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十二章
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翌日、朝比奈は母校であり、林田官房長官の出身校である尾張旭市にある旭野高校を訪れていた。
「電話でご連絡をさせていただいた大学館の朝比奈と申します」
高校の事務員であろう事務の職員に朝比奈は声を掛け名刺を差し出した。
「話は聞いています。教頭の橋本が担当しますので、よろしくお願いします」
女性は名刺を受け取り小さく頭を下げると応接室へと案内し、女性と入れ替わりに年配の男性が現れた。
「教頭の橋本です。今日は、どうかよろしくお願いします」
先程の女性がお茶をテーブルに置いて立ち去ったタイミングで声を掛けた。
「こちらこそ、時間をお取りいただきありがとうございます。大学館の朝比奈です」
頭を下げると手提げカバンの中から手帳とボールペンを取り出した。
「林田さんのことについてとのことでしたので、たまたま同期だった私が担当することになりましが、どの様なことをお話すればよろしいのでしょう」
取材らしいということで少し緊張していた。
「今回は地元の有名人を特集することになりまして、今最も注目を浴びている林田官房長官にスポットを当てることになり、教頭先生が同級生ということで本当に助かりました。高校時代の人柄やエピソードについて色々話をお聞きできればと思います。色々とご連絡を入れさせていただきました。電話ではお伝えしなかったのですが、私もこの高校の卒業生なのですが、10年以上も経つと何故か懐かしく感じるものですね。早速ですが、一応ホームページ等で調べさせてもらったのですが、吉原県知事も同年代に旭野高校を卒業していらっしゃるので同級生だったのですよね。先ずは2人の関係についてお聞かせ願えないでしょうか」
先ずは2人の関係が気になっていた。
「そうなのですよ。今話題の2人が同級生でして2年生からは、朝比奈さんもご存知でしょうが、当時も当校では2年生から大学の志望に合わせて文系と理系に振り分けていまして、3人とも文系志望だったので、2年から同じクラスでした。2人とも政治家をしていることでも分かるとは思いますが、OBである朝比奈さんもご存知でしょうが、私達の頃から2年生から文系と理系でクラスが分けられ、3人とも文系志望でしたので2年間同じクラスだったのですよ。特に林田と吉原は、部活も野球部で同じだったので仲が良かった様です。2人は2年生からレギュラーで出場して、林田がセカンド吉原がショートで名前からトシちゃんコンビと呼ばれていました」
袋の中から卒業アルバムを取り出した。
「林田の田と吉原の原で田原・・・・田原俊彦でトシちゃんですか」
朝比奈は小さく頷いて納得していた。
「その頃の野球部が1番強かったですね。2年生の時に夏の予選で準々決勝、3年生の時に準決勝まで進みました」
アルバムを開いて野球部の3年生が写ったページを見せた。
「あの、ここに写っている背の高い部員は誰だか分かりますか」
朝比奈はユニフォーム姿の人物を指差して尋ねた。
「ああっ、田中ですね。あいつも2年生からレギュラーで、ファーストを守っていました。打順は林田が3番、田中が4番、吉原が5番で、3人でクリーンアップを担っていました」
林田、田中、吉原を順番に指でなぞった。
「2年生でレギュラー、それもクリーンアップを打つなんて3人とも凄かったんですね」
高校野球についてそんなに詳しくはなかったが、自分が在籍中のことを思い出して感心していた。
「朝比奈さんもOBですからご存知だと思いますが、旭野高校は進学校ですのでスポーツ推薦もありませんから、文武両道で運動神経も良い学生は少ないですから、中学校で野球をしていれば2年でレギュラーになるのも難しくないですよ。ただ、3人はずば抜けて運動神経が良かったので、当然といえばのことだったと思います」
部活は違っていたが、試合はよく応援に行っていたので、当時の3人の活躍が頭に浮かんできた。
「今ではプロ野球の球団が甲子園大会だけではなく、各地方の大会に足を運んで潜在能力の高い選手にも目を光らせているそうなのですが、その当時はどうだったのでしょう。彼らもスカウトの目に止またりはしなかったのですか」
