたけれど……それどころでは無い。
「夏向!!」
甘い、果実の匂いがする。彼がここまでやってくる。強いαの威嚇のフェロモンが、僕の発情フェロモンを上回った。
その時……大海原がパッキリと割れた。モーゼが杖を振り上げたみたいな道。光希と僕を繋ぐ、最短距離で真っ直な道ができあがる。
みんな光希のフェロモンに恐れ慄いた。
僕の上で服を脱がそうとした男子生徒もだ。戦慄して、ガタガタと震えている。
でも僕は、そのフェロモンをちっとも怖いとは思わない。
運命が体を待ちわびる。誰よりも欲しい。
何よりも待ってた。欠けたパズルピースが埋まるように僕は心から歓喜した。
その一方で。もう欠片しか残ってない理性は叫ぶ。
お願い、今は……来ちゃ駄目なんだ。
けれどもその叫びは届かない。
泡沫のように、弾けてその理性も消えてしまった。
程なくして体育館に大きな音が響き渡った。
それは、平和な学園に不釣り合いな銃声音だ。
これは発情期の症状なのか?
だとしても、タイミングが悪すぎる。偶然、一ヶ月先だった発情期が今来た?
まさか。誤差はあれども、流石にそれは無い。
ならば。
震える口で何とか言葉にしてみんなに伝える。
早く、言い終わらなければ。
「噂に……惑わされないでください。この学園が、この学園のままでありたいと思うなら……どうか七世光希に、皆さんの清き一票をお願い致します」
言い終わった。拍手がどこか遠いところで聞こえてくる。僕は上手く言えた?伝わった?反応が知りたいのに。それどころじゃない。
僕は兄様にキスをされたことを思い出した。あの時、苦い『何か』が喉を通った。
「……は、うぅ。はぁ……」
呼吸がキツくなる。まともに立っていられなくなる。足がもつれて、その場でへたりこんだ。
僕のペニスは主張して、スラックスの中が窮屈で痛いぐらいだ。
服が擦れるだけでも興奮してしまう。
漸く、僕は兄様の思惑が分かってしまった。
兄様は僕に『促進剤』を飲ませるためにキスをしたのだ。
それは、飲んでから約三分ほどで効いてくる、『周期外の発情を促す薬』だ。ちょうど三分。偶然か、演説の時間と一緒だった。
何のために?それを僕は理解してしまったんだ。ポケットにある『それ』。兄様のフェロモン。そして、『仕事を成し遂げたら褒めてあげる』という言葉。
兄様の思惑通りなら、きっと光希はなりふり構わず僕を助けに来るだろう。
実の兄を、恐ろしく感じてしまう。どれだけ僕は兄様を求めたところで、兄様は僕のことなんか愛していないのだ。Ωだから。こうやって薬ひとつでぐずぐずになって……肉欲に溺れてしまう存在だから。
このままだと全校生徒の前で発情してしまう。
発情したら、噂通りだ。誘惑する、下劣なΩ。
生徒たちは僕を見てる。この場にはβだけでない、僅かながらαもいるだろうな。
「おい、あれ……あいつ」
「この匂い、まさか……」
ざわめきが聞こえてくる。みんなまだ突然の事で戸惑っているけれど、直に誰かがフェロモンに当てられて僕を襲おうとするだろう。
光希、助けて。僕を穿いて。その場でかっさらって。
思わず縋りそうになる。けれど。
光希。お願い、来ないで……!!来ちゃ駄目だ。お願い。今すぐ来て欲しい。違う、わかんない、違う。
「夏向!!」
声が聞こえて、肩が跳ねた。光希かな?って一瞬思ったけれど……真っ先に駆け寄ってくれたのは蓮叶だ。
「大丈夫か?安心しろ、俺はΩだからフェロモンにはあてられねぇ」
「れんちゃん……、助けて」
顔を覗き込まれる。袖を掴んで縋った。
「保健室か……それとも抑制剤?俺は持ってねぇんだ。くそ……。夏向は持ってるか?」
抑制剤、僕はいつもポケットに入れている。けれどもタイミングが悪いことに、僕は昨日から無くしてしまっている。首を振って無いことを伝えると、『分かった』と蓮叶は呟いた。
「今運ぶから。我慢しろよ」
それでも蓮叶は筋肉が生まれつき付きにくいΩだ。一人を運ぶのは難しいだろう。
肩に手をやって運ぼうとするけれど、よろけてしまう。その時、蓮叶が気付いて目を見開く。
「お前……これ」
蓮叶が、僕のポケットの中のものを発見したみたいだ。蓮叶はポケットから『それ』をだして僕から取り上げる。
「かえして」
僕はそれに手を伸ばす。折角兄様が僕のポケットに入れてくださったのに。それが無ければ僕は……。
仕事が、出来ない。
もう、駄目だ……抗えない。
更にぶわぁと自分のフェロモンが濃くなる。それと同時にみんなが、僕を欲情した目で見ているのが分かった。早速ひとりが壇上に上がってくる。
「おい。どけ」
蓮叶が突き放されて、僕は押し倒される。
知らない男子生徒、でも彼はきっとαなんだろう。
熱い、熱をどうにかして欲しい。僕を押し倒している彼なら発散してくれるかな。けれども、そうだ。遊んでいる暇なんて無い。そうすると僕は仕事が出来なくなる。
そんなことを考えていたら、僕を押し倒してる彼よりも、強くて甘いフェロモンを感じた。そのフェロモンは、比べものにならない。代替品では無い。発情した僕にとっていちばん欲しいものだ。ガチャガチャとベルトが外される音がする。僕は何となくそれを感じていたけれど……それどころでは無い。
「夏向!!」
甘い、果実の匂いがする。彼がここまでやってくる。強いαの威嚇のフェロモンが、僕の発情フェロモンを上回った。
その時……大海原がパッキリと割れた。モーゼが杖を振り上げたみたいな道。光希と僕を繋ぐ、最短距離で真っ直な道ができあがる。
みんな光希のフェロモンに恐れ慄いた。
僕の上で服を脱がそうとした男子生徒もだ。戦慄して、ガタガタと震えている。
でも僕は、そのフェロモンをちっとも怖いとは思わない。
運命が体を待ちわびる。誰よりも欲しい。
何よりも待ってた。欠けたパズルピースが埋まるように僕は心から歓喜した。
その一方で。もう欠片しか残ってない理性は叫ぶ。
お願い、今は……来ちゃ駄目なんだ。
けれどもその叫びは届かない。
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それは、平和な学園に不釣り合いな銃声音だ。
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