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憂い 4

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「あ、碧」
私を見つけた澄麗が手をひらひらさせて近づいた。
「図工、どうだった?」
同じ時間に私は図画工作の、澄麗は国語の講座を受けていた。
「悪くはなかったよ。ねぇ、何で九条先生?」
高見の講座の内容が良かったなどと、一生言うことは無い。どんなに内容が良くてもね。

「僕も国語、受けてたんで」
「九条先生英語の人でしょ?そんなに澄麗が好きですか」
「はい」
「ちょ、たく……、く、じょう先生、ちょっと」
「英語の講座は午後からなんで。国語は僕も授業しますからね」
「だったら受けるべきは家庭科じゃないの?」
「いや僕家庭科余裕なんで」
「一回の授業でミシン針7本折れたっていう伝説忘れてないよ?」
「あの、碧、九条先生……。ランチ、早く行かないと、時間が……」


教育センター近くのファミレスは満員だった。諦めて入った、ランチ営業していた居酒屋に、結局3人で入ることになった。朔さんの話は、仕方ない、帰りにするか。

「美味しい」
満面の笑みで本日のランチ、チキン南蛮を食べる澄麗。茶道を習っている効果か、澄麗の食べ方は綺麗。あー……九条先生が見惚れてるわ。ポーカーフェイスな子だったんだけどなあ……。

「私、澄麗と2人で食べたかったんだけど」
「お邪魔虫扱いしないでくださいよ。寧ろ僕だって澄麗と2人きりで」
「いちゃつくのは帰ってからにしなさいよ。私、澄麗に相談したいことがあったの」
「え、相談?」
「相談ぐらい、僕だって乗りますよ。三人寄ればなんとやらって」
「九条先生に気軽に言えることじゃないの!澄麗、帰りにちょっと、いい?」
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