資料を手に地方大会の試合を見詰めるスカウトの姿を特集していた、テレビの特集番組を思い出していた。
「私の時代も、準決勝や決勝の試合を地元であるドラゴンズのスカウトが見に来ることはありまして、いつも以上に張り切っている選手もいました。ただ、林田と吉原は東大への進学希望だったので全く関心はなかったみたいです。田中は2年生までは進学するつもりでいたのですが、3年生の時に父親が会社をリストラになったという家庭の事情もあって、進学を諦めていたから、下位で指名してもらえるかもと少しは期待していたかもしれない。しかし、その年はドラフトの当たり年で、社会人や大学生は当然のこと高校生も実力者が多くて下位でも指名はなかったのですよ」
下位での指名はテレビでは放送されず、職員室の電話の近くで校長や教頭と野球部の監督の4人で連絡を待つ田中の姿を思い出していた。
「3人は仲が良かったのでしょうか」
「ええ、クラスも部活も同じでしたからとても仲が良かったですよ。吉原と田中は家も近かったので帰りも一緒でしたから、特に親しかったと思いますよ」
「3人はそういう繋がりだったのですね。あの、こちらの男性は監督さんですか」
3年生の部員と並んで写っている男性を指差して尋ねた。
「あっ、いえ、監督は右側の男性で、それはコーチですね。教員ではないのですが、野球経験者で監督が要請して主に内野の守備と打撃を見てもらっていた様です。良く覚えているのは、先程もお話した様に彼のお陰でこれまでの歴史の中で最も強い野球部が出来上がったからです」
「OBなのにそんな歴史があったなんて知りませんでした」
「まぁ、優勝とか準優勝した訳ではないですからね」
「それにしても、官房長官に愛知県知事を輩出しているなんて学校やOBとしてもとても名誉なことですね」
「元々偏差値は高かったのですが、2人の御蔭でここ数年で有名になり志願者数も増え、競争率の高い難関校として認識されています」
「私が今の受験生だとしたら入学できなかったでしょうね」
その後は林田のエピソードを中心に話し合いが行われ、1時間程で朝比奈は学校を後にすることになった。玄関を出て駐車場に向かうと、大学館の社用車の前で大神が朝比奈を待っていた。
「随分探したぞ。ここに居ることもやっと大学館の編集長に聞き出したんだからな。どうして着信拒否なんてしてるんだ」
不機嫌な表情丸出しの表情で近付いてきた。
「これ以上事件に関わるなって言ったのはお前だろ。事件以外で話すことはないからな」
当然とばかりに言い返した。
「お前、俺の名前を使って鑑識にDNA検査を依頼しただろ。一体何を調べているんだ」
毎度のこととは言え流石に呆れていた。
「俺のお蔭で港区の倉庫で焼かれた遺体の身元が分かったんだろ。水戸黄門の印籠程じゃないけれど、コースを外れたと言えども元エリートさんの名前を使えば、即急に調べてもらえると思ってさ。それくらいの恩恵を受けても罰は当たらないよな」
最速の右手を出し大神は渋々ジャケットの内ポケットから検査結果が書かれた書類を取り出して朝比奈に差し出した。
「やはり思っていた通りだったな。これで今回の事件の概要が見えてきたよ」
鑑定資料に目を通して呟いた。
「何一人納得してるんだよ。一体どうなっているのか説明してもらおうか」
薄笑みを浮かべている朝比奈にドスの効いた声を浴びせた。
「分かったよ。丁度警察官のお前に手伝ってもらいたい事もあるからな。折角だから『ぽっかぽか』のシフォンケーキとピーベリーでゆっくりと話しましょうか」
2人はそれぞれの車で『ぽっかぽかに』に向かった。
「それで、このDNA検査で何が分かったんだ」
マスターが点てたピーベリーが入ったコーヒーカップを手に大神が口を開いた。
「以前話した様に、今回警察が発表した川野議員が大池議員の事件を発端としている。警察は恋愛関係にあった2人に何かのトラブルがあって、川野議員が大池議員を殺害してその後自殺したと考えたんだよな」
再度確認するように大神に尋ねた。
「ああっ、その通りだ。一度はお前が書いた記事によって再調査することになったが、ホテルの近くに設置されていた防犯カメラや自宅まで送ったタクシーの運転手の証言により、その事実に間違いがないことが証明されたんだ」
朝比奈の記事のお蔭で県警内が大騒ぎになった悪夢が蘇った。
