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極彩色 7
しおりを挟む『碧です。今日は助けていただいてありがとうございました』
続く言葉が出て来ない。私と朔さんは被害者と刑事。それだけの関係だ。それ以上でもそれ以下でもない。失敗は出来ない。距離感を間違えては、いけない。
それ以下の言葉は打たず、送信した。既読は付かない。すぐに付くなんて、思ってない。朔さんはきっと忙しい。
そもそも無事に帰って来れただけでもかなりの幸運だ。それ以上の、あわよくばなんて求めていない。
明日が始業式だという現実をすっかり忘れていた。学級経営は最初が肝心。早くお風呂入って寝ないとね。
晩御飯は…食べなくても死なないか。食いっぱぐれちゃったけど、今から作って食べる気力は無いし、何より太りそう。
今日の出来事が非日常過ぎて、脳が興奮している。私、今日はゆっくり寝られるだろうか…?寝酒でもしようかな?でも寝酒は睡眠を浅くすると聞いたことがある。あの不審者が夢に出てきてうなされてそう。
入浴を終えてスキンケアをしていた。美容液のパックをしながらテレビでニュースをぼうっとみているとスマホが震えた。
『今日は大変だったね。難しいかもしれないけど、なるべく早く寝るんだよ』
何このお兄ちゃん的な内容。私は梨愛じゃないんだけど。あなたの妹じゃないんですけど。
朔さんにしてみれば理不尽なこの感情。でも朔さんは私を妹に対するような目でしか私を見ていない。
もう大人になったのに。二十歳を過ぎて、もうお酒も飲めるし、仕事もしているんだけど。
少し近付いたと思えた、私と朔さんとの距離は昔とちっとも変わっていない現実に溜息が漏れた。
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