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打破 6
しおりを挟む「──如月先生?」
パソコンのキーボードを叩く手が止まってしまった。雄二くんめ…通知表の所見の締切前に爆弾投下するの、本当にやめて欲しい。捗らないじゃない。
「如月先生?」
集中出来ない。コーヒーでも淹れようかな。それとも甘い甘い紅茶オレで脳に栄養を…。
「如月先生!」
「え」
降ってきた声に顔を上げた。声の主は九条くんだった。この人、私に声掛けるんだ。会話する気、あるんだ。いやするよね。同じ学年チームなんだから。業務に必要なビジネスライクな会話は社会人必須だもの。
「どうか、されたんですか?」
「え?」
「さっきからずっと、止まってますよ」
この人、私にまだ興味あるのかな。ねえそれって業務に必要な会話だから私に声掛けてるんだよね。
「ああ、ちょっと…考え事」
「珍しいですね」
「そう?考え事ぐらい、みんなするでしょ」
「そうじゃなくて。如月先生がパソコン目の前にして止まってるって中々無いから」
「そう、かな」
「そうですよ」
九条くんと目を合わせて会話するの、どれぐらいぶりだろう?なんか、久しぶり。軽く懐かしさすら感じる。
「──何か、あったんですか?」
「え、特に、何も…」
目が泳いでしまいそうで咄嗟に目を逸らした。
「所見、どう?順調?」
無理矢理微笑んで、先輩の顔を作る。そう、もう私は優しい先輩ポジションでいいんだ。変な期待はもう持たない。同じ学年を組んでいるなら、同僚兼先輩であるなら、そういう顔を保つのが私の務めだ。
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