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しおりを挟む視界が反転する。
「俺も男なんだけど?」
言葉が出ない。今の状況が把握できない。今、私、押し倒されてる?朔さんに?
手首はベッドのシーツに縫い付けられている。ふかふかのベッドからはおひさまの匂いがする。忙しいのに、ちゃんとお布団干してるんだな。…ってそんな呑気な事を考えてる場合じゃなくて!
朔さんの整った顔が私に影を落とす。唇が重なりそうになったその瞬間、ぎゅっと目を瞑った。
どれぐらい時間が経ったのだろうか。それは数秒かもしれないし、数分かもしれないし、もしくはそれ以上なのかもしれない。ただ、重なると思っていたその感触はいつまで経ってもやって来ない。
閉じたままの視界は少し明るくなった。そっと目を開けると、くつくつと笑い声を漏らす朔さんの姿があった。
「碧ちゃん、隙あり過ぎ」
「朔さん…ちょっと意地悪が過ぎませんか」
「意地悪?俺が?」
「これでも私最近、危険な目に遭いかけたんですよ」
一瞬にしてはっとした顔になった彼は、見るからに落ち込んだ表情になった。
「ごめん、俺…。昔から知ってる子だから、つい…」
「え、そんなに落ち込まないでくださいよ」
「いや落ち込むでしょ。怖い思いをした子に追い討ちかけるなんて。警察官として駄目だろ」
「それは…そうですけど」
「そこ、そんな事ないですよとか言うとこじゃね?」
「警察官として…と言われると。私では判断つかないので」
「そこは頭固いんだな」
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