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物思い 2
しおりを挟む「美咲。家の中には、絶対に入れるな。入ったら最後、帰らない。そのまま居座り続けるぞ」
彼が紡ぐ声はいつもよりも、かなり低い声で。今の状況の緊急性がよくわかる。
「ねえ悠さん、どうしたらいいと思う?」
目の前で私を睨み続けるお母様に不審に思われないよう、努めて明るい声で話し続ける。
「電話を切ったらすぐに母親に連絡する。必ず追い払うから、エントランスの中には絶対に入れるな」
「わかりました」
電話を終え、お母様に向き合う。
「今から悠さんがお電話されるそうです」
貼りついた営業スマイルでお母様に告げると、すぐにお母様のスマホから着信音が流れた。
「…悠?私珈琲でも紅茶でもどっちでも…え、何?…え、そうなの?隆夫さんが…?それなら、そうと言ってくれれば…」
不服そうにお母様は私を見た。通話が終わったようだ。
「また、日を改めます。私は絶対認めませんから。早く悠と別れた方が身の為よ」
冷たい目で吐き捨てて、お母様はエントランスから出て行った。
お母様がエントランスから出て行った後も、他の住人が入ってくるまで私は呆然と立ち尽くしていた。
「ただいま。美咲、大丈夫だったか?」
「お帰りなさい」
あのお母様と対峙するということは、かなりのエネルギーを要するようだ。彼の顔を見た途端安心して、その場にへたりと座り込んでしまった。
「ごめんな…。母親が急に来るだなんて…油断してた。何かされなかったか?」
「悠さんと別れろって言われました。それぐらいです…」
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