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翻弄 2
しおりを挟むこの富士見小には個人の悪口を落書きする、という事件が最近頻繁していた。大体の目星は付いていると聞いていたんだけど…。
「少人数教室って、基本施錠してるよね?」
「うん。子ども達が自由に出入りできるのは授業中か掃除中」
「授業中は有り得ないから掃除中だな…。今週の掃除当番、洗ってみるか…」
管理職や学年主任の先生方に伝える前に子ども達に知られるのは良くない。私はスマホの画面を、うっかり別方向から見られないように沢田先生と自分の身体の陰で隠すように手にしていた。
ふと、沢田先生が視線を別方向に上げた。
その先には、こちらに向かって歩いている九条先生。でもその表情は、何だか険しい。何か、あったのかな…?
でも今、九条くんにも伝えた方が良い。
「九条先生。情報共有、お願いします」
真顔で言葉を放つと、表情を通常モードに戻した九条くんが私の隣に立った。
「これ、ついさっき算数教材室で見つけたんだけど…」
沢田先生にした説明と同じ内容を話す。話終わると同時に休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴ってしまった。
「もう戻らないと」
ポーカーフェイスを浮かべた九条くんが教室に向かう。どこかに向かう途中だったんだろうけど、私が呼び止めたから用事は済ませられなかったんだろうな。
いつのまにか沢田先生は席を外していた。九条くんの後ろ姿に「ごめんね…」とだけ告げた。私も教室行かないと。模型はまた後で取りに来ないとだな。
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