「2人は父親が不仲だった為もあり、付き合っていることはほんの一部の人間にしか話していなかった。トラブルと言うけれど、2人の間にはトラブルどころか12本の薔薇が部屋に残されていたことを考えれば、良好であったことは間違いないと思う。まぁ、その話は置いといて、2人は愛知県の万博誘致には反対していて、2人の死によって過半数割れしていた第一党である新鮮の会が繰り上げ当選で過半数を確保することができ、また2人の死によって万博の誘致が推進される事になった」
朝比奈はシフォンケーキをフォークで小さく切り取り口へと運んだ。
「確かに万博の誘致を公約にしていた新鮮の会に取っては都合が良いことだったとは思うが、2人の間にトラブルがなかったとは言い切れないだろう。お前が言う12本の薔薇についても川野議員が大池議員の機嫌を取る為に持参したかもしれないだろう。県議会の万博誘致とは全く関係ないと思う」
どうしても事件を政治絡みにして大袈裟にしたい気持ちが見え見えだ。
「いや、今回の事件の最大の動機はやはり県会議員の議席数に関係していたんだ。新鮮の会はどうしても過半数の議席を得ることが必要だったんだ。色々な不祥事で支持率が急降下していた新鮮の会に取っては、議会の過半数を取ることは絶対条件だったのだ。来年には都議会選挙に参院議員選挙があり、今の民自党の支持率を考えれば衆参同時選挙も考えられる。こちらも不祥事が続き支持率を下げている新鮮の会にとっては、世界的な規模のイベントである万博を誘致することで存在感を示したいと考えていたのだろう」
「ちょっと待てよ。お前はまだ2人が殺害されたと考えているのか。あれだけの状況証拠が残されているんだぞ」
言い終えると溜息を吐いた。
「優子さんからDNAの検査結果を聞いたんじゃないのか。港区の焼死体の身元は川野議員の双子の兄弟の弟の方だった。気になって川野議員の家族について調べて見たところ、川野兄弟の父親は今で言うDVで母親や川野議員兄弟に暴力を振るっていた様だ。耐え切れなくなった母親は、兄の川野議員を連れて家を出たそうだ。子供2人共連れて行きたかったとは思うが、女ひとりで育てるのは1人が精一杯だったのだろう。それに、弟の方はその当時から荒れていて、手に負えなかったのかもしれない」
目を閉じてその時の状況を頭に描いた。
「お前の話が正しいとすれば、大池議員を殺害したのは川野議員の弟だったということなのか」
頭の中が混乱して顔を左右に振った。
「双子だから顔は勿論同じ。部屋を訪れた時も疑うことなく招き入れたのだろう。しかし、いくら似ていても大池議員は直ぐに気付き抵抗したのだが、残念なことに殺害されてしまった。部屋を出た弟はタクシーで川野議員の自宅へ向かい、既に殺害してあった部屋のエアコンを切って、パソコンで遺書を書いて残して家を去ったって事だ。これは想像だが、久々に会いに来たということで自宅に招き入れたのだろう。まさか、殺害されるとは夢にも思わずにな」
川野議員の無念さを強く感じていた。
「しかし、その話が真実とすれば、その兄貴が2人が付き合っていたことを知っていたってことになる。2人の関係は亡くなってから分かったことで、周りの誰も知らなかったんだぞ」
痛いところを突いてきた。
「それはな・・・・・」
「それに、どうして弟が兄貴を殺害しなくてはならないんだ。動機は何なんだ」
次々と質問を浴びせた。
「その動機が万博の誘致だとしたらどうだ。俺の調べでは、万博の誘致は党の支持率を上げる他にもう1つの目的があるようだ。あくまでも、あのゴミ処理場のインフラを整える為で、跡地にカジノやマンションなどを立ててその利権や莫大な利益を得る為だ」
「おいおい、まさかその為に2人が殺害されたって事なのか。新鮮の会の上層部の人間が川野議員の弟を使って2人を殺害した。まさか・・・・・・」
言葉を詰まらせた。
「ただ、それだけじゃないと思う。万国博覧会はあくまでも国によるイベントだから、新鮮の会だけで決められる訳じゃない。国の協力が無ければ成立しないから、新鮮の会が公約にできるのは与党である民自党の承諾があったはずだ」
「与党民自党が野党である新鮮の会に協力するだなんて、民自党にも特になる何かがあるのか、それとも両党内で人的に何か繋がりがあるのか」
何か納得できなかった。
「勿論与党である民自党にもオリンピックの時と同じ色々な利権が発生するのは間違いないだろうが、官房長官の林田議員と万博誘致を企画した吉原愛知県知事は同期で高校と大学が同じだったんだ。特に高校時代は2人共野球部で、クリーンアップで二遊間を守る間柄でとても親しかったそうだ」
