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「えっ山吹さん紅茶のがいいの?だったら紅茶も置こうよ」
「でも皆さんコーヒーお好きだし…」
「遠慮は無用だよ。大事な癒しの場には好きな飲み物があった方がいいじゃん?」
「安藤先生…菩薩に見えます」
時緒はコーヒーを片手にパソコン画面のカルテに集中していた。邪魔しないよう、そっと消えた方がいいかな。

「──山吹」
「うん?」
自席に戻ってライオン達の今日の様子を電子カルテに打ち込んでいた。
「今日、暇?」
「…?ご覧の通り超絶忙しいけど?」
「違う、仕事終わってから」
「仕事の後は…特に何も無いけど」
「ちょっと付き合って」
「え」
私の返事を待たずに、時緒はまたパソコンに向かって難しい顔をし出した。また集中し始めた。集中されちゃったら、それ以上何も聞けない。


「お待たせしました」
「待った」
「こういうときは待ってないよ、とか言うんじゃないの?」
「俺は言わない人なの」
思ったより遅くなってしまった。時緒が待ってるから急いで仕事を片付けたんだけど。でもお風呂には絶対入らないといけないから、結局30分近く時緒を待たせてしまった。
「……で、どこ行くの?」
「乗って」
顎で助手席を示すと、時緒は運転席にさっさと向かってしまった。仕方無く、助手席に身を沈ませる。
「どこ行くの?」
「行けばわかる」
静かに、時緒のランクルーが動き出した。
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