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Summer panic 6

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動物園を出ようとしたとき、時緒とばったり会った。
「お疲れさま」
「お疲れさま。もう帰るよな?」
「うん。流石に今日は疲れたし」
「じゃあ付き合って」
「今私疲れたって」
「いいから」
迷い無く手を絡め取られ、駐車場へと向かった。

「ねえ時緒、私今日疲れてる」
「俺も疲れてる。だから連れて来た」
「私、今日は早く帰ってお風呂入って眠りたいの」
「じゃあ俺と風呂入ればいい」
「え、ちょ、時緒…」
私の反論を待たずに車は動き出した。

こないだ行ったラーメン屋で一緒に食べた後、当然のように時緒の部屋に着いた。
「ねえ私、今日は疲れてるんだけど」
「大丈夫。俺も疲れてるから」
同じ会話を何度も繰り返し抵抗する。そして何度もかわされる。

「英と一緒に風呂入って、一緒に眠りたいんだ。駄目か?」
目を覗き込まれ、真剣な顔で告げているけど、言ってる内容おかしいよね?
「時緒…」
鍵を開けてドアを開け、どうぞと目で合図される。そのまま足を踏み入れた。いつも私はこの人の思うがままだ。簡単な女、なのだろうか。

電気を点けると見慣れてしまった部屋が視界に入った。もう何度、この部屋で時緒に抱かれたんだろう。

「座ってて。風呂入れてくる」
「お風呂ぐらい、私が」
「いいから。英も疲れてるだろ?」
疲れてるから今日は自分の家に帰りたかったんですけど。自分の部屋に連れて来てから優しい言葉を掛けるなんて、ずるい。でもそのずるさに乗っかっているのは、私だ。

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