「えっ、官房長官と愛知県知事が同級生だったっいうのか」
「クラスも部活も3年間一緒でとても親しかったそうだ。お前も知っているように特に高校時代の部活での繋がりは強くなるものだよな。2人はその関係を継続していて、今回の万博誘致に利用したんだと思う」
ピーベリーの香りを楽しんだ後、口へと運んだ。
「まさか、お前の推理によると万博の誘致を推進する為に、県議の過半数を得るべく野党である民自党の2人の議員を殺害して繰り上げ当選させたということなんだな。しかし、いくら利権や何億ものお金が得られるとしても、殺人に手を染めたりするものだろうか」
朝比奈の言葉を要約して尋ねた。
「犯罪者はバレないと思うから犯罪を起こすんだ。特に政治家は自分は特別な人間だと思い込む、悪い癖を持っている人間が多いからね。それにバレたとしても、秘書など他人に罪を押し付ける人種だからな」
政治家のいつものセリフを思い出して肩を落とした。
「ちょっと待てよ。大池議員と川野議員を殺害したのは双子の弟だったってことなのか」
朝比奈の言葉を聞いて早速犯人を確認した。
「ああっ、間違いないだろうな。そう推理すれば、ホテルでの大池議員が部屋に招き入れた理由も、川野議員の自宅の状況も全て納得ができる。政治力を十分に生かし圧力を掛けて警察に犯人が描いた結末を受け入れさせたのだろう。まぁ、政府の官房長官と県知事が相手だから、どんな人間でも逆らうことは不可能だろう」
重大な案件をさらりと告げる朝比奈に大神は呆気に取られていた。
「港区の倉庫で焼死させられたのが川野議員の弟として、林田官房長官と吉原愛知県知事が、万博の誘致をする為の議員確保の為に2人の議員の殺害を依頼したと、お前は恐ろしい推理をしている訳だが、それこそ危険な殺人と言うリスクを負ってまで、依頼できるという間柄だったとは思えない。どんな関係だったんだ」
金だけではなく、余程の信頼関係が無ければこんな依頼が出来る訳がないと考えていた。
「高校の同級生で部活もクラスも3年間同じだった人物がもう1人居たんだ。それもファーストで4番バッターだった人間がな。それが川野議員と焼死させられた弟の父親である田中実だったのだ」
「お前の言う様に高校時代に親しく今もその関係が続いてたとしても、自分の息子に殺人を、それも兄を殺すことを依頼するだろうか」
とても納得が出来なかった。
「先程も話したが川野議員が幼い頃に別れ離れになっていた。まぁ、家族らしい暮らしはしていなかったから、普段持ち合わせている愛情なんてとうの昔に捨て去ってたんじゃないかな。それにもう1つ3人には強い繋がりがあったと思われる。実はこの詐欺の前科があるんだ。出所後は暫くは身を潜めていたんだが、いまは裏バイトで集めた人間を使って強盗をしたり、政府が自信満々にほぼ強制的に始めたマイナンバーカードを悪利用した詐欺組織を形成している組織のリーダーである『ダークキング』という人物がその田中実ではないかと思われている。捜査2課が捜索して何度か所在を突き止める機会があったのだが、どういう訳かいつも蛻の殻で首謀者の『ダークキング』までは辿り着けなかったんだ。恐らく情報が漏れているのではないかと角畑課長も疑っていたんだよ。これは俺の想像なんだが、その情報を流していたのは吉原県知事で、その見返りに詐欺や強盗で得たお金が流れていたのでないかと思う」
自信満々な表情で答えた。
「そこまで2人の議員の事件関与を指摘するのには、しっかりした証拠があるんだろうな。それに大池議員と川野議員が付き合っていたいたことは誰も知らなかったんだぞ」
朝比奈の推理は納得できても、相手は官房長官と愛知県知事、相当しっかりした証拠が無ければ、愛知県警としても返り討ちの可能性が高い。
「問題はそこなんだよ。相手は百戦錬磨の強者だからな」
顎に手を当て目を閉じた。
「おいおい、三流のミステリードラマじゃないんだぞ。お前の不確かな推理だけで政治家を逮捕するなんて無理だってことは流石に分かるよな」
得意気に好き勝手推理して、全く責任を取ることはない素人探偵は気楽で良いよなと、大神はがっくりと肩を落とした。
「証拠が有ればいいんだろ。それでは仕方ないので警察の力を借りてその証拠を作りに行きましょうか」
