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Prologue 3

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電車が再び動いたのは、それから30分ぐらい経ってからだった。

「疲れたね…」
同じ駅で降りる。英とは同じ中学だから降りる駅も当然同じだ。
「うん…疲れた。電車が止まるってあんなに疲れるのね」
楽しい買い物の1日だったはずなのにね、と力無く呟く英の顔には疲労が滲んでいた。

改札に続くエスカレーターに向かって歩いていると、聞き覚えのある声が聞こえた。
「澄麗!…と、英もいるじゃん!」
その声に私も英も振り返った。声の主は葉月碧はづきみどり。英と同じく、碧も中1当時同じクラスだった。その中でも私と碧は同じ吹奏楽部で、3年間一緒に過ごした部活仲間だ。

「碧。同じ電車だったんだ」
「人身事故で止まってたやつ?参るよね。疲れたからお茶しようかって今話してたんだ。ね、梨愛りあ
碧はすぐ隣に立つすらっと背の高い、モデル体型を具現化したような美人に声を掛けた。

───ん?この顔って…
「えっ?梨愛ちゃん⁉︎」
「澄麗ちゃん、英ちゃん久しぶり」
美しく微笑む早乙女梨愛さおとめりあは碧と同じ小学校だったという。中2の頃、碧を通じて仲良くなった。ただ私の知ってる梨愛ちゃんはもっとちっちゃい、可愛い印象だったのだけど…。
「梨愛ちゃん、背、伸びたね」
中学生当時は私が見下ろしてしまうぐらいの小柄だった彼女は、10cmヒールがよく似合うモデル並みの身長になっていた。
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