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J’adore[ジャドール]7
しおりを挟む英ちゃんの表情は、どこか憂いを含めていた。微笑んでるんだけど、何だか辛そうで。
「ちょっと…事情があるの。ランチ、移動しない?個室のお店、予約してあるんだ」
碧、知ってるんだ。個室ってことは…他の人には聞かれたらまずい内容なんだな、たぶん。何だろう…嫌な予感しかしないじゃん。
私達は誰ともなく、言葉を交わすことなく移動した。雰囲気の良い和食屋さんの個室に入ってすぐ、私の口からつい溜め息が出た。
「溜め息でか」
澄麗ちゃんのひと言にみんなが吹き出した。
「たぶん重い話なんだろうけどさ。折角みんな集まれたんだし、ひとまずランチを楽しもうよ。三人寄れば…って言うじゃん?四人もいるんだから、何か打開策が出るかもしれない」
「急に国語の先生ぽいじゃん、如月先生?」
「ずっと空気重いんだもん。話は長くなる予感でいっぱいだし、ちょっとは息抜かないと持たないよ」
碧の手にしていたメニュー表を覗き込んで澄麗ちゃんが放った。そうだよね。英ちゃんの悩みは深そうだけど、みんなで考えれば何か変わるかもしれない。
注文を終えて一息ついた頃。英ちゃんがついに切り出した。
「あのね。一緒に暮らしてる時緒…彼氏、なんだけど」
時緒?時緒って言った…?
一昨日の喧嘩で殴られていた人の映像が脳裏に蘇る。
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