朝比奈と大神は会計を済ませてると1度大学館に向かい、社用車を戻すと1度愛知県警に戻ることになった。
「電話でご連絡をさせていただいた大学館の朝比奈と申します」
高校の事務員であろう事務の職員に朝比奈は声を掛け名刺を差し出した。
「話は聞いています。教頭の橋本が担当しますので、よろしくお願いします」
女性は名刺を受け取り小さく頭を下げると応接室へと案内し、女性と入れ替わりに年配の男性が現れた。
「教頭の橋本です。今日は、どうかよろしくお願いします」
先程の女性がお茶をテーブルに置いて立ち去ったタイミングで声を掛けた。
「こちらこそ、時間をお取りいただきありがとうございます。大学館の朝比奈です」
頭を下げると手提げカバンの中から手帳とボールペンを取り出した。
「林田さんのことについてとのことでしたので、たまたま同期だった私が担当することになりましが、どの様なことをお話すればよろしいのでしょう」
取材らしいということで少し緊張していた。
「今回は地元の有名人を特集することになりまして、今最も注目を浴びている林田官房長官にスポットを当てることになり、教頭先生が同級生ということで本当に助かりました。高校時代の人柄やエピソードについて色々話をお聞きできればと思います。色々とご連絡を入れさせていただきました。電話ではお伝えしなかったのですが、私もこの高校の卒業生なのですが、10年以上も経つと何故か懐かしく感じるものですね。早速ですが、一応ホームページ等で調べさせてもらったのですが、吉原県知事も同年代に旭野高校を卒業していらっしゃるので同級生だったのですよね。先ずは2人の関係についてお聞かせ願えないでしょうか」
先ずは2人の関係が気になっていた。
「そうなのですよ。今話題の2人が同級生でして2年生からは、朝比奈さんもご存知でしょうが、当時も当校では2年生から大学の志望に合わせて文系と理系に振り分けていまして、3人とも文系志望だったので、2年から同じクラスでした。2人とも政治家をしていることでも分かるとは思いますが、OBである朝比奈さんもご存知でしょうが、私達の頃から2年生から文系と理系でクラスが分けられ、3人とも文系志望でしたので2年間同じクラスだったのですよ。特に林田と吉原は、部活も野球部で同じだったので仲が良かった様です。2人は2年生からレギュラーで出場して、林田がセカンド吉原がショートで名前からトシちゃんコンビと呼ばれていました」
袋の中から卒業アルバムを取り出した。
「林田の田と吉原の原で田原・・・・田原俊彦でトシちゃんですか」
朝比奈は小さく頷いて納得していた。
「その頃の野球部が1番強かったですね。2年生の時に夏の予選で準々決勝、3年生の時に準決勝まで進みました」
アルバムを開いて野球部の3年生が写ったページを見せた。
「あの、ここに写っている背の高い部員は誰だか分かりますか」
朝比奈はユニフォーム姿の人物を指差して尋ねた。
「ああっ、田中ですね。あいつも2年生からレギュラーで、ファーストを守っていました。打順は林田が3番、田中が4番、吉原が5番で、3人でクリーンアップを担っていました」
林田、田中、吉原を順番に指でなぞった。
「2年生でレギュラー、それもクリーンアップを打つなんて3人とも凄かったんですね」
高校野球についてそんなに詳しくはなかったが、自分が在籍中のことを思い出して感心していた。
「朝比奈さんもOBですからご存知だと思いますが、旭野高校は進学校ですのでスポーツ推薦もありませんから、文武両道で運動神経も良い学生は少ないですから、中学校で野球をしていれば2年でレギュラーになるのも難しくないですよ。ただ、3人はずば抜けて運動神経が良かったので、当然といえばのことだったと思います」
部活は違っていたが、試合はよく応援に行っていたので、当時の3人の活躍が頭に浮かんできた。
「今ではプロ野球の球団が甲子園大会だけではなく、各地方の大会に足を運んで潜在能力の高い選手にも目を光らせているそうなのですが、その当時はどうだったのでしょう。彼らもスカウトの目に止またりはしなかったのですか」
資料を手に地方大会の試合を見詰めるスカウトの姿を特集していた、テレビの特集番組を思い出していた。
