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古代魔術復活編
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しおりを挟む王城直下から放たれた光が、王都全域を貫いた。
結界が軋みを上げ、空に走る光の網がぱきりとひび割れる。
「……崩壊が始まった!」
魔術師たちが一斉に顔を上げ、冒険者も生徒も戦慄した。
その時、街の各所に潜んでいた結社の信者たちが、突如として声を張り上げた。
「永劫を讃えよ!」
「扉は開かれた!」
「紅の瞳に従え!」
声は絶叫ではなく、祈祷のように低く重なり合い、街全体を震わせる。
不気味な合唱は、王都そのものが呪詛に呑まれていくかのようだった。
アルヴァンは机上の地図を掴み、指先で震える一点を示した。
「……あの光は結界石直下。奴らは……王都そのものを……」
声が掠れ言葉の先を押し出せない。
紅の瞳——その名が喉の奥でせり上がる。
(違う……違うはずだ。嘘だ……!)
必死に打ち消しながらも理性は無慈悲に告げていた。
アデリンが剣を握りしめ、血走った眼で叫ぶ。
「結社め……ニコラを贄に、王都を潰す気か!」
二人の声が、ざわめく室内を切り裂いた。
誰もが混乱に呑まれる中、ただ二人だけが明確に、残酷な真実を掴んでいた。
そんな混乱の中、誰かが思わず声を漏らす。
「まさか、あの少年が……」
「下手なことを言うな!」
すぐさま別の声が叩きつけられた。
だが否定の言葉すら薄氷の上に響く音のように頼りなかった。
皆が心の底で知っている——その名を口にする勇気がないだけだ。
沈黙が広がる中、光はさらに膨れ上がり——
爆ぜるように弾けた輝きの中を、影がひとつ、ゆっくりと姿を取った。
光を裂いて現れたのは——ニコラだった。
纏わされているのは白を基調とした儀式服。
裾には金糸の刺繍で古代文字が縫い込まれ、布地は光を受けるたび青白く輝く。
袖口と襟元は無理やり留められたように窮屈で、少年の細い首と手首を際立たせていた。
裸足の足裏は石床の冷たさに晒され、白い肌に赤い血管が透けて見える。
虚ろな紅の瞳と、痩せ細った身体。
その姿は神々しさと惨めさを同時に孕み、目を逸らすことができない。
「……ニコラ……!」
アルヴァンの声が震え、アデリンは歯を食いしばった。
だがさらなる絶望が襲う。
街を蹂躙していた魔物たちが突如として動きを止めた。
揃ってニコラの方角に首を垂れ、石像のように跪く。
「……操られていた……?すべて……」
誰かの掠れた呟きが、静まり返った戦場に落ちる。
人々は次々と膝を折った。
恐怖が、戦意を塗り潰していく。
——災厄の象徴としてのニコラがついにその姿を現した。
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