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Summer panic 2
しおりを挟むどうか、無事に生まれてきて欲しい。出来れば大きなトラブル無く。いや小さなトラブルも最小限で。もういっそトラブル無しで。そんなことは有り得ないと分かりきっているけれど、でも出来るだけ、可能な限り平和に生まれていただきたい。
医師として、出産に立ち会えるのは嬉しい。発生学の神秘。妊娠出産は人間だけのものではない。動物も私達人間も、命を授かって、やがて出産の時を迎える。
人間相手の医師では産婦人科か救命にいないと出来ない経験を、獣医である私達は出来るのだ。大きな病院の施設ではなく、動物園の小さな部屋で限られた機材だけでの対応…。怖い。怖すぎる。
先輩方が複数人いらっしゃる職場で本当に良かった。個人の動物病院で働いている大学の同期はもう何度も出産の対応をしたらしい。時には自分だけしか獣医がいない状況で。
「…はい、安藤です。…えっ!…はい、すぐ向かいます。はい、それでは失礼します」
嫌な予感。
「ええ…家内が、産気づいたそうです」
一同顔を見合わす。
「先生、すぐ行ってあげてください」
時緒…もとい、山崎先生が口を開いた。
「そうですよ。ここは瀬崎先生がいらっしゃるんで大丈夫です」
「えっ…ええ、私いるんで、何とかします」
一瞬顔を引き攣らせた瀬崎先生とともに安藤先生に告げる。
「みんな…この恩は忘れないよ!たぶん1日では産まれないから3日ぐらい休み頂いてくね!では!」
「えっ、3日、ですか…」
光の速さで帰り支度を終え、もう姿の見えない安藤先生に向かって瀬崎先生が呟いた。
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