「私の時代も、準決勝や決勝の試合を地元であるドラゴンズのスカウトが見に来ることはありまして、いつも以上に張り切っている選手もいました。ただ、林田と吉原は東大への進学希望だったので全く関心はなかったみたいです。田中は2年生までは進学するつもりでいたのですが、3年生の時に父親が会社をリストラになったという家庭の事情もあって、進学を諦めていたから、下位で指名してもらえるかもと少しは期待していたかもしれない。しかし、その年はドラフトの当たり年で、社会人や大学生は当然のこと高校生も実力者が多くて下位でも指名はなかったのですよ」
下位での指名はテレビでは放送されず、職員室の電話の近くで校長や教頭と野球部の監督の4人で連絡を待つ田中の姿を思い出していた。
「3人は仲が良かったのでしょうか」
「ええ、クラスも部活も同じでしたからとても仲が良かったですよ。吉原と田中は家も近かったので帰りも一緒でしたから、特に親しかったと思いますよ」
「3人はそういう繋がりだったのですね。あの、こちらの男性は監督さんですか」
3年生の部員と並んで写っている男性を指差して尋ねた。
「あっ、いえ、監督は右側の男性で、それはコーチですね。教員ではないのですが、野球経験者で監督が要請して主に内野の守備と打撃を見てもらっていた様です。良く覚えているのは、先程もお話した様に彼のお陰でこれまでの歴史の中で最も強い野球部が出来上がったからです」
「OBなのにそんな歴史があったなんて知りませんでした」
「まぁ、優勝とか準優勝した訳ではないですからね」
「それにしても、官房長官に愛知県知事を輩出しているなんて学校やOBとしてもとても名誉なことですね」
「元々偏差値は高かったのですが、2人の御蔭でここ数年で有名になり志願者数も増え、競争率の高い難関校として認識されています」
「私が今の受験生だとしたら入学できなかったでしょうね」
その後は林田のエピソードを中心に話し合いが行われ、1時間程で朝比奈は学校を後にすることになった。玄関を出て駐車場に向かうと、大学館の社用車の前で大神が朝比奈を待っていた。
「随分探したぞ。ここに居ることもやっと大学館の編集長に聞き出したんだからな。どうして着信拒否なんてしてるんだ」
不機嫌な表情丸出しの表情で近付いてきた。
「これ以上事件に関わるなって言ったのはお前だろ。事件以外で話すことはないからな」
当然とばかりに言い返した。
「お前、俺の名前を使って鑑識にDNA検査を依頼しただろ。一体何を調べているんだ」
毎度のこととは言え流石に呆れていた。
「俺のお蔭で港区の倉庫で焼かれた遺体の身元が分かったんだろ。水戸黄門の印籠程じゃないけれど、コースを外れたと言えども元エリートさんの名前を使えば、即急に調べてもらえると思ってさ。それくらいの恩恵を受けても罰は当たらないよな」
最速の右手を出し大神は渋々ジャケットの内ポケットから検査結果が書かれた書類を取り出して朝比奈に差し出した。
「やはり思っていた通りだったな。これで今回の事件の概要が見えてきたよ」
鑑定資料に目を通して呟いた。
「何一人納得してるんだよ。一体どうなっているのか説明してもらおうか」
薄笑みを浮かべている朝比奈にドスの効いた声を浴びせた。
「分かったよ。丁度警察官のお前に手伝ってもらいたい事もあるからな。折角だから『ぽっかぽか』のシフォンケーキとピーベリーでゆっくりと話しましょうか」
2人はそれぞれの車で『ぽっかぽかに』に向かった。
「それで、このDNA検査で何が分かったんだ」
マスターが点てたピーベリーが入ったコーヒーカップを手に大神が口を開いた。
「以前話した様に、今回警察が発表した川野議員が大池議員の事件を発端としている。警察は恋愛関係にあった2人に何かのトラブルがあって、川野議員が大池議員を殺害してその後自殺したと考えたんだよな」
再度確認するように大神に尋ねた。
「ああっ、その通りだ。一度はお前が書いた記事によって再調査することになったが、ホテルの近くに設置されていた防犯カメラや自宅まで送ったタクシーの運転手の証言により、その事実に間違いがないことが証明されたんだ」
朝比奈の記事のお蔭で県警内が大騒ぎになった悪夢が蘇った。
「2人は父親が不仲だった為もあり、付き合っていることはほんの一部の人間にしか話していなかった。トラブルと言うけれど、2人の間にはトラブルどころか12本の薔薇が部屋に残されていたことを考えれば、良好であったことは間違いないと思う。まぁ、その話は置いといて、2人は愛知県の万博誘致には反対していて、2人の死によって過半数割れしていた第一党である新鮮の会が繰り上げ当選で過半数を確保することができ、また2人の死によって万博の誘致が推進される事になった」
