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バンブー27

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第1章

第1章

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東南アジアのとある国で日本の大学生が6人ほどの集団で大きなリュックを背負って歩いている。
もう夕方になっていたが気温はまだ30度を超えているので6人は汗だくになって歩いていた。

この6人組は三重大学の英語サークルの部員で、部員がアルバイトで溜めた部費を使い、夏休みに1ヵ月くらい東南アジアの物価の安い国でバックパッカーの様な旅をする事が部の恒例行事になっていた。

今年はフィリピンの首都があるルソン島を1カ月かけて一周する計画で2日前に首都マニラに入国した。
予算の関係で泊まるのはボロイ安宿で、食事は現地の人が利用する衛生状態が良いとは言えない食堂だったが、英語の勉強が目的なので文句を言う部員は誰もいなかった。

今日は首都マニラから北へ80キロほどの所にあるアンヘレスという比較的大きな町に来ていた。

アンヘレスは日中の治安はそこそこ良いが夜になるとスリやひったくりなどの軽犯罪が多く、郊外に行くと麻薬がらみの犯罪も稀とは言えないのでサークルの部長がみんなに先を急ぐように声をかけた。

「もうすぐ暗くなるから先を急ごう。今日泊まるホテルまでは、あと2kmくらいだから遅れないで付いて来て」

フィリピンは夕方になっても蒸し暑く、皆疲れた様子で歩いている。
一人の男子部員が疲れた表情で部長に提案した。

「もうすぐ暗くなるからジプニー(小型の乗り合いバス)に乗ろうよ」

部長「いや、6人でジプニーに乗ると地元の人が乗れなくなって嫌がられるんだよ。トラブルに巻き込まれても困るから歩こう。もうちょっとだから頑張って」

そう言って先を急いだ。

一行の最後尾に背が高くて、きれいな女性が歩いている。

入部したばかりの1年の市川沙羅だ。

沙羅は、初めての海外なので町のあらゆるものが新鮮で物珍しそうに見ていた。
街には、そこら中にいつの物か分からない選挙ポスターが張られ、ほとんどの家の庭には地面に打ち付けられた棒にヒモで結ばれただけのヤギが飼われている。
空き地はペットボトルやゴミが大量に投げ捨てられていて初めて見る東南アジアの貧しい国に衝撃を受けていた。

一行が歩いている少し先に大勢の人が集まっているお宅があった。
近くまで来るとにぎやかに騒いでいる声が聞こえてきた。

サークルのみんなが足を止めて庭を覗き込むとその光景に衝撃を受けた。

庭の真ん中で何かの箱の上に大きなベニヤ板を乗せただけのテーブルの上に皮を剥がれたヤギが乗せられている。
そのヤギから大人が二人がかりで手際よく肉の塊を取り出していた。

部長「これはちょっと刺激が強いな、夕飯の時に思い出しそう・・・」

その周りでは10人くらいの人がいて楽しそうにおしゃべりしている。
小学生くらいの子供も数人いて何かのお祝いのようだった。
現地では結婚式などのお祝いで良くある事だったが日本の大学生にとっては衝撃的な光景だった。

部員たちは物珍しそうにヤギの解体を見ていたが余りにも生々しい光景にすぐにまたホテルを目指して歩き出した。
沙羅もみんなについて歩き出そうとした時、近くにいた10歳くらいの少年と目が合った。
沙羅がニッコリ笑うと少年は笑顔で話し掛けてきた。

「I’ll pick up the palm fruits for you」

どうやらヤシの実を取ってあげると言っているようだった。
フィリピンの子供はみんな人懐っこくてかわいらしい、目が合うとすぐに笑顔で話しかけてくる。
サークルのみんなはすでに歩き始めていたので急いでいるからと言いたかったが、少年はあっという間に20メートル近くあるヤシの木に裸足で登ってしまった。
仕方がないのでその場で少年を待つことにした。
少年はヤシの木の上まで登ると足だけで木にしがみつき両手でヤシの実を取るとスルスルと木から降りて来た。
降りてくると笑顔でヤシの実を沙羅に差し出した。
ヤシの実はとても大きくて硬かった。

沙羅「How do you eat this ?」

沙羅がどうやって食べるのか少年に聞くと少年が笑いながら教えてくれた。

少年「It’s easy, pierce with a knife and drink the juice inside」

少年はナイフで穴をあけて飲めばいいと言っている。

沙羅は笑顔でお礼を言ったがタダで貰っていいのか分からない・・・
お小遣い程度はあげた方が良いと思い、ウエストポーチから財布を取り出し20ペソ(40円程度)を少年に渡した。
少年は思わぬ収入を得て大喜びで家の中に入っていった。

一人残された沙羅は1キロ以上ある大きなヤシの実を持って苦笑いするしかなかった。

これを持って蒸し暑い中、後2キロも歩くのか・・・

しかし現地の子供の善意を無駄にするわけにもいかず沙羅は自分に気合を入れてヤシの実を手に持ったまま歩きだした。
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