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熱 8

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「悪い悪い、ちょっと取り込んでた」
取り込んでた……うん、取り込んではいたけど。
「その件か。マークはしてるよ……。ああ、たぶんそのセンが有力っぽい」
朔さんが目だけで「ごめん」と伝えながら寝室を出る。

仕事の話?でも私用のスマホ、だよね……?

「例の動物園と……四菱……潜入……」
会話が途切れ途切れに聞こえてくる。多分これ、聞いちゃダメなやつだよね。

ん?でも、動物園って……?

『時緒が何かに巻き込まれてるかもしれない』思い詰めた顔で打ち明けてくれた英の顔が頭によぎる。

こないだの動物園デートで朔さんは時緒さんに接触を試みていた。やっぱり朔さんは時緒さんをマークしてる、とか……?


「お待たせ。ごめんな、碧がいるときにこんな電話……」
「朔さん。それ、仕事のスマホじゃないよね?」
「ああ、プライベート用」
「じゃあ、今の話もプライベート……ですよね?」
朔さんの顔が一瞬強張った。
「ああ。プライベートだ」
「朔さん。もしかして、こないだの獣医さんが関わってませんか?」
一瞬、彼が目を見開いた。すぐにいつもの微笑みを作る。
「碧。君には関係ない」
「そうでもないの。あの獣医さんは、私の友達──英の彼氏なの。英は彼と一緒に暮らしてるの」
また朔さんの顔が強張った。警察官ってこんなに顔に出て大丈夫なんだろうか?
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