朝比奈はシフォンケーキをフォークで小さく切り取り口へと運んだ。
「確かに万博の誘致を公約にしていた新鮮の会に取っては都合が良いことだったとは思うが、2人の間にトラブルがなかったとは言い切れないだろう。お前が言う12本の薔薇についても川野議員が大池議員の機嫌を取る為に持参したかもしれないだろう。県議会の万博誘致とは全く関係ないと思う」
どうしても事件を政治絡みにして大袈裟にしたい気持ちが見え見えだ。
「いや、今回の事件の最大の動機はやはり県会議員の議席数に関係していたんだ。新鮮の会はどうしても過半数の議席を得ることが必要だったんだ。色々な不祥事で支持率が急降下していた新鮮の会に取っては、議会の過半数を取ることは絶対条件だったのだ。来年には都議会選挙に参院議員選挙があり、今の民自党の支持率を考えれば衆参同時選挙も考えられる。こちらも不祥事が続き支持率を下げている新鮮の会にとっては、世界的な規模のイベントである万博を誘致することで存在感を示したいと考えていたのだろう」
「ちょっと待てよ。お前はまだ2人が殺害されたと考えているのか。あれだけの状況証拠が残されているんだぞ」
言い終えると溜息を吐いた。
「優子さんからDNAの検査結果を聞いたんじゃないのか。港区の焼死体の身元は川野議員の双子の兄弟の弟の方だった。気になって川野議員の家族について調べて見たところ、川野兄弟の父親は今で言うDVで母親や川野議員兄弟に暴力を振るっていた様だ。耐え切れなくなった母親は、兄の川野議員を連れて家を出たそうだ。子供2人共連れて行きたかったとは思うが、女ひとりで育てるのは1人が精一杯だったのだろう。それに、弟の方はその当時から荒れていて、手に負えなかったのかもしれない」
目を閉じてその時の状況を頭に描いた。
「お前の話が正しいとすれば、大池議員を殺害したのは川野議員の弟だったということなのか」
頭の中が混乱して顔を左右に振った。
「双子だから顔は勿論同じ。部屋を訪れた時も疑うことなく招き入れたのだろう。しかし、いくら似ていても大池議員は直ぐに気付き抵抗したのだが、残念なことに殺害されてしまった。部屋を出た弟はタクシーで川野議員の自宅へ向かい、既に殺害してあった部屋のエアコンを切って、パソコンで遺書を書いて残して家を去ったって事だ。これは想像だが、久々に会いに来たということで自宅に招き入れたのだろう。まさか、殺害されるとは夢にも思わずにな」
川野議員の無念さを強く感じていた。
「しかし、その話が真実とすれば、その兄貴が2人が付き合っていたことを知っていたってことになる。2人の関係は亡くなってから分かったことで、周りの誰も知らなかったんだぞ」
痛いところを突いてきた。
「それはな・・・・・」
「それに、どうして弟が兄貴を殺害しなくてはならないんだ。動機は何なんだ」
次々と質問を浴びせた。
「その動機が万博の誘致だとしたらどうだ。俺の調べでは、万博の誘致は党の支持率を上げる他にもう1つの目的があるようだ。あくまでも、あのゴミ処理場のインフラを整える為で、跡地にカジノやマンションなどを立ててその利権や莫大な利益を得る為だ」
「おいおい、まさかその為に2人が殺害されたって事なのか。新鮮の会の上層部の人間が川野議員の弟を使って2人を殺害した。まさか・・・・・・」
言葉を詰まらせた。
「ただ、それだけじゃないと思う。万国博覧会はあくまでも国によるイベントだから、新鮮の会だけで決められる訳じゃない。国の協力が無ければ成立しないから、新鮮の会が公約にできるのは与党である民自党の承諾があったはずだ」
「与党民自党が野党である新鮮の会に協力するだなんて、民自党にも特になる何かがあるのか、それとも両党内で人的に何か繋がりがあるのか」
何か納得できなかった。
「勿論与党である民自党にもオリンピックの時と同じ色々な利権が発生するのは間違いないだろうが、官房長官の林田議員と万博誘致を企画した吉原愛知県知事は同期で高校と大学が同じだったんだ。特に高校時代は2人共野球部で、クリーンアップで二遊間を守る間柄でとても親しかったそうだ」
「えっ、官房長官と愛知県知事が同級生だったっいうのか」
