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紅に染まる(碧 act7)
しおりを挟む朔さんは、何をどこまで知っているのだろう?
澄麗から聞いた、時緒さんと九条先生が兄弟だという事実。これはきっと、少し調べたらすぐわかる情報だと思う。でも時緒さんの彼女であるところの英が私と仲良し。何なら九条先生と澄麗も付き合ってるし。私達、一歩間違えたらみんな関係者扱いになっちゃうの?
私に言えることは何も無いと言い切った彼には、もう私はこの件について何も聞けなかった。何度聞いてもきっと同じだからだ。
守秘義務のある人なんだから隠し事があるのは仕方が無い。私だって個人情報を取り扱う職種の人間だ。情報流出は信用に関わるし、立場も危うくなる。それはわかる。わかるんだけど。
朔さんが知ってて私達が知らない私達のことがある、という状態がしんどい。そう、正直しんどいの。しんどいものはしんどいの。しょうがないじゃない。人間だもの。気になるんだもの。当事者なのに、私は知らないくて朔さんが知っているということが気持ち悪いのよ!
「っだー!」
「お見事。碧、溜まってるねえ」
夕方のバッティングセンター。たった今、私はホームランの的にボールを命中させた。隣のバッターボックスから安定の微笑みをくれた女神は澄麗だ。今日は辛うじて九条先生から澄麗を奪ってきた。奪うって。人聞き悪いけど。捨てられた子犬のような悲しそうな瞳を澄麗に向けていたけど、華麗にスルーされていた。澄麗も澄麗で、九条先生の扱いに慣れてきたみたいだ。
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