「クラスも部活も3年間一緒でとても親しかったそうだ。お前も知っているように特に高校時代の部活での繋がりは強くなるものだよな。2人はその関係を継続していて、今回の万博誘致に利用したんだと思う」
ピーベリーの香りを楽しんだ後、口へと運んだ。
「まさか、お前の推理によると万博の誘致を推進する為に、県議の過半数を得るべく野党である民自党の2人の議員を殺害して繰り上げ当選させたということなんだな。しかし、いくら利権や何億ものお金が得られるとしても、殺人に手を染めたりするものだろうか」
朝比奈の言葉を要約して尋ねた。
「犯罪者はバレないと思うから犯罪を起こすんだ。特に政治家は自分は特別な人間だと思い込む、悪い癖を持っている人間が多いからね。それにバレたとしても、秘書など他人に罪を押し付ける人種だからな」
政治家のいつものセリフを思い出して肩を落とした。
「ちょっと待てよ。大池議員と川野議員を殺害したのは双子の弟だったってことなのか」
朝比奈の言葉を聞いて早速犯人を確認した。
「ああっ、間違いないだろうな。そう推理すれば、ホテルでの大池議員が部屋に招き入れた理由も、川野議員の自宅の状況も全て納得ができる。政治力を十分に生かし圧力を掛けて警察に犯人が描いた結末を受け入れさせたのだろう。まぁ、政府の官房長官と県知事が相手だから、どんな人間でも逆らうことは不可能だろう」
重大な案件をさらりと告げる朝比奈に大神は呆気に取られていた。
「港区の倉庫で焼死させられたのが川野議員の弟として、林田官房長官と吉原愛知県知事が、万博の誘致をする為の議員確保の為に2人の議員の殺害を依頼したと、お前は恐ろしい推理をしている訳だが、それこそ危険な殺人と言うリスクを負ってまで、依頼できるという間柄だったとは思えない。どんな関係だったんだ」
金だけではなく、余程の信頼関係が無ければこんな依頼が出来る訳がないと考えていた。
「高校の同級生で部活もクラスも3年間同じだった人物がもう1人居たんだ。それもファーストで4番バッターだった人間がな。それが川野議員と焼死させられた弟の父親である田中実だったのだ」
「お前の言う様に高校時代に親しく今もその関係が続いてたとしても、自分の息子に殺人を、それも兄を殺すことを依頼するだろうか」
とても納得が出来なかった。
「先程も話したが川野議員が幼い頃に別れ離れになっていた。まぁ、家族らしい暮らしはしていなかったから、普段持ち合わせている愛情なんてとうの昔に捨て去ってたんじゃないかな。それにもう1つ3人には強い繋がりがあったと思われる。実はこの詐欺の前科があるんだ。出所後は暫くは身を潜めていたんだが、いまは裏バイトで集めた人間を使って強盗をしたり、政府が自信満々にほぼ強制的に始めたマイナンバーカードを悪利用した詐欺組織を形成している組織のリーダーである『ダークキング』という人物がその田中実ではないかと思われている。捜査2課が捜索して何度か所在を突き止める機会があったのだが、どういう訳かいつも蛻の殻で首謀者の『ダークキング』までは辿り着けなかったんだ。恐らく情報が漏れているのではないかと角畑課長も疑っていたんだよ。これは俺の想像なんだが、その情報を流していたのは吉原県知事で、その見返りに詐欺や強盗で得たお金が流れていたのでないかと思う」
自信満々な表情で答えた。
「そこまで2人の議員の事件関与を指摘するのには、しっかりした証拠があるんだろうな。それに大池議員と川野議員が付き合っていたいたことは誰も知らなかったんだぞ」
朝比奈の推理は納得できても、相手は官房長官と愛知県知事、相当しっかりした証拠が無ければ、愛知県警としても返り討ちの可能性が高い。
「問題はそこなんだよ。相手は百戦錬磨の強者だからな」
顎に手を当て目を閉じた。
「おいおい、三流のミステリードラマじゃないんだぞ。お前の不確かな推理だけで政治家を逮捕するなんて無理だってことは流石に分かるよな」
得意気に好き勝手推理して、全く責任を取ることはない素人探偵は気楽で良いよなと、大神はがっくりと肩を落とした。
「証拠が有ればいいんだろ。それでは仕方ないので警察の力を借りてその証拠を作りに行きましょうか」
朝比奈と大神は会計を済ませてると1度大学館に向かい、社用車を戻すと1度愛知県警に戻